キャリアが2021年10月以降に発売されるスマートフォンなどにSIMロックをかけて販売することが原則禁止となったことを受け、注目されているのが周波数帯(バンド)の問題だ。携帯大手が販売するスマートフォンは自社が免許を保有するバンドにしか対応していないことが多く、それが他社での利用を妨げているとして、行政から問題視する声が挙がっている。一方で、全キャリアのバンドに対応するのにも問題が少なからずある。一連の問題解決には何が必要なのだろうか。
2021年10月1日、総務省のガイドラインによりキャリア(携帯電話事業者)がSIMロックをかけることが原則禁止された。同日以降に発売されるスマートフォンは原則SIMロックがかかっていない状態で販売されることとなり、購入してすぐ他社のSIMに差し替えて使えるようになったのである。
しかも総務省は2021年9月17日、NTTドコモ、KDDI、沖縄セルラー、ソフトバンクに対し公正競争確保に向けた取り組みを要請。キャリアショップで非回線契約者に対して回線を契約せず端末購入プログラムを利用したり、端末だけを購入したりすることを拒否するなどの不適切な対応を根絶する努力を求めている。キャリアショップで端末だけを購入するのに抵抗があるという人も多くいたと思うが、国による“お墨付き”が出たことから、今後は堂々と購入してよくなったのだ。
そうした変化を受けて、スマートフォンの販売施策を大きく変える事業者も出てきている。実際、MVNOの「イオンモバイル」を運営するイオンリテールは、イオン店舗内に販売代理店として携帯各社のショップを構えていることを生かし、携帯大手の販売するスマートフォンとイオンモバイルのSIMをセットで販売することを推進するとしている。SIMロックの原則禁止によってスマートフォンの購入先と通信サービスが必ずしも一致している必要がなくなり、自由な選択がしやすくなったことは確かだろう。
しかし、だからといって、どのスマートフォンにどのキャリアのSIMを挿入して利用しても、快適に使えるとは限らない。なぜなら、キャリアが免許を持つ周波数帯(バンド)と、スマートフォンが対応するバンドが必ずしも一致しているとは限らないからだ。
電波の周波数には限りがあり、携帯電話向けとして使える条件の整った帯域が潤沢にあるわけではない。それゆえ、キャリアに免許が割り当てられているバンドは必ずしも一致しているわけではなく、ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社に割り当てられているバンドのうち、4社全てに割り当てられているのは4Gの1.7GHz帯(バンド3)と5Gの28GHz帯(バンドn257)くらいなのである。
それ以外のバンドは各社ともにバラバラで、例えば同じ“プラチナバンド”と呼ばれる帯域であっても、NTTドコモとKDDIは800MHz帯、ソフトバンクは900MHz帯(バンド8)という違いがあるし、同じ「800MHz帯」といってもNTTドコモ(バンド18)とKDDI(バンド19)とでは異なるバンドという扱いになる。それゆえスマートフォン側が利用するキャリアが免許を持つバンドに対応していなければ、そもそも通信ができないのだ。
また、携帯各社はプラチナバンドなど、広域をカバーしやすい低いバンドで広いエリアをカバーし、広域のカバーに向かない高いバンドは都市部のトラフィック対策に使っていることが多い。それゆえ、例えばA社のプラチナバンドに対応していないスマートフォンにA社のSIMを挿入して使うと、あるエリアでは通信できるが別のエリアでは通信ができない、あるいはしづらいといった事象が発生して快適に通信できなくなってしまうのだ。
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