「どうしても最安値を取りに行きたかった」 HISモバイル「格安ステップ」の狙いを聞くMVNOに聞く(1/3 ページ)

» 2021年08月27日 13時42分 公開
[石野純也ITmedia]

 H.I.S.Mobileは、旅行代理店大手のHISと、MVNOの老舗である日本通信がタッグを組んで設立したMVNO。発足当初は海外旅行時で割安な通信を使える「変なSIM」を投入して話題を集めた。一方で、同社は国内向けのMVNOとしても「HISモバイル」を展開しており、割安な通信サービスを提供している。そんなHISモバイル向けに投入した新料金プランが「格安ステップ」だ。

 データ容量は1GB、3GB、5GB、7GB、10GBで、それぞれの料金(税込み、以下同)は590円、790円、1190円、1490円、1790円。MVNOの主戦場ともいえる1GBや3GBのプランが、特に割安に設定されていることが分かる。日本通信がドコモから割安な卸価格で音声通話の提供を受けている強みを生かし、通話料も30秒11円に抑えた。卸価格がそのまま値下げされているため、中継電話アプリなどを使う必要もない。通話の多いユーザーには、700円の「5分かけ放題オプション」も提供する。

HISモバイル HISモバイルの「格安ステップ」では、月額590円(1GB)〜月額1790円(10GB)という5種類の料金プランを用意している

 一方で、HISモバイルといえば、どうしても「旅行」のイメージが強い。コロナ禍で旅行業界全体が苦しむ中、同社はどのように親会社との相乗効果を出していくのか。同社で代表取締役社長を務める猪腰英知氏に、新料金プラン導入の背景と合わせてHISモバイルの戦略を聞いた。

お客さまが比較したときに一番であることが重要

―― HISモバイルは、2月に20GBで2178円の「格安弐拾」を導入しています。ただ、MVNOのユーザー層を考えると本命は格安ステップですよね。これについては、どのようにお考えでしょうか。

猪腰氏 はい。こちら(格安ステップ)が本命です。格安弐拾は話題的に20GBプランが盛り上がっていたときで、同じタイミングで比較軸を置ければいいと思って出したものです。

 ドコモがahamoを投入するということで、3278円(発表当時、現在は2970円)の金額を出し、業界がかなり揺れ動きました。乗り換えもかつてないぐらいありました。一般の人が料金プランを見直す機運がここまで高まったのは、初めてではないでしょうか。そこに日本通信が20GBを出し、同じようなプランが提供できるのであればぜひやりたいということでその市場に入らせていただきました。

 ただ、キャリアが3000円台で勝負している中、1000円以下がMVNOとしての競争軸になっています。全ての事業者がここについてこられるわけではないだろうとは思いますが、日本通信と話をする限り、自分たちはついていける。後発になってしまったので、いったん他の皆さんが出すものを見極め、最後に一番安いものを出そうと思いました。様子見をしつつ、大手が出し切ったところで新プランの方向性が見えました。500円、600円ぐらいであれば、市場での存在価値は残ると思います。

HISモバイル H.I.S.Mobileの猪腰英知社長

―― 1GBや3GBの料金を見ると、大手のMVNOより安く設定されています。これも、あえてやっているということですね。

猪腰氏 価格.comなどを見ると、他社では、nuroモバイルの3GBプラン(792円)の人気が高まっています。また、現実的には1GBでいい人もアンケートを取るとたくさんいます。ここでなら最安値を取れる。僕たちは広告宣伝費をバンバンかけてやるような事業者ではないので、お客さまが比較したときに一番であることが重要です。開発が遅れ、2カ月ぐらい投入時期がズレてしまったこともあり、600円台で出しても微妙だなということで、1GBは500円台にしました。音声通話も安いことを考えれば、響く人には響くプランだと思います。

 メディア的にも590円は響きますよね。「利益がなくて厳しいのでは」という取り上げられ方もされましたが、経営的にはそんなこともありません。存在価値がないプランをダラダラやって取り上げられないぐらいなら、捨て石のような感じでも世の中に発信してもらえた方がいい。格安ステップの発表会も、広告効果で言えば億を超えるぐらい大きなものでした。そもそもあのプランだけでもうけようとは思っていません。他に商売を手掛けている中で、知名度を上げること考えました。

―― ただ、MVNEとしてだけでなく、株主にも日本通信が入っているため、簡単に値下げはできなかったのではないでしょうか。

猪腰氏 開発以上に、そちらに時間がかかりました。590円になかなかゴーが出ず……。原価的な話は、あちらの経営陣ともかなり厳しい交渉をしてきました。

―― 1GBや3GBは他社比でも安いですが、5GB、7GB、10GBは率直に言って普通の金額というか、他社と同程度だと思いますが、これはあえてでしょうか。

猪腰氏 建てつけがちょっとおかしいんですよね。本来だったら、5GBは900円台、1000円台になっていたと思います。ただ、全部やりたいという話だとどうしても前に進まず、折衷案として、上の容量は変に下げないことになりました。その部分で、ある意味バランスを取っています。とはいえ、例えば7GBを選択しても、大きく他社に負けているわけではありません。変更の手間がなく、最安値を選べることが重要です。

「ステップ」だけど段階制プランではない

―― “ステップ”というと、自動的に料金が変わるようにも思えますが、一般的な料金プランと同じように、データ容量は1回選んだら月内は固定ですよね。

猪腰氏 はい。今はコロナ禍ということもあり、ライフプランがいろいろなタイミングで変わります。テレワークなので使わないときには1GBに変えたり、出掛けるのが多くなったら10GBのプランにしたりと、お得にプランを選択してほしいという思いをネーミングに込めています。

 実はもともとはそういう設計(自動で料金が変動するプラン)も検討していましたが、どうしても最安値は取りにいきたかった。中途半端に700円スタート、800円スタートになってしまうとインパクトがありません。最安値を取るため、そこは外すことにしました。われわれはIIJmioやOCN モバイル ONEのように、全国フラットでやっているわけではなく、確実に刺さるニッチなところからと割り切っているところがあります。

 ただ、楽天モバイルからの乗り換えはけっこう多い。無料だけどエリア的に無理だったというときに、楽天モバイルより下の価格で出しているから(乗り換え先になるの)だと思います。

―― 冒頭でお聞きした格安弐拾は、格安弐拾というプランのままですが、20GBを格安ステップに含めるような考えはなかったのでしょうか。

猪腰氏 (分けているのは)格安ステップより前に格安弐拾があったのと、格安弐拾は70分の無料通話が付いているからです。下のプランで無料通話付きを訴求するのはなかなか難しい。スマホをあまり使っていない人は、電話もあまり使っていないからです。無料通話付きの20GBプランと格安ステップだと方向性が違うため、データ容量は一度10GBまでで区切ることにしました。ただし、将来的にはワンプランに変えていきたいと思っています。これはどこかのタイミングでやり、利便性を上げていきます。

HISモバイル 月額2178円で20GBのデータ通信、70分までの国内通話を利用できるプラン「格安弐拾」
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年03月12日 更新
  1. 「iPhone 17e」と「iPhone 17」は何が違う? 3万円の価格差をスペックから検証する (2026年03月10日)
  2. 「iPad Air(M4)」実機レビュー 「もうProじゃなくてもいい」と思えた性能、だからこそ欲しかったFace ID (2026年03月09日)
  3. 「iPhone 17e」を試して分かった“16eからの進化” ストレージ倍増と実質値下げで「10万円以下の決定版」に (2026年03月09日)
  4. 自分で修理できるスマホ「Fairphone(6th Gen.)」を見てきた わずか10分で画面交換、2033年まで長期サポート (2026年03月10日)
  5. 携帯キャリアの通信9サービス、総合満足度はpovoがトップ サブブランド勢が好調 MMDが調査 (2026年03月10日)
  6. 60ms未満の音声遅延速度で端末をワイヤレス化「UGREEN USBオーディオトランスミッター」が30%オフの2309円に (2026年03月09日)
  7. キーボード付きスマホ「Titan 2 Elite」がUnihertzから登場 実機に触れて分かった“絶妙なサイズ感” (2026年03月09日)
  8. 庵野秀明、GACKT、ひろゆき、ドワンゴ川上らが集結 “カメラのいらないテレビ電話”をうたう新サービス「POPOPO」18日に発表へ (2026年03月11日)
  9. Qualcommのウェアラブル新チップが「Elite」を冠する理由 最新モデム「X105」は衛星通信100Mbpsへ (2026年03月11日)
  10. 【無印良品】ウエストポーチもになる「スリングバッグ」が3990円に値下げ中 植物由来の原料を使用 (2026年03月11日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年