レノボ傘下のモトローラ・モビリティ・ジャパンは、6月3日に「moto g52j 5G」を発売した。製品名に付いた「j」という文字が示しているように、同モデルは日本市場に特化した専用モデル。4月に発表され、グローバルで投入している「moto g52」をカスタマイズした1台で、日本向けの仕様として、おサイフケータイや防水に対応する。moto gは、ミドルレンジモデルが中心のシリーズで、価格は3万9800円(税込み、以下同)だ。
おサイフケータイや防水は、キャリアが扱うスマートフォンの“標準装備”ともいえる仕様だが、メーカー自身が販売するオープンマーケットのモデルでは、対応状況はまちまちだ。グローバル版からのカスタマイズを最小限に抑え、低コストで市場に投入していることが多いため、オープンマーケットでの販売が始まった当初は、こうした仕様に対応しているモデルは少なかった。一方で、最近では、日本市場を重視するメーカーが、徐々にFeliCa搭載モデルを増やしている。
そんな中、ついにモトローラの端末がFeliCaと防水に対応した。FeliCa自体はキャリアモデルで実績があったものの、オープンマーケットで販売するモデルとしては初。日本市場でのシェア拡大に、本腰を入れ始めた格好だ。そんなモトローラのmoto g52j 5Gをきっかけに、オープンマーケットにおけるおサイフケータイの対応状況の変遷や拡大している背景を解説していく。
moto g52j 5Gは、グローバルで販売されているmoto g52jをベースにしながら、“日本仕様”を盛り込んだ端末だ。FeliCaマークなどの刻印を除けば外観はグローバル版とほぼ同じだが、「基板から設計し直した」(モトローラ・モビリティ・ジャパン 代表取締役社長 松原丈太氏)と中身は別物に仕上げているという。最大の違いは、FeliCaの搭載とおサイフケータイへの対応だ。
同モデルをおサイフケータイに対応させた理由について、松原氏は「道具として便利に使っていただきたいという狙いと、(ユーザーの)ニーズに応える商品を出していく先駆けとしての商品」と語る。キャッシュレス決済の需要が高まるなか、スマートフォンを日々の生活を支える道具として、対応は欠かせないと判断したことがうかがえる。
IP68の防水・防塵(じん)に対応している点も、moto g52との大きな違いだ。moto g52もIP52の基準は満たしているものの、moto g52j 5Gと比べると等級が低く、防滴レベルにとどまっている。ゲリラ豪雨や梅雨がある日本では、防水へのニーズが高い。これも、「道具としてのバランスの取れたスペック」(同)として、モトローラが注力してカスタマイズした部分だ。
再設計と言われるように、FeliCa以外もグローバル版とは仕様が異なる。例えばプロセッサは、moto g52がSnapdragon 680なのに対し、moto g52j 5GはSnapdragon 695 5Gを搭載する。これは、moto g52が4Gモデル、moto g52j 5Gが5Gモデルという違いに由来するものだろう。ディスプレイもサイズは同じ6.6型だが、moto g52はリフレッシュレートが90Hzの有機EL、moto g52j 5Gは120HzのIPS液晶といった差分がある。
カメラは5000万画素のメインカメラに、800万画素の超広角カメラと200万画素のマクロカメラを備え、バッテリー容量は5000mAhとどちらも同じだが、急速充電のスペックは30Wから15Wにダウンしている。外観やカメラ、バッテリー容量以外はもはや別物といえる端末に仕上がっているmoto g52j 5Gだが、価格は3万9800円とベースモデル並みだ。moto G52はフランスの価格が259ユーロ(約3万6150円)、イタリアでは299ユーロ(約4万1730円)で販売されており、カスタマイズを加えた一方で、価格は抑えられていることが分かる。
この価格でmoto g52j 5Gを投入できたのは、「日本、インド、オーストラリアの3地域が、(モトローラに)もっとも重要視されているマーケット」(同)だからだ。モトローラ全体では、販売台数が32%増、売り上げが40%と増と業績は好調で、特に中南米ではシェア2位、北米ではシェア3位と存在感を示している。「日本が所属するAPAC(アジア太平洋地域)はまだこれから」(同)だが、それゆえに、注力地域としてアクセルを踏み始めたといえる。
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