この取り組みを一歩進めたのが、Xiaomiモノ作り研究所だ。“研究所”という名称ではあるが、正式にはファン向けのイベントという位置付け。Xiaomiの東アジア担当ゼネラルマネジャーを務めるスティーブン・ワン氏によると、「ユーザーと一緒に研究開発や製品の定義をして、ロードマップや製品の選定を行っていく」のが主な目的だ。同様の取り組みは他国でも実施しており、「現地のユーザーと一緒に製品づくりをしている」(同)という。
日本では、Redmi Note 11 Pro 5Gの発表があった5月19日に募集を開始。同日中に、200人以上の応募があったことが明かされている。当初は「1000人といった規模ではできず、できるだけ人数を絞って実施する」予定だが、「ここでユーザーの声を集め、できるだけ距離を縮めていきたい」(同)方針だ。Xiaomiは、モノ作り研究所を通じて、まずは「皆さまから2年間、Xiaomiが出してきた製品に対するフィードバックを聞かせていただきたい」(同)という。
次のステップとして考えているのが、製品の選定だ。ワン氏は、「Xiaomiは、SKUでいうと(スマートフォンが)年20から30、IoT製品は100に上る数を出している。皆さまには、日本市場や日本の商品者に合ったものがどれなのかを、一緒に選んでいただきたい」と語る。ここで挙がった製品が必ず投入されるというわけではないものの、「価値の高い参考意見になる」(同)という。こうして絞り込まれた製品のβテストを行うのも、Xiaomiモノ作り研究所の役割だ。
もちろん、他のスマートフォンメーカーもユーザーからのフィードバックは取り入れてはいるが、公募に近い形でファンを巻き込んでイベント化しているケースは珍しい。MVNOでは、オプテージの運営するmineoが、「ファンとの共創」を掲げ、コミュニティーサイトの「マイネ王」を運営したり、イベントを開催したりしているが、位置付けはそれに近い。「アイデアファーム」と呼ばれる掲示板で募った意見をもとに投入したサービスも数多く存在する他、具体的な経営情報を開示しつつ、本格的にファンと共同でサービスを開発する「共創アンバサダー」という制度も実施してきた。
製品企画にユーザーを巻き込むことで、いわゆる消費者目線を取り入れやすいのはもちろん、関わったユーザーは製品に対する愛着やメーカーに対する忠誠心が高まる。ファンマーケティングはXiaomiが得意とする分野なだけに、注目しておきたい取り組みといえそうだ。スマートフォンの場合、守秘義務のあるキャリアとの取引も多く、どこまで深く関与できるかは未知数な部分もある。mineoのように、実際の製品やサービスをある程度、定期的に投入していけるのかどうかで、成否が左右されそうだ。
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