IoT向けの通信サービスなどを提供するソラコムが5月18日、ネットワークカメラ「ATOM Cam」などのIoT製品を提供しているアトムテックと資本業務提携を締結したことを発表。その第1弾として、クラウドカメラサービスの「ソラカメ」を同日より提供開始した。※価格は全て税込み。
同日の記者発表会では、両社の代表が提携の経緯と新サービスの内容について説明した。ソラコムの代表取締役社長である玉川憲氏によると、同社ではこれまで「IoTの民主化」を掲げ、IoT向けの通信サービスやクラウドサービスなどを提供。3GやLTEなどのセルラー回線の他、「Sigfox」「LoRaWAN」などのLPWAを含むIoT向け回線数は400万を突破。140カ国・2万以上の顧客が利用しているという。
また現在、同社ではデバイスを活用したソリューション、とりわけデバイス上でAI処理ができるネットワークカメラ「エッジAIカメラ」に関連するソリューションに力を入れている。実際、ソラコムは2019年から「S+ Camera」というエッジAIカメラソリューションを提供しており、2021年には防水性能を備えた第2世代モデルの投入や、AI Dynamics Japanという企業と連携し、20以上のカメラ向けAIアルゴリズムを提供するマーケットを用意するなどの取り組みを進めている。
ただ玉川氏は、従来のS+ Cameraは開発者が利用するため多くの機能を搭載していることから、値段も4万円程度と、誰でも手軽に入手できるものではないとのこと。そこで、より機能を絞って安価、かつすぐ利用できるIoTカメラを作りたいと考えていたそうだが、そこで出会ったのがアトムテックのATOM Camだったという。
玉川氏はATOM Cam実際に試してみて、3000円を切る価格ながら非常に性能が高いことに感銘を受け、知り合いを通じてアトムテックの代表取締役である青山純氏に会いに行ったとのこと。すると青山氏も、日本でもっとIoTを普及させ、世界をリードできる製品を作りたいという情熱を持っていたことから2人は意気投合、「一緒にやろうと思ってアトムテックに出資することになった」と玉川氏は話している。
その青山氏は中国・浙江省の出身で日本の大学に留学、富士通などに勤務した後にアトムテックを設立した。青山氏は日本で、なおかつIoT分野で企業した理由について、日本はインターネット関連の技術やサービスで後れを取っているが、「これからのIoT時代、インターネット技術とは違ってハードがあるからこそ信頼できる製品やサービスを提供できる。日本が培ったハード開発技術を発揮して世界をリードできる製品を生み出せる」と考えたのが理由だとしている。
最初の製品にカメラを選んだ理由について、青山氏は誰でも手軽に購入できる製品を提供することを目標にし、商品をリーズナブルに提供するには大量販売してコストを下げる必要があると判断。そのためには「あれば便利なものより、なかったら困るものの方が市場に受け入れられる、大量販売できると考えた」と話し、防犯や見守りなど多様な用途に利用できるカメラを手掛けるに至ったとしている。
実際、同社が販売している「ATOM Cam」シリーズは3モデルあるが、いずれも2000〜4000円台と非常に低価格だ。青山氏は安さの理由について、安価な製品ながらも高性能・高品質な部品を使い、初期不良を減らすことでサポートに関わるコストなどを低減させていること、ECサイトでの販売を主にして流通コストを下げていること、SNSによる口コミに重点を置いて宣伝コストを下げていることを挙げている。
もともとコンシューマー向けを主体に販売を開始するとATOM Camだが、実際に販売すると従業員の監視や作業状況の配信に活用されるなど、「企業ユーザーも多くいた」(青山氏)とのこと。そこで今回の提携を機として、ソラコムと共同で法人向けの事業拡大を目指すとしている。
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