HISモバイルに聞く“290円プラン”誕生の背景 OCNに対抗して価格ナンバーワンを維持MVNOに聞く(1/3 ページ)

» 2022年04月28日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 5月中旬に新料金プランを導入するHISモバイル。目玉になっているのが、1GBプランだ。この料金プランは通常だと550円(税込み、以下同)かかるが、1カ月のデータ使用量が100MB未満だった場合のみ、金額が290円まで下がる。変則的な2段階の料金プランといえる。データ容量は少ないが、音声通話の従量料金が30秒9円と安く、5分間の準音声定額は550円、完全定額も1480円と比較的リーズナブルな金額で提供される。

HISモバイル 1カ月のデータ使用量が100MB未満だと、月額290円となる料金プランを用意するHISモバイル

 290円という料金で狙うのが、フィーチャーフォンからの乗り換えを考えるユーザーだ。3月にはKDDIが3Gのサービスを終了。ソフトバンクやドコモもそれぞれ2024年、2026年に3Gを停波する予定で、徐々にフィーチャーフォンからの乗り換えが増えている。音声通話の利用が中心のユーザーを、維持費が破格の料金プランで取り込んでいくのがHISモバイルの戦略だ。こうしたプランを生かすため、同社はフランチャイズ方式のリアル店舗も開設した。

 ユーザー数の拡大にアクセルを踏んだHISモバイルだが、その背景には何があったのか。同社で代表取締役社長を務める猪腰英知氏に話を聞いた。

価格ナンバーワンの強みがなくなってしまった

―― 今回の料金プランは、290円からという金額のインパクトが大きかったと思います。この狙いを教えてください。

猪腰氏 昨年(2021年)は590円の料金を出しましたが、とても大きな反響がありました。正直、あのレベルで最下限を他社に追いかけられることはないと思っていましたが、(10月のエコノミーMVNO開始に合わせて)OCN モバイル ONEも(500MB、550円の料金プランで)当ててきました。あれで、一番の強みにしていた価格ナンバーワンがいったん終わってしまったんです。OCN モバイル ONEのプランは1GBではありませんが、無料通話が付いていたり、販路が広かったりするので、市場の流れとして商品が弱まってしまったと感じていました。HISモバイルはもう一段階行きたいという思いがありました。

HISモバイル OCN モバイル ONEの550円プランよりも安い設計となっている

 本当は3月から始めたかったのですが、検討事項や交渉事項があって難しかったので、3月中に発表だけはすることにしました。世の中の背景を考えると、(3月31日に実施されたKDDIの)3G停波はかなり大きなイベントだからです。また、4月からは成人年齢も18歳に引き下げられた他、物価も上がっているのが顕著になっている局面で、家計が苦しいという声も増えています。そこに合わせて、金額的にズバッといきたかった。

 とはいえ、先に日本通信が290円のプランを出したいたこともあり、そのレベルに合わせなければ、最安値ではなくなってしまいます。これ以上最下限を掘っていくのは10円でも重いので、そこに合わせて290円を決定しました。ただし、日本通信は従量で1GB、290円ですが、それと同じでは面白くもなんともありません。今の1GB、590円のプランもそうですが、1GBを使い切ったあとも低速で使い続ける方が、1割から2割ぐらいいます。そういったユーザーにとっては、低速通信がないプランだと意味がありません。

 どうしようかとも考えましたが、差別化しつつ、3Gの方が本当に安く使えるところにアプローチしたい、さらに低速通信を使う方にとっても使いやすいようにしたいと考えた結果、あのようなプランをご用意することになりました。ガラホ(Androidベースで4Gに対応したフィーチャーフォン)になると多少のデータ容量がついていないと使いづらいので、100MBを付けています。

HISモバイル HISモバイルの猪腰英知社長

1GBのユーザーが10〜15%ほどいる

―― 日本通信の「合理的シンプル290プラン」は、そのままデータ通信ができなくなるか、金額が上がってしまうので、そこが違うということですね。

猪腰氏 はい。1GBを使い切ってそのまま低速で使うか、もしくは使っていないというユーザーが10%から15%ぐらいいます。完全に待受けだけと言う方も10%ちょっといて、ガラケー(フィーチャーフォン)なりサブ機などに入れていたり、取りあえず電話番号だけ取っていたりします。

―― 3Gの停波に合わせたというお話もありましたが、フィーチャーフォンを使い続けるユーザーは、あまりキャリアを変えないような印象もあります。この点はいかがでしょうか。

猪腰氏 切り替えについてはご本人でなく、その子ども世代がやると思っています。30代から60代ぐらいまでの方が、60代から90代ぐらいの親世代の方に切り替えてもらうプランにできたらと考えています。料金プランと同時にHISモバイルステーションを発表した背景も、そこにあります。年配の方が知らないショップに来てやるというのではなく、自分たちのスマホが安くならないかと思って来た方がついでに(親の回線も)変えるということを想定しています。契約しやすいプランを出すことで、そういった層にも刺さりやすくなります。

―― HISの知名度はあるので、日本通信が290円のプランを出すよりインパクトは大きそうです。

猪腰氏 おっしゃるように、一部アンケートでは、HISだからというお声をいただいていますし、ネットでもそういうお客さまはいます。ただ、いかんせん、親の旅行業が苦戦しているので、子どもなりに奮闘している感じですね(笑)。

【更新:2022年5月2日16時30分 HISモバイルからの依頼を受け、一部、表現を修正いたしました。】

 そのため、ライバルと同じような広告出稿量では戦えません。イメージ戦略をやっている大手と同じようにやることはできない。店舗があるので(ユーザーを)獲得できるという甘い判断はしていません。

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