目指したのは「スマホカメラ」ではなく「カメラ」 ライカに聞く「Leitz Phone 1」開発秘話(2/2 ページ)

» 2021年10月25日 10時00分 公開
[小山安博ITmedia]
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コロナ禍で苦労の連続だった開発

 契機となったのはソフトバンクとの話し合いだが、「ソフトバンクはイノベーティブなマインドを持っていて、新しいブランドにもオープンな気質を持っている」といった点が決め手となったそうだ(ツイ氏)。

 ここに開発メーカーとしてシャープが加わって開発が始まったが、このプロジェクトの開始は2020年2月。現在のように新型コロナウイルスがまん延する直前で、結局開発は一貫してリモートで行う必要があり、苦労したそうだ。

 そもそも欧州と日本で時差があり、言葉の壁もある。それに加えて「物理的に会えないことが加わって開発は大変だった」とツイ氏は振り返る。ライカ社内でサンプルを送り合ってデザインチームや素材チームからもサンプルが送られ、社内の承認プロセスを経て、日本へと発送してシャープが工場に送って……と実際のサンプル1つをやりとりするだけでも相当な苦労があったという。

 「こうした苦労はチャレンジだったが、振り返ってみると素晴らしく、人生でも重要な記憶に残る体験だった。コロナ禍が終息したら、ぜひ会って酒を酌み交わしたい」とツイ氏は笑う。

ライカの哲学を盛り込んだモノクローム

 そうして完成したLeitz Phone 1は、1型センサーというスマートフォンとしては最大のサイズのセンサーを搭載した。ライカが最初にスマホカメラの開発を手掛けたHUAWEI P9には小さなセンサー(1.25マイクロメートル)が採用されていたが、「当時は小型のセンサーしかなく、モノクロとカラーのセンサーを融合させることで画質を担保させていた」とフロリアン・ヴァイラー(Florian Weiler)氏は言う。

 2021年現在は大型センサーが使えるようになったことで、その中でも最大の1型センサーを採用した形。パフォーマンスとして1型センサーを快適に処理できるようになった、ということだろう。

 こうした大型センサーのメリットは「ノイズとダイナミックレンジ」とヴァイラー氏は言う。さらにデジタルカメラで用いられるRAW形式での撮影にも対応しており、撮影後の後処理で独自の色を撮影者自身が作れる点をメリットとして挙げる。「大型の(ミラーレスカメラなどの)カメラに慣れている人はクリエイティビティを重視するので、こうした点も大事だろう」とヴァイラー氏は指摘する。

 重視したのは「自然光を意識した色合い」(ヴァイラー氏)。さらにレンズのF値も重視したそうで、広角レンズながら自然にボケが出せる数字を目指したという。

 ライカとして、「カメラに近い画作りをすることが大前提」(同)。1型というセンサーはデジタルカメラに使われることも多いサイズで、自然な発色でカメラと同じような絵作りができるセンサーを採用したという。

 こだわった点はセンサーとレンズの性質で、「あまり演算処理(コンピュテーショナルフォトグラフィ)を使わずに、より効果的に素晴らしい画質の絵作りができるような努力をした」とヴァイラー氏は強調する。目指したのは「スマホカメラ」ではなく「カメラ」としての方向性であったようだ。

 そうした方向性で搭載されたのがモノクロモードの「Leitz Looks」。ツイ氏は「デザインしたかったのは『M型Leica』」としており、M型Leicaにあるようなモードを盛り込みたいとして搭載したという。「カラー一辺倒の世の中になってもモノクロームにこだわってきたライカの哲学を詰め込んだものを搭載したかった」とツイ氏。"ライカらしさ"を重視した結果だったという。

Leitz Phone 1 Leitz Looksで撮影した鉄道車両の車内。ただモノクロになるのではなく、元のカラーデータをもとに細かな調整がされている(関連記事

デザインにも「ライカらしさ」を

 「ライカらしさ」はデザインにも現れている。Leicaのデザインにも参加しているシニア・インダストリアル・デザイナーのディビッド・スー(David Suh)氏は、Leitz Phone 1のプロジェクト開始時に考慮したのが「正当なライカとは何か」という点だったという。

Leitz Phone 1 側面のローレット加工、円形のカメラ部など、ライカの哲学を受け継いだデザイン

 「ライカのシンプルさ、正当性、本物であること、高品質」。スー氏はそういったキーワードを挙げてLeitz Phone 1のデザイン性を紹介。その結果として「ひと目見ただけでライカと分かる」というデザインに落とし込んでLeitz Phone 1を仕上げた。

 スー氏は続けて「触感も重視し、洗練されたサイドフレームなど、細かなエンジニアリングが全てつまっている」とアピール。Leicaのロゴである赤いバッジも目を引くが、全体的にシームレスに見えるようにこだわって監修したという。

 インタビューでは「Leicaとしてのこだわり」を重視した点が強調されており、スマートフォンカメラでもなく、デジタルカメラでもなく、「Leicaである」ことを目指している、ということだろう。デジタル処理も否定するわけではないが、「自然な発色で、ディテールまで細かく描写できるように努力している」とヴァイラー氏。ダイナミックレンジの拡張やノイズ低減といった点で利用しているそうだ。

 ライカ側では、シャープからのフィードバックだけでなく、SNSのハッシュタグなどを確認してユーザーの声を集めているとしつつ、ツイ氏は継続的にアップデートで改善を続けていきたい意向を示している。その準備も進められていて、ツイ氏は「驚いてもらいたいのでアップデートを待ってほしい。ワクワクしてもらえるようなアップデートになる」と話しており、今後のライカの取り組みを期待したいところだ。

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