iPhoneの激安販売は「望ましい競争形態ではない」 ドコモ井伊社長が主張する“値引きの上限”(1/2 ページ)

» 2022年06月21日 12時47分 公開
[田中聡ITmedia]

 ITmedia Mobileでは、NTTドコモの井伊基之社長のインタビューを実施。第1回の記事では、ahamoやエコノミーMVNOなどの料金氏先についてお話をうかがった。第2回では、単体購入を条件とした端末の激安販売や、それに伴う転売の問題に焦点を当てる。

井伊基之 インタビューに答えるドコモの井伊基之社長

他社が仕掛けたので、追随しないと回線も持っていかれてしまう

ドコモ iPhoneを中心としたスマホの激安販売競争にドコモも参戦している

―― 店舗独自の施策として、iPhoneを中心としたハイエンドスマホが一括や実質でも100円を切るような価格で販売されていますが、このような施策をどうご覧になっていますか。また、こうした販売手法にメスを入れていくお考えはありますか。

井伊氏 私個人の意見としても、望ましい競争形態ではないと思っています。本当は端末の事業そのもので収支が成り立つべきで、0円とか1円とかで売ったら当然収支が合わないですよね。回線契約をして、回線を長く使ってもらうことで(収支を)戻そうとしています。回線と端末を分離したにもかかわらず、0円なんかで売ってしまったら赤字ビジネスですから、成り立たない商売をやっているんですよ。端末の利益を出せる範囲内の値下げの競争であるべきだと思っています。ただ、他社がそれを仕掛けたので、追随しないと回線も持っていかれてしまう。

―― 端末単体で売るだけでなく、そこから先の契約を取ることが当然重要になります。

井伊氏 お客さんの大半が、端末を買ったところで回線も申し込んでいるんですよ。端末を他社で買って、ドコモで回線を申し込む人はいないんですよ。理屈上、端末と回線は分離していると言っているけど、お客さんの利便性からすると、端末を買ったキャリアで回線も買うんですよ。その端末は絶対安い方がいいじゃないですか。

―― 結局、2万2000円の値引き上限は何だったのか、となりますね。

井伊氏 白ロムだとそういう制限がなくて、回線とセットだと2万2000円を超える値引きできないですが、白ロム単品で売るときに、いくらでも合法的に下げられてしまう。結果的にひずんでいって、転売をする人たちが出てきてしまって。恐らく、東南アジアで高くiPhoneを売っていると思います。実際にちゃんと買っていただいているお客さんは回線とセットで契約しているので、あそこまでめちゃめちゃ(端末代を)下げる必要は本来ないんですよ。

端末と回線はセットにして、端末割引の上限額を決めるべき

―― 本音としては、単体販売でも割引の制限をしてほしい……。

井伊氏 僕は「もう1回、回線と端末はセットで売ってよろしい」「ただし、新品を中古よりは安く売ってはダメ」というルールにすればいいと思っています。中古は正確な相場があるので、新品を中古以下の値段で売るのはちょっとやり過ぎだなと。そこが全体のコンセンサスを取れる値引きの上限額だと思うんですよ。0円まで下げちゃうと、端末の赤字を回線で補填(ほてん)していて、端末と回線を分離した意味がなくなってしまう。もう見直す時期に来ているんじゃないですか?

―― 確かに現在のルールは形骸化している面もあります。

井伊氏 と思いますよ。(値引き規制の管轄が)総務省なのか、公正取引委員会なのかは分からないですけどね。

―― 今、転売の話も出ましたが、一部の人が大量に端末を購入したことで、一般ユーザーに端末が行き渡らないという問題が起こる恐れがあります。転売対策についてはどうお考えでしょうか。先日、ショップで箱に記名することが話題になりましたが……。

ドコモ ドコモは現在、転売対策としてスマートフォンの箱に記名する措置を取っている

井伊氏 箱に名前を書いたり、店のスタンプを押させてもらったりしていて、箱ごと転売することは妨げることはできるかもしれないですが、箱から出して、新品の端末だけでも売れちゃうんですよね。ですから完全な抑止力に放っていないと思いますが、何もしないよりはいいだろうという、現場の知恵です。

 転売の方なのか、本当のユーザーの方なのかが、ショップでは識別できないんですよね。結局、相手もたくみに回線も契約して、3カ月くらいで解約して端末を手に入れるとか、いろいろなやり方がありますので、現場サイドで全て止めるのは難しい。でも、売らないと、ルール上「何で売らないんだ」というふうに言われてしまうので。しかし現実は端末を使わない人が転売して利ざやを上げているので、社会的な問題だと思います。

 そこは、キャリアが直すというよりは、転売を止める方法、価格の下限規制を設ければ、止まるのではないでしょうか。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年