ここ最近、「ワンセグ」機能を搭載したスマートフォンがなくなりつつある。
2021年12月に掲載した記事「スマホから消えた「ワンセグ」、2021年は搭載機種ゼロに その背景を探る」では、ワンセグ搭載スマートフォンが減った要因に「通信の性能向上」「動画配信の普及」「テレビ離れ」を挙げたが、読者から「NHK受信料の件が大きいのでは」という反応が特に多かった。今回は、NHK受信料とワンセグの関係に焦点を当てたい。
そもそもワンセグとは、地上波テレビ放送のデジタル化に伴い、2006年に始まった携帯電話・カーナビ向けの放送サービス。1チャンネル6Mhzの帯域幅を13個のセグメントに分割するデジタル放送に対し、そのうちの1セグメントを用いて放送するのがワンセグだ。
基本的には携帯電話の小型アンテナで320×240ピクセル(QVGA)の低解像度を安定的に受信できるように設計されており、テレビ放送と同じ解像度の「フルセグ」が受信可能な端末も過去に販売された。
そんな中、ワンセグ機能付きの携帯電話を所有すると、NHKと受信料契約を結ばなければならないかどうか、という訴訟の上告審で、最高裁が2019年に「契約義務はないと訴えた原告側の上告をいずれも退ける」との判決を下した。
放送法については、受信設備の設置者にNHKとの受信料契約を義務付けているが、この判決によって、ワンセグ機能が付いた携帯電話の所有者にも、月額1225円(口座・クレジットの場合)のNHK受信料を支払う義務が生じることになった。
iPhoneをはじめ、最近のスマートフォンはワンセグ機能を搭載していないが、それでもスマートフォン周辺機器(iPhone向けのものも含む)として市場に出回っている外付けワンセグ(フルセグを含む)チューナーを所有した場合、NHK受信料の支払い対象になってしまう。
NHKを一切見ない人にとって、外付けワンセグチューナーの所有により、余計な出費を強いられてしまうのは、かなりネックになるはずだ。
一方、ラジオや音声多重放送(複数音声を重ねる放送、ステレオ/サラウンド放送を含む)のみを受信できるチューナーも契約義務の対象外。つまり映像出力不可のチューナーであれば、契約義務は生じない。
これまでワンセグやフルセグは、災害時の情報取得手段として注目されてきたが、FCNT製や京セラ製の一部機種に搭載されているFMラジオチューナーを活用するのも手だろう。
実際、放送法の第64条にはこのように明記されている。
協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であって、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)もしくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。(以下略)
(※)協会=NHK
要するに、ワンセグチューナーで番組などを視聴するか否かは別として、NHKとの契約義務が生じる基準は「チューナー」にあるため、理論上はチューナー搭載機が手元に全くなければ契約せずに済む、ということになる。
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