桑野氏はオンライン化について、接客サービスの品質や利便性を落とさずに、販売コストや従業員の負担を軽減する手段となり得ると指摘する。桑野氏は「今後はショップ主体でオンライン接客に取り組む“ハイブリッド店舗”が増えてくるのではないか」と話す。
コロナ禍を通して普及が進んだリモート通話の仕組みを使えば、場所を問わずに接客することが可能になる。極端な例を出すなら、沖縄の店舗が北海道のユーザーを接客できるようになる。地方のショップにとっては余力のあるスタッフを新たな接客に回すことができ、ユーザーにとっては店舗に行かずに予約できるため、利便性の向上につながる、と桑野氏は主張する。
もっとも、特に地方ではシニア層を中心に実店舗での対面接客を求めるユーザーも多い。こうしたユーザーの受け皿には、オンラインで接客を受けられる出張所を設置すれば、従来のキャリアショップよりも少ない人数で対応できる。商材ごとに専門分野のスタッフが応対に当たるシステムを構築すれば、より品質の高い接客が可能になるという。
こうしたオンライン接客の仕組みは、ピアズが得意とするところだ。ピアズはNTTドコモ向けに「オンラインヘルパー」という仕組みを開発し、代理店向けに提供している。オンラインヘルパーは、ドコモ光や“d”サービスなど、専門知識が求められるようなサービスの紹介をタブレットを通じてリモートで行う仕組みだ。
ヘルパースタッフの店舗への派遣から、オンラインヘルパーに移行したことで接客品質の向上にもつながっている。具体的には、店舗への直行直帰がなくなり、コールセンターでのリモート対応へと移行したことで、スタッフ研修を実施する時間が捻出しやすくなった。また、オンライン接客の録画することで、マネジャーが接客状況を把握しやすくなり、優秀なスタッフの接客手法を新人に見せるという新人教育への活用も可能となった。
ピアズでは今後、オンライン接客サービスを拡充し、外国人向けの翻訳や手話翻訳の導入など、より専門性の高い接客サービスの導入を進める方針だ。また、「メタバース」の活用と報道されたような、アバターを使った接客の可能性も検討している。アバターを活用することで、スタッフの自宅からのリモート勤務で対応するといった、より柔軟な働き方を導入しやすくなるという。
桑野氏は「携帯ショップの中核となる要素は、やはりスタッフの力だと考える。良い応対ができるスタッフを抱える店舗にとっては、今は“冬の時代”ではなく、むしろチャンスであると捉えられるのではないか。オンラインであってもオフラインであっても、顧客ファーストであることは変わらない。今ある手段をどう活用していくかが重要」と締めくくった。
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