とはいえ、FeliCaへの対応には一定のコストがかかる。グローバル版がFeliCaまで含んだNFCチップを搭載しているかどうかや、どの程度の台数を販売するかによって、1台あたりにかかるコストは変わってくるが、オープンマーケットの市場が拡大した結果、比較的販売数量の多いミッドレンジモデルであれば、ペイできる規模になってきたということだ。
モトローラの松原氏も、「載せられる、載せられないは企画台数に大きく依存する」と語る。実際、他メーカーを見ても、オープンマーケットでは販売数の少ないハイエンドモデルでは、FeliCaの搭載が見送られる傾向がある。裏を返せば、moto g52j 5Gはモトローラとしても販売に注力する、売れ筋狙いのモデルということだ。APACでのシェア拡大を目標にする中、日本での展開を本格化させる意思の表れといえる。
技術的な背景として、グローバルメーカーがおサイフケータイに対応しやすくなったことも挙げられる。フェリカネットワークスの広報担当によると、「GlobalPlatformという国際標準に準拠したチップ内のセキュアエレメントにおけるアプリケーションとして、日本の交通・決済等のサービスに対応したモバイルFeliCaが実現できるようになっている」という。2019年2月には、GlobalPlatformに対応し、FeliCaの仕様にも準拠したソリューションをNXP Semiconductorsが発表。グローバルメーカーが、FeliCaを採用しやすい土壌が出来上がった。
先に挙げたように、2019年前後ごろからオープンマーケットで徐々におサイフケータイ対応モデルが増えているのは、こうした事情も関係しているとみていいだろう。日本独自のカスタマイズを加えると、OSのアップデートに追従しにくくなる問題もあったが、「モバイルFeliCaミドルウェアという端末内に搭載されるソフトウェアについても、Android OSの標準実装に対応し、そのアップデートにもタイムリーに対応できるような活動を続けている」(同)。
結果として、フェリカネットワークスにも「(海外メーカーの)日本市場の参入にあたり、モバイルFeliCa対応を検討されていということで弊社にお声がけをいただき、ご相談に対応してご支援する機会が増えてきている」という。モトローラも、こうしたメーカーの1社だ。
松原氏がmoto g52j 5Gを「先駆け」と呼び、「今回開発を通して、スケジュール的、コスト的にどれぐらいリスクがあるのかが経験として分かってきたので、もう少し攻めていくことができる」と語っていたことからも分かるように、今後は端末のバリエーションも増えていくことになりそうだ。
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