携帯ショップ“大量閉店時代”をどう乗り越える? スタッフ育成とオンライン化の取り組みワイヤレスジャパン 2022(1/2 ページ)

» 2022年07月18日 08時00分 公開
[石井徹ITmedia]

 ここ数年、モバイル業界は政府の規制強化やコロナ禍で進むオンライン化など、ビジネス構造を揺るがす出来事が相次いでいる。携帯電話キャリアにとって大きな変化が求められているが、スマートフォンを実際に販売する店舗(販売代理店)においては、生存を欠けた構造改革が求められる状況となっている

 5月25日、ワイヤレスジャパン2022で開催された「デジタル変革時代におけるスマホ流通販売ビジネスの在り方」と題する講演で、携帯販売代理店業界から3社の社長が登壇し、“冬の時代”を乗り越える戦略を語った。

 後編では、関東地方で影響力を高める中堅代理店・田中電子の田中秀司社長と、モバイル業界でのデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するピアズの桑野隆司社長のプレゼンテーションを通して、携帯ショップの今後を考える。

人材強化のカギは「徹底」

田中電子の田中秀司社長 田中電子の田中秀司社長

 講演のモデレーターを務めた野村総合研究所(NRI)の北俊一パートナーに「凡事徹底、といえばこの企業」という前触れで紹介されたのが田中電子。関東地方を中心にauやUQ mobileの代理店40店舗を展開する代理店だ。社長の田中秀司氏は2017年に27歳で先代社長の跡を継いで以降、接客品質を大きく向上させ、業容を拡大してきたという。

 田中氏が取り組んだのは、人材マネジメントの徹底だ。より具体的には、販売代理店のスタッフ一人一人が経営理念を理解し、自分の仕事に誇りを持って働けるような現場を目指す。その上で、販売方針を着実に伝達し実行する体制を整える。品質チェックを仕組み化し、下限品質の向上を心掛けてきた。

田中秀司 田中氏が社長を継いで以来、田中電子の営業成績は大きく改善したという

 中でも、従業員の意識改善を特に注力しているという。携帯電話販売の業務では、さまざまなユーザーを相手にした接客を行う。重要な社会インフラを維持し、高度なコミュニケーション能力が求められる専門職であるが、“ちょっと個性的なお客さま”の接客を担当して心が折れてしまうスタッフもいる。

 田中氏は、「多くの人に接する中で、モチベーションを維持し続けるためにも、仕事に誇りを持って働けるような職場環境の構築が重要」と強調する。仕事に前向きに取り組む姿勢になることで、営業力も身に付き、離職率の低下にもつながるという。

田中電子では3つの取り組みに注力している 田中電子では3つの取り組みに注力している

 田中電子が実践するのは、寺子屋式研究会、1on1面談、品質チェックの仕組み化という3つの取り組みだ。寺子屋式研究会は、全スタッフが月1回受講する社内セミナーだが、営業手法などのレクチャーだけでなく、「道徳」に関する講話も行うのが特徴だ。社長講話の中で、仏教、論語、アドラー心理学などから、ビジネスに応用できそうな内容を披露し、従業員の心を育てる機会としている。

田中電子 販売スタッフへの研修に“道徳”を取り入れている

 1on1面談も一般的に取り入れられているマネジメント手法だが、田中電子では“2階層下の社員”とも面談を行うという。例えば部長であれば、部下の課長と、課長に属する係長とも面談を行う。2階層下の社員との面談を行うことで、伝達した内容がしっかりと伝わっているかを確認でき、接触時間を増やして人間関係の悪化を防げるという。

田中電子 スタッフとの面談は“2階層下”まで実施

 品質チェックでは、接客品質の低い店舗を重点的に確認し、平均レベルの底上げを重視している。田中氏は「同じビジネスモデルなら、いかに徹底して行うかで差が出る」と基本的な取り組みの重要性を強調した。

田中電子 品質チェックは成績が低い店舗で重点的に実施しているという

“リモート接客”で変わる携帯ショップのビジネスモデル

ピアズの桑野隆司社長 ピアズの桑野隆司社長

 モバイル業界の「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の旗振り役を務めるのが、ピアズだ。桑野隆司社長は「自前の販売代理店を持たず、携帯ショップの販売支援サービスや繁忙期の応援スタッフ派遣に特化した“黒子の会社”」と紹介する。

 携帯電話ショップでは通信回線やスマートフォンだけでなく、固定回線やコンテンツサービスなど、さまざまな商材を販売している。それぞれの商材について専門知識が求められる難しい現場といえる。一方で、代理店ビジネスは“冬の時代”といわれるように、抜本的な構造改革を求められる状況にもある。

販売代理店業界 販売代理店業界に逆風が吹き荒れる中、キャリアはオンライン強化の方針を示している

 NTTドコモが代理店に対して示した「2025年までにドコモショップを700店舗閉店する」という方針が、5月の報道において明らかになっている。2022年時点で営業中のドコモショップの3割に相当する規模だ。

【訂正:2022年7月19日15時45分 初出時、「2025年までにドコモオンラインショップを700店舗を閉店する」としていましたが、正しくは「2025年までにドコモショップを700店舗閉店する」です。おわびして訂正いたします。】

 このドコモショップ閉店について桑野氏は「店舗数はあくまで予定と聞いている。閉店よりも、オンラインの併用で最適化する狙いがあるのではないか」と分析する。

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