ahamo大盛りを100GBと大容量にした背景にあるのは、データ使用量の増加だ。グローバルなトレンドとして、5Gの導入やそれに合わせたコンテンツのリッチ化に伴い、トラフィックは年々拡大しているが、ドコモも例外ではない。特にahamoの主要なユーザーである20代、30代では、その傾向が顕著になる。岡氏は「実態として年々データ利用量が増えている」としながら、次のように語る。
「社会的な背景で言えば、コロナ化でリモートワークやオンライン授業も当たり前になっている。そういう方々に話を聞くと、自宅に固定回線を引いているが速度が遅くて苦労していたり、昼間に通信が集中して(ビデオ会議アプリなどに)つながりにくくなってしまったりといったことがある。
職場に通わなければならないエッセンシャルワーカーのような方々も、休憩時間や通勤時間に“ギガ”を気にしながら動画などのコンテンツを見ている。そういうところでのストレスがなく、思う存分使える環境には、一定の需要があると思っていた」
とはいえ、他社はオンライン専用プランで、より低容量、低価格の料金プランを拡充しているようにも見える。例えば、KDDIのpovoはpovo2.0で、7日間1GBや30日間3GBのトッピングを拡充。LINEMOも、3GBで990円のミニプランを2021年7月に導入済みだ。これに対し、同じオンライン専用プランのahamoは、20GB一択のまま。大盛りオプションで80GBを追加できるのは他社にない特徴だが、対抗策を打ち出さなくていいのだろうか。
こうした疑問に対し、岡氏は「他者が低利用(のユーザー向けプラン)を出しているのは承知しているが、今はエコノミーMVNOをスタートしたばかりのタイミング」と答える。「まずはそこ(エコノミーMVNO)をしっかりやらなければいけないのに、ahamoで低容量プランを出すのは違うのではないかという判断が戦略的にあった」という。まずは「大容量を伸ばしていく方がahamoらしい」――データ利用量の多い20代、30代のユーザーが半数以上を占めるahamoでは、エコノミーMVNOと差別化を図った方がいいと判断したこともうかがえる。
ahamoの料金は2970円と安いが、オンライン専用にすることでコストを削り、ギリギリまで値下げしたと言われている。ドコモのARPU(1ユーザーあたりからの平均収入)は第3四半期で4800円。ドコモ光を除くと4200円だが、ahamoの料金はこれを大きく下回る。いかにデータ通信を使ってもらうかが、ARPU底上げの鍵といえる。こうした状況の中、データ容量をさらに使いたいahamoのユーザーに選択肢を提供するのは経営戦略上も重要だ。
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