新しいスマートフォンを買ったらケースを着ける。今や当たり前の光景だ。端末の購入と同時にケースと画面保護フィルムも買う人も多い。しかし、日本はiPhoneユーザーが多いので、ケースの種類、売り場面積もiPhone向けが圧倒的に多い。Androidユーザーは汎用(はんよう)ケースで我慢していたり、端末に付属のクリアケースを使っていたりという場合もあるだろう。
iPhoneユーザーはもちろん、ケース難民のAndroidユーザーにも朗報といえるサービスをFOXが展開している。FOXといえば、スマートフォンケースの開発・販売の他に、「BlackBerry」シリーズや「Palm Phone」などのスマートフォンの販売代理店としても知られているが、同社が新たに始めたサービスが、オンデマンド印刷でスマホケースを提供する「CASEPLAY(ケースプレイ)」だ。
CASEPLAYが最初にクローズアップされたのは、サムスン電子の折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Flip4」専用の「リング付き着せ替えシート for Galaxy Z Flip4」を発売したことだ。このリング付き着せ替えシートはプレゼントキャンペーンも行われ、人気のキャラクターやファッションブランドとコラボした200種類ものデザインから選べるという数の多さに驚かされた。
CASEPLAYのスマホケースは新旧、非常に多くの機種に対応していることも特徴だ。2022年12月中旬時点で対応機種は80機種以上。iPhoneであれば6s Plus以降。AndroidではGalaxy、Xperia、Pixel、AQUOS、OPPO、Xiaomi、Motorolaなどのメジャー機種に対応している。
ユーザーはスマホの機種とケースのデザインを指定して注文。注文が入ると、東京にある工場でクリアケースにデザインの印刷を施し、出荷される。注文後、4日程度で受け取れるようにしているが、現在は14時までに注文を受けたものは即日、遅くとも翌日には出荷しているという。CASEPLAYのサイトで購入した場合の価格には配送料金も含まれている。製品によって異なるが4000円前後が中心だ。
扱っているデザインは多彩で、全てのデザインが全ての対応機種で選択できる。ドットやチェック、花柄といった普遍的なデザインから、キャラクターやファッションブランドとコラボレーションしたデザインまで、数多くそろっている。
ディスプレイ保護ガラスも販売しており、ケースと一緒に購入して端末の画面割れが起きた場合、購入から365日以内なら修理費用をCASEPLAYが補償する「CASEPLAY CARE」も提供している。
CASEPLAYの製品は、オンラインだけでなくリアルな店舗でも購入できる。例えばKDDIの直営店、au Styleでは、一部サンプルが展示されるとともに「CASEPLAYプリペイドカード」が販売されている。QRコードからCASEPLAYのサイトへアクセスし、自分の機種と好きなデザインを選択。プリペイドカードのクーポンコードと住所を入力すると、選んだケースが配送されるというシステムだ。また、国内だけでなく海外にも販売。台湾、中国から始め、アジア、北米、欧州と展開する予定だ。
さまざまなライセンサーと契約を進めており、デザイン数は増え続けていて12月中旬現在で約1200種類。ファッションブランドや、マンガのキャラクターを多数抱える大手出版社、VTuverの運営会社、プロスポーツリーグなどからライセンスを取得している。
ライセンサーはケースの在庫を抱えることなく、自社のデザインを広めることができるとあって、契約に非常に前向きだそうだ。例えばサンリオとはフルライセンス契約を結び、あらゆるキャラクターの利用が可能になっている。数多くのコンテンツを持っている企業としては、想定していなかったキャラクターやコンテンツの人気が高まる可能性もある。
FOXは、注文を受けてからプリンタに効率よくデータを送信する仕組みを数カ月かけて独自開発。「1つのデザインを用意したら、それを全てのケースに対応させ、今後ケースが増えても自動で適用できる仕組みと、生産、物流のオペレーションを組み立てたことがCASEPLAYの成功のカギ」だったと、FOXの代表取締役副社長である五十畑麻友美氏は振り返る。
前述の通り、一般消費者向けにはケースのデザインをどんどん増やしている最中だ。中でもCASEPLAYが特に重視しているのがAndroidユーザーだという。
MMD研究所が2022年5月に発表したスマートフォンOSシェアの調査によると、iPhone利用率は44.1%。半分以上がAndroidユーザーだ。五十畑氏が特に注目したのが機種別のシェアで、「iPhone 13」を持っている人は2%しかいない。
「日本人の半分がAndroidユーザーで、iPhoneユーザーも古い端末を持っている人ばかり。感覚的に30%くらいの人がiPhone 13を持っているイメージでしたが、意外と持っていない」(五十畑氏)
写真画質の評価が高まっていることから、若いユーザーの中で安くて高品質なAndroidスマホを買う傾向が高まっていると感じているという。
「売り付けられるのではなく、いいものを自分でチョイスして買っている若い子たちがどんどん増えています。年配向けにUIを工夫した端末もAndroid。それらの結果がシェアに表れているのだと思います」(五十畑氏)
そうした状況にもかかわらず、2021年12月時点の独自調査で、iPhone 13向けのアクセサリーは家電量販店で1万8000種もあったという。
「日本人の2%しか持っていない端末のために“お祭り”をし、98%の人は自分の欲しいものが全く売っていない状態。だったら『私たちは、ずっとケース屋さんをやってきたのだから、みんなに喜んでもらえるようなプラットフォームを作って、欲しかった人たちが選べる世界を作り出そう』と考えたのがCASEPLAYの発端です」(五十畑氏)
CASEPLAYのサイトは、閲覧者の約8割が最後のページまで見ているそうだ。離脱率が異様に低いのは「(Android向けケースが)本当にブルーオーシャンだったということ」(五十畑氏)。「人にはそれぞれいろんな『推し』があると思う。自分の主張したいものを選べる世界を作りたい」というのが五十畑氏の思いだ。
一方、企業に対しては、ケース在庫のリスクをFOXが負うことで、ブランドやキャラクターのコンテンツをグローバル展開するチャンスを提供することになる。
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