4キャリアの決算が出そろう 大赤字の楽天モバイルは“包囲網”をくぐり抜けて黒字化なるか石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2021年11月13日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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売上増とコスト圧縮で黒字化を目指す楽天モバイル

 ローミングが減り、楽天モバイルの自社回線に切り替わるユーザーが増えれば、コストを削減できるだけでなく、売り上げが上がる可能性もある。楽天モバイルでCEOを務める三木谷浩史氏は、「自社ネットワークに切り替わるとデータ使用量が上がり、ARPUも上がる」と語る。三木谷氏によると、楽天モバイルの自社エリアでは、ローミングエリアより倍程度、データ使用量が増えるデータもあるという。楽天モバイルがローミングの終了を急ぐ理由は、ここにある。

 もっとも、10月1日から一律で全基地局が切り替わるのではなく、作業はエリアの完成度を見ながら徐々に進められている。そのため、すぐにローミング費用の負担が下がるわけではない。山田氏は「来年(2022年)の第1四半期(1月から3月)がボトム(底)になりそうだが、ここからすごく悪くなることはない」と語る。ローミングコストの重石が取り除かれるのは、「来年4月にもう1回大規模なローミングオフをする」(同)後になるという。

楽天モバイル ローミングが終わり、5GB制限が外れるとユーザーのデータ利用量は増える。楽天モバイルでは段階制の料金プランを採用しているため、上限まで使うユーザーが増えればその分売り上げは上がる

 コスト構造が改善されれば、楽天モバイルはユーザー獲得のアクセルを踏むことができる。三木谷氏は、大規模なキャンペーンについては否定しつつも、「自社回線を使った方が(ユーザーからの)フィードバックがいい。その拡大に合わせて、マーケティング施策を強化していく」と語る。現状では、純増数が前年同月の2倍程度まで拡大しているというが、「この倍を3倍にしていくのが今の戦略」(同)だという。

 一方で、人口カバー率96%を達成したとしても、どこまで大手3社にエリアで迫れるかは未知数だ。KDDIのローミングは800MHzを使っていたこともあり、1つの基地局でカバーできる範囲が広く、電波が建物内などに回り込みやすい。対する楽天モバイルの4Gは1.7GHz帯のみ。基地局の密度を上げていかなければ、自宅や会社といった、滞在時間が長い屋内で圏外になってしまうリスクもある。いかにきめ細かにエリアを作っていけるかが、今後のゆくえを左右しそうだ。

楽天モバイル ローミングからの切り替えでつながりにくくなった場合、MVNOのSIMカードが入った端末の貸し出しや、小型基地局の設置などでユーザーに対応しているという。ただし、これはあくまで応急処置。今後はエリアのきめ細かさも求められるようになりそうだ

 また、料金プランでも他社が対抗する動きを見せている。KDDIは、楽天モバイルへの流出を抑えるため、povoをpovo2.0にリニューアルし、基本使用料を0円に設定した。三木谷氏は「povo2.0の影響はほぼない」と強気だが、山田氏は「povo2.0が発表されてから、多少数字に反映されているということは感じている」と明かす。現状では、全体の流入が多いため、「すごく大きな影響は感じていない」(同)というが、KDDI以外のキャリアも何らかの対抗策を打ってくる可能性はある。こうした楽天モバイル包囲網を、どう突破するのかが腕の見せどころといえそうだ。

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