「BALMUDA Phoneは素晴らしい価格だとは思っていない」 寺尾社長が語る現在地(2/3 ページ)

» 2022年02月10日 08時11分 公開
[田中聡ITmedia]

素晴らしい価格だとは思っていない

 一方、ハードとソフトにこだわり抜いた結果、原価がかさんでしまい、10万円を超える価格になってしまった。価格に関して寺尾氏は「できればもう少し安く勝負したかったとは思っています」と打ち明けるが、「タイムマシンに乗って、もう一度同じ決断をしろとなっても、同じ決断をした」と同氏。アプリの開発費については「投資」と考え、妥協したくなかったという。考え抜いた末での決断ではあるが、寺尾氏は「素晴らしい価格だとは思っていません」と言い切る。

 ブランディングの観点から、あえて高い価格に設定している可能性も否定した。これまで開発してきた他の家電も同様の考えで、「必要以上に価格をつり上げているわけではありません」と寺尾氏。「できるところは徹底的にコストダウンし、すごく良い物を一番安く提供する」ことをポリシーとしてきた。つまりBALMUDA Phoneには、本当に10万円以上で販売するだけの原価がかかっているというわけだ。

 多くのユーザーがスマートフォンを購入する際、真っ先にチェックするのが「スペック」と「価格」であり、BALMUDA Phoneはその点で明らかに不利な戦いを挑んでいる。同等のスペックを持つスマートフォンなら、3分の1ほどの価格である3万円台で購入できる機種が多いからだ。BALMUDA Phoneには、それらのスマートフォンにはない価値がどれだけあるのか、それをどれだけ多くの人に伝えられるかが、今後の成長のカギを握っている。

BALMUDA Phoneの体験価値は“利便性”

 では、スペックだけでは語れないBALMUDA Phoneの“体験価値”とは何なのか。バルミューダがこれまで手掛けてきた家電、例えばトースターなら「おいしくパンを焼くこと」、扇風機なら「心地よい風を送ること」が体験価値といえるが、寺尾氏が連呼していた、BALMUDA Phoneのコアバリューが「サイズ」というのは、少し弱いようにも思える。小さいことの価値はもちろんあるが、全てのユーザーが小ささを求めているわけではないからだ。

 そこで「スマートフォンの本質とは何か」と質問を投げかけたところ、寺尾氏は「利便性」と答えた。「どのスマートフォンも、冷静に考えると素晴らしい道具。その本質は時間の提供で、人々に他のことをしたり考えたりする可能性を提供すること。BALMUDA Phoneでは、究極の利便性を目指しました」

 例えばスケジューラでは素早く予定を確認できる、ウォッチアプリでは素早くタイマーやアラームを設定できる……という具合に、BALMUDA Phoneのアプリを使うことで同じ作業をより速く行えるようになり、時間を節約できることが価値になる寺尾氏はと考える。こうした“生活密着型のスマートフォン”を提供したかったため、ポケットに入る小さなサイズにこだわった。

BALMUDA Phone スケジューラアプリでは、ピンチイン、アウトで表示範囲を変えられるので、予定を素早く探せる。こうした時短の積み重ねがスマートフォンの本質だと寺尾氏は考える

体験を伝えることは難しいが、行動で示す

 BALMUDA Phoneが短期間でここまで話題を集めたのは、誰もが使うスマートフォン(携帯電話)を発表したことで、「全員が当事者として、我が事として捉えたから」だと寺尾氏はみる。

 そうした多数のユーザーに対してどのようにコミュニケーションしていくかは、「丁寧にやるしかない」と寺尾氏。BALMUDA Phoneに触れると、「丸くて小さいスマホ」であることは感覚的に分かるが、アプリの細かな使い勝手は、日々、生活をする中で使っていかないと分からない。バルミューダの家電でもこれまで「何度も直面してきましたが、体験を伝えることは難しい」と寺尾氏は痛感している。

 バルミューダは、BALMUDA Phoneを含むIT機器やAV機器などの製品群を示すブランドとして「BALMUDA Technologies」を掲げているが、この「BALMUDA Technologiesブランドの信頼感を上げることが最も重要」と寺尾氏は言う。BALMUDA Technologiesの製品はまだBALMUDA Phone1機種のみなので、多くのユーザーに浸透させるためには時間が必要だが、「行動で見せるのが信頼を作る一番の方法」だと考え、今後も継続して製品を投入していく考えを示す。

 BALMUDA Phoneを購入したユーザーからの反響では、「小さくて見にくい」「エッジが手に当たって痛い」という声が挙がった。一方、周囲の人から珍しがられて「褒められるという声」や「アプリが使いやすい」という声も聞いているという。体験を伝えるのに近道はなく、こうしたユーザーの声を拾いながら、1人でも多くのファンを増やすしかない。

BALMUDA Phone BALMUDA PhoneはBALMUDA Technologiesの第1弾製品となる

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