ドコモに聞く「ahamo大盛り」導入の狙い 想定を超えた利用で“軌道修正”も石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2022年04月23日 09時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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 2021年3月に導入されたドコモの「ahamo」は、大きな話題を巻き起こした。MNOの料金プランとしては破格といえる2970円(税込み、以下同)という安さも奏功し、ユーザー数は2022年3月に300万に達した。ドコモユーザーの母数が多いとはいえ、他社のオンライン専用料金プランと比べると、異例の速さといえる。ドコモ全体のユーザー獲得にも貢献し、発表後はMNP(番号ポータビリティ)の獲得合戦でも善戦しているという。

 一方で、1年間、料金プランに大きな変化がなかったのも事実だ。KDDIがpovoを「povo2.0」にリニューアルしたり、ソフトバンクが「LINEMO」に3GBのミニプランを追加したりしたのとは対照的だ。そんなahamoが、新サービスとして送り出すのが80GBの超大容量を追加する「ahamo大盛り」だ。もともとのahamoに付帯する20GBと足すと、1カ月で利用できるデータ容量は計100GBになる。では、ドコモはなぜahamo大盛りを導入するのか。同社の狙いをahamo推進室長の岡慎太郎氏に聞いた。

ahamo大盛り ドコモは、計100GBにデータ容量を拡大するahamo大盛りを6月に開始する

オプション形式で柔軟性を持たせたahamo大盛り、5Gギガホ プレミアとの違いはシンプルさ

 ahamo大盛りは、ahamoに「大盛りオプション」を足したときの総称。大盛りオプションは、ahamoに80GBの大容量を追加するサービスという位置付けだ。料金は1980円。ahamo本体の2970円と足すと、合計額は4950円で100GBになる。追加される80GBは、国内でのみ利用可能。テザリングでの通信にも適用されるが、海外ローミング時はahamo本体に付く20GBまでが無料になる仕組みだ。

 料金プランとの違いは、1カ月に渡って適用されるものではなく、オプションを契約した時点で適用される点にある。月初に契約して「100GBプラン」のように使ってもよし、月の途中でもともとの20GBが足りなくなりそうだったときだけ、大盛りオプションを追加してもよしと、柔軟性が高い。このような仕様になった理由を、岡氏は次のように語る。

ahamo大盛り 料金プランではなくオプションのため、20GBが足りなくなった時点で付けることができる

 「プランにするか、オプションにするかは一長一短。いろいろと悩ましいところではあったが、お客さまの利用状況を考えると、月の中ほどで20GBを超えそうなときに『大盛りを付けるか』ということができた方がいい。20GB近辺に一定数のユーザーがいることは分かっていたが、月初めから大盛りするかどうかは決めきれないと思う。お客さまの立場に立つと、月の途中で適用できる方が使いやすい」

 ユーザー側で操作しないと、翌月は月初から大盛りオプションが適用されてしまうというが、「次の月は元に戻す(オプションを解除する)設定もある」。追加で80GB、計100GBに設定した理由はキリのよさだ。岡氏は「『5Gギガホ プレミア』をやっているので、そことのバランスがある。20GBを超えても(データ通信を)楽しみたい方がどれぐらいいるかという中で、100GBと決めた。(100GBは)分かりやすく、キリがいい数字というのもある」と語る。

ahamo大盛り ahamo大盛りの狙いを語る、ドコモの岡氏

 ahamoには、550円で1GBを追加できるオプションもあるが、その次が大盛りオプションで80GBになるのは、選択肢として極端なようにも見える。実際、ドコモ側でも大盛りオプションを80GB一択にするのは、「悩ましいところ」だったという。重視したのは、「シンプルさ」だ。

 「ahamoは、シンプルで分かりやすいことをコンセプトに始めた料金プラン。ここで、プラス30GB、プラス80GBというのをいっぱい作ってしまうと、それで迷わせることになってしまう。できるだけシンプルにしたいというのは、出すときに意識していた」

 データ容量が無制限の5Gギガホ プレミアとのすみ分けも、シンプルさにあるという。5Gギガホ プレミアは7315円の料金プランだが、家族にドコモ回線が3回線以上あれば1000円、光回線や「home 5G」とセットで契約すると1000円の割引を受けられる。支払いをdカードに設定すると受けられる「dカードお支払い割」の170円割引を含めると、最低料金は4928円まで下がる。ahamoとは異なり、5分間の音声定額はここに含まれないが、金額的には逆転し、ahamo大盛りの4950円より安価になる。

ahamo大盛り 5Gギガホ プレミアは、各種割引適用時に4928円まで下がるが、そのぶん条件が限定される。シンプルさを重視したahamoとの違いだ

 一方で、岡氏は「ahamoは最初のコンセプトとして、新しく社会人になるような、単独契約する方をある程度意識している」という。「家族がいることで割引になるというような条件付きでお得になるより、素でいくらになるのかで売りたい。単独で契約する方に魅力的に見える設計だったが、そこは今も変わらないと思っているという」点は、割引を重ねて料金が下がっていく5Gギガホ プレミアとの大きな違いだ。

 データ使用量の多いユーザーには便利なahamo大盛りだが、月の後半で20GBを使い切った場合には、少々悩ましいオプションといえる。繰り越しがないからだ。月末に近づくほど、大盛りオプションを付けるかどうかの判断が難しくなる。ahamoでは、1GBあたり550円でデータ容量を追加できるが、4GBで2200円になり、大盛りオプションの1980円を超えてしまう。

ahamo大盛り ahamoでは、データチャージが1GB、550円で提供されている。追加で必要な容量が3GBを超えるときには、大盛りオプションを選んだ方が安くなる

 仮に翌月まで繰り越しができれば、あまり迷わず大盛りオプションを付けられそうだが、「当初は考えていなかった」と岡氏。同氏は「今後の利用動向やお客さまの声も見ながら、必要であれば考えていかなければいけない」と言うが、シンプルさを重視する料金プランなだけに、オプション購入の判断がしやすくなる繰り越しは、ぜひ検討してほしいサービスの1つだ。

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