KDDIのもくろみが当たったこともあり、auからUQ mobileやpovoといった低価格ブランドへの流出は、当初の想定以上に少なくなっているという。高橋氏によると、「auからUQ mobile、povoへ移行する方が大体1割程度だと思っていたが、auの応援割やiPhoneの販売などが奏功して、1割までいかなかった。多くの方にauにとどまっていただいた」という。また、UQ mobileからauにアップグレードするユーザーも、「前年比で2.6倍ぐらいに増えている」(同)という。
料金値下げの影響を受け、au、UQ mobile、povoを合わせた「マルチブラド通信ARPU」が4200円まで低下している中、「5Gをもっとがんばって、素晴らしいサービスを提供し、ARPUを伸ばしていかなければならない」(同)のがKDDIの今の立ち位置だ。その兆しは見え始めている。第2四半期まで純減傾向が続いていた「グループID数」は、第3四半期で反転して純増を記録。auの5Gエリア拡大に伴って5G端末の販売も伸び、累計販売台数は620万台を突破した。5Gのユーザーは1人あたりのトラフィックが4Gの2.5倍以上と高いため、auの無制限プランに加入する機運が高まる。
料金体系を大幅に見直し、大胆な値下げに踏み切った2021年に対し、2022年以降は5Gの拡大に注力していくのがKDDIの方針だという。高橋氏は「お客さまの期待に応えたいので、引き続き分かりやすい料金はやっていくが、これからは成長と5Gに軸足を移していく」と語る。その起爆剤になるパックプランは、「今後も強化していく」(同)。DAZNパックを加え、ALL STARパックを強化したKDDIだが、パックプランがさらに増えていく可能性は高い。
一方で、パックプランの選択肢が多くなればなるほど、複雑さが増してしまうことは否めない。パックとしてあらかじめ決められた組み合わせではなく、アラカルト的にサービスを決めていきたいというユーザーもいるはずだ。例えば、現状ではテレビパックはテレビ局が運営する3サービスのみだが、ここにNetflixをつけたいというニーズはありそうだ。NetflixとDAZNがセットになったパックプランがあってもいいかもしれない。povo2.0ではDAZNや「smash.」などのサービスをトッピングとして選択できるが、こうした仕組みはauにあってもいいだろう。
5Gを生かしたサービスとしてニーズの高い動画サービスは選択肢が多いが、音楽ストリーミングやクラウドゲームサービスなどのバリエーションが少ないのも、気になるポイントといえる。音楽配信サービスはALL STARパックにApple Musicが、ゲームもALL STARパックにGeForce NOWがラインアップされているものの、単品のパックは存在しない。シンプルさとサービスの拡大をどう両立させていくかは、今後の課題といえそうだ。
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