こうした機能を下支えしているのが、Apple自身で設計したAシリーズのプロセッサだ。Proモデル2機種には「A16 Bionic」が搭載されており、ベンチマークアプリで測定した結果からも、性能が向上していることが見て取れる。ただし、「A15 Bionic」と比べて大幅な性能向上というわけではない。どちらかといえば、ディスプレイやカメラなど、ベンチマークアプリの結果に表れない機能を強化しているのがA16 Bionicだからだ。
とはいえ、それでも数値としては、現行のスマートフォンで最高峰。凝ったグラフィックスを採用するゲームを遊ぶユーザーには、うってつけの性能だ。これに対し、無印のiPhone 14は、先代のiPhone 13シリーズと同じA15 Bionicを搭載する。モデルチェンジでプロセッサを据え置いたのは初めてのこと。プロセスルールの微細化も進んでいないため、性能向上の幅は以前より落ち着きつつある。
ただし、iPhone 14の採用するA15 Bionicは、iPhone 13 ProやiPhone 13 Pro Maxと同じもの。iPhone 13シリーズでは、無印モデルよりProモデルの方がGPUのコア数が1つ多かった。実際、iPhone 14のベンチマークスコアは、iPhone 13 Proとほぼおなじ数値になっている。とはいえ、あくまでGPUが1コア違うだけで、性能に決定的な差はない。事実として、Proモデル2機種と比べたとき、やや処理能力が落ちるとだけ考えておけばいいだろう。
通信に関しては全機種が5Gに対応しており、この点に差はない。iPhone 14シリーズの新機能に「衛星経由の緊急SOS」がある。これは、Glabalstarの打ち上げた衛星と直接iPhoneが通信して、緊急時に短いメッセージを送るという機能だ。日本での提供予定は明かされていないが、周波数的には日本版も衛星通信に対応している。あまり考えたくないかもしれないが、米国やカナダで遭難してしまった際に、救援要請のメッセージを出すことは可能になる予定だ。
ここまで見てきたように、iPhone 14 Proや14 Pro Maxは、前モデルから進化している部分が多い。ダイナミックアイランドによる新たなUIへの挑戦や、iOS 16の機能を存分に生かせる常時表示ディスプレイ、4800万画素の高画素を生かした撮影性能など、“Pro”と呼ぶにふさわしいモデルに仕上がっている。スマートフォンに新しさや、技術の粋を尽くした性能を求めるなら、間違いなくProモデルを選ぶべきだ。
一方で、iPhone 14はiPhone 13のマイナーチェンジといえる仕上がりになっている。iPhone 12や13で購入を見送ったユーザーが選ぶ最新モデルという位置付けといえる。ただし例年とは異なり、6.7型のiPhone 14 Plusがあるのは大きな違いだ。iPhone 13シリーズまでは、大画面モデルを選ぼうとするとPro Max一択になってしまっていたが、必ずしも全てのユーザーが“Proの機能”を必要とするわけではない。
その意味では、無印のiPhone 14に6.7型版のiPhone 14 Plusが加わったことで、素直に機能や価格だけを見て最適な1台を選べるようになったといえる。本レビューは先に発売される3機種を対象としているため、iPhone 14 Plusならではの魅力は、追ってお伝えしていきたい。
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