―― J:COMはKDDI傘下ですが、料金プランですみ分けをしてほしいというような要求はないのでしょうか。
石川氏 ないですね。100%子会社であればもうちょっと違うかもしれませんが、(株主には)住友商事が半分入っています。株主として、KDDIと住友商事が話をして、株主都合は極力排除する方向になっています。J:COMが成長できれば、純粋にリターンがある。そういう考え方をしましょうとなっています。ある意味、好きなようにやらせていただいています。MVNOの料金(KDDIからの回線貸し出し料)も、公平性の問題があるので、他の事業者と同じです。その中で、自分たちでリスクを取ってチャレンジするのはどうぞということでやっています。
―― 逆に言えば、KDDI側も配慮はしてくれないということですね。
石川氏 そうですよ(笑)。まったく気にせず値下げしてくるので、いい加減にしてほしいぐらいです(笑)。
―― MVNO全体を見ると、シェアが低下しています。昨年は契約者数が減ってしまったMVNOもあるようですが、J:COM MOBILEはいかがでしたでしょうか。
石川氏 増えています。そんなに捗々しく増えているわけではありませんが、1割程度は増えました。
―― 全体が苦戦する中、なぜ伸びたとお考えですか。
石川氏 分かりやすい料金が1つと、これを言うと面白くないかもしれませんが、営業力が他のMVNOと違います。手売りをしているようなものなので、販売力が全く違うといってもいいでしょう。それならば本当はもっと売れてしかるべきなのかもしれませんが、いろいろな商品がある中でお客さまニーズに合ったところだけを売っているので、このぐらいになっています。2月からは、魅力的なデータ盛が出てくるので、これで一段上にいかなければいけないと発破をかけているところです。
2021年2月に新料金プランを導入したJ:COM MOBILEだが、MNOの値下げが相次いだ結果、価格競争力が当初の想定より落ちてしまったことがうかがえる。例えば、固定回線のJ:COM NETとUQ mobileで自宅セット割を組めば、料金は3GBで980円まで下がる。J:COM NETのユーザーが、あえて1GB、1078円のJ:COM MOBILEを契約する必然性が薄くなっていたといえる。このように考えると、データ盛が1GBコースを手厚く強化し、5GBにデータ容量を拡大する理由も透けて見える。
一方で、データ盛の導入により、価格競争力が高まったのも事実。あくまでセット契約が前提ではあるものの、J:COM電力のように、比較的対象世帯が多く、導入も容易なサービスが含まれているため、料金の安いMVNOを求めていたユーザーのニーズにも応えられそうだ。サポートが充実したMVNOという立ち位置には依然として独自性があり、MVNO各社が苦戦する中、契約者数を伸ばしているのも納得できる。
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