ahamoで若年層獲得も、通信事業は減収減益のドコモ 値下げはまだ続く?

» 2022年05月13日 09時56分 公開
[田中聡ITmedia]

 NTTドコモが5月12日、2021年度の通期決算について発表した。営業収益は5兆8702億円で前期比−0.2%、営業利益は1兆725億円で前期比+1.2%、減収増益となった。料金値下げの影響で、通信事業は236億円の減収、343億円の減益。井伊基之社長は「(料金プランで)戦略的な値下げをしたので、その減収が大きかったが、成長領域とコスト削減でカバーした」と振り返る。

NTTドコモ 2021年度の振り返りと2022年度の戦略を説明するNTTドコモの井伊基之社長
NTTドコモ 2021年度は減収増益となった

 2021年はオンライン専用プランの「ahamo」をスタートし、30歳以下を対象とした「U30ロング割」も含めて、安価な中容量〜大容量プランを充実させた。また2021年後半には「エコノミーMVNO」も開始して、新規ユーザーの獲得にも効果が出ているという。こうした値下げが減収につながったが、金融、決済、法人ソリューションなどが成長したことで増益となった。

 続いて、井伊氏は2022年度の業績予想と注力分野についても発表した。2022年度の業績予想は営業収益が5兆9840億円で前期比+1138億円、営業利益が1兆840億円で前期比+115億円としている。この数字を達成するために注力するのが、法人事業、スマートライフ事業、コンシューマー通信事業の3つだ。

NTTドコモ 2022年度は増収増益を目指す
NTTドコモ 2025年度までに、法人事業とスマートライフ事業を合わせて通信事業に匹敵する収益を目指す
NTTドコモ 法人、スマートライフ、コンシューマー通信それぞれの業績予想

 法人事業では、NTTコミュニケーションズがドコモの子会社となったことで営業体制を統合し、モバイルやクラウドのソリューションを強化してコスト効率化を図っていく。またモバイルと固定通話サービスをパッケージ化したソリューションも提供していく。

 スマートライフ事業は金融や決済を中心に拡大し、会員基盤やデータを活用することで、マーケティングソリューションも拡大する。d払いやdカードの加盟店もさらに拡大して若年層の獲得に努める。新規領域として「ドコモでんき」も展開し、ドコモ光やdカードなどのクロスユースによって顧客基盤を強化する。ドコモでんきは2022年4月24日時点で申込数が20万に達した。

NTTドコモ スマートライフ事業ではマーケティング、金融ビジネス、ドコモでんきの展開を強化する

 コンシューマー通信事業は3分野の中でも収益と利益ともに大きいが、2021年度比では減収減益(−636億円、−211億円)を見込んでいる。これは、2019年の「ギガホ」「ギガライト」に端を発した料金値下げの影響がまだ続くと見込んでいるため。2019年度から2021年度までのモバイル通信サービスの減収額は2700億円に達した。「その影響がずっと続くわけではないが、今年(2022年)と来年(2023年)でまだ影響が残る」と井伊氏は説明する。

 その分を、「成長領域のサービスとコスト削減でどうかバーできるか」と井伊氏はみる。また今後についても「さらなる値下げがないわけではない」(同氏)ため、「通信はなるべく下がらない、水平かちょっと上がるくらい」の規模を目指す。その一方で法人事業とスマートライフ事業を強化して、2つあわせて収益の過半を目指す。

NTTドコモ 通信サービスでは料金プランや各種サービスのクロスセルを拡充して顧客基盤を拡大する
NTTドコモ 4Gの周波数も活用しながら5Gエリアの拡大を目指す

 若年層の取り組みを狙うahamoのユーザーはドコモの思惑通り、「6割くらいが20〜30代」(井伊氏)だという。「狙っていた層は着実に入っていて、外からの新規も取れている」と同氏。一方で「(若年層は)回線だけでは満足しない」ため、100GBまで使える「ahamo大盛り」の大容量データを生かせる有料の映像コンテンツなどを強化していく意向も示した。

 通信事業では5Gサービスの拡張も見逃せない。5Gの契約数は2021年度で1153万に達し、2022年度で2250万を目指す。ドコモが「瞬速5G」を銘打つ新周波数(Sub-6とミリ波)に対応した基地局は、2022年4月28日時点で2万局を突破した。今後は4Gの既存周波数も活用し、2023年度末までに全ての市町村に5Gを展開していく予定だ。

 なお、ドコモは当初、既存周波数を5Gに活用する手法には慎重な姿勢を示していたが、総務省が3月に発表した「全国のデジタル田園都市構想」では、2023年度までに5Gの人口カバー率を95%とする方針が示されたことから、「4G周波数の再利用を組み込まないと間に合わない」(井伊氏)と判断して方針を変えた。

 楽天が800MHz帯や900MHz帯などのプラチナバンドを再編してほしいと要望を出している件について井伊氏は「周波数の最大利活用に関して賛同しているが、既存のお客さまをどう移行していくのかの具体的な道筋、それにかかるコストをどうするのかのリアルな話をしっかり詰めていかないと結論が出ない」とコメントした。

 販売チャネルの改革も進めていく。ahamoの提供やコロナ禍の影響もあって「オンライン手続きが増加している」と井伊氏。一方で、端末の購入サイクルが長期化しており、「ドコモショップの来店数は減少傾向が進んでいる」という。

 そこでドコモは「リアルチャネルとオンラインを融合したハイブリッドチャネルを作る」構想を掲げる。具体的にはリモートで接客をするというもので、ユーザーは自宅にいながら、ドコモショップと同等の接客を受けられるようになる。ショップスタッフも、オンラインなら時間や場所の制約を受けずに稼働しやすくなる。ドコモショップは需要の高いエリアに集約して生産性向上を目指す。「リアル店舗をなくすのではなく、(販売代理店に対して)両方やってくださいということ」(井伊氏)

NTTドコモ ドコモショップではリモート接客にも対応できるよう、リアルとオンラインのハイブリッドで展開する

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