最近、クレジットカード、デビットカードやプリペイドカードに“波”が描かれることが増えています。新しく契約(取得)したカードはもちろんですが、再発行や更新して届いたカードにもこのマークが付いていた、ということもあるかもしれません。
この“波”は、一体ナニモノなのでしょうか。そして、スマートフォンにも何か関係するのでしょうか……?
結論からいうと、この“波”は「EMVコンタクトレス」という規格の非接触IC決済に対応していることを示す共通マークです。このマークは「リップルマーク(波マーク)」とも呼ばれており、EMVコンタクトレスに対応する決済端末、ICカードリーダーやカードに記されています(以下、EMVコンタクトレスによる非接触決済を「タッチ決済」と呼びます)。
ただし、決済端末やICカードリーダーの場合、“ハードウェアとして”EMVコンタクトレスに対応しているという意味であり、実際にタッチ決済を利用できるかどうかは分かりません。決済端末やカードリーダーの設定状況、あるいは加盟店とアクワイヤラー(決済を担当するカード会社)との契約次第なので、店頭の掲示をよく確認しましょう。
「EMV」は「Europay(ユーロペイ、※1)」「Mastercard(マスターカード)」「Visa(ビザ)」の頭文字で、これら3社が接触ICカードの共通規格を定めたことがルーツです。この座組は「EMVCo」として組織化されており、American Express(AMEX)、Discover、ジェーシービー(JCB)、Mastercard、銀聯(UnionPay)、Visaの5社が参加しています。
(※1)ヨーロッパにおいてMasterCardブランドの決済サービスを展開していた企業。2002年にMasterCard(現在のMastercard)と合併して消滅した
非接触IC決済というと、日本ではNTTドコモが主導する「iD(アイディー)」やジェーシービーが主導する「QUICPay(クイックペイ)」「QUICPay+(クイックペイプラス)」も広く普及しています。これと最近広まっているタッチ決済は何が違うのでしょうか。
簡単にまとめると、大きく「仕組み」と「使える場所」が違います。
iDやQUICPay/QUICPay+は、ソニーが開発した「FeliCa(フェリカ)」という非接触IC通信規格を使っています。また、自動販売機での利用を想定して決済センターに利用可否を都度問い合わせない「オフライン決済」にも対応しています(※2)。
一方で、タッチ決済は、国内外で広く使われている「NFC Type-A」「NFC Type-B」という通信規格を採用しています。クレジットカード、デビットカードやプリペイドカードの「決済メディア」の1つとして加わるもので、原則として利用する際に決済端末とセンター間で通信を行う「オンライン決済」にのみ対応します(※3)。
FeliCaを使うのか、NFC Type-A/Bを使うのか――メディアの違いはありますが、「かざして使う」という点では違いはありません。
(※2)利用時にひも付く預金口座から利用額を引き落とす「デビットタイプ」や、あらかじめチャージ(入金)した範囲内で利用する「プリペイドタイプ」のカードは、原則としてオンライン決済となります
(※3)タッチ決済を使った交通利用など、即時にオンライン決済が行われない場合もあります
iDは、iDの加盟店で利用できます。QUICPay(クレジットタイプ)はQUICPay加盟店またはQUICPay+加盟店で、QUICPay+(デビット/プリペイドタイプ)はQUICPay+の加盟店で利用できます。ただし、iDやQUICPay/QUICPay+の加盟店網は国内にとどまっており、海外では利用できません。
一方で、タッチ決済はおのおののカードブランドのタッチ決済に対応している加盟店で利用できます。各ブランドは海外にも加盟店網を広げているため、海外のタッチ決済対応加盟店でも利用可能です。
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