「Xiaomi=安い」だけのイメージを変えた2022年 カメラ機能が大きく躍進した理由山根康宏の中国携帯最新事情(1/2 ページ)

» 2022年12月27日 10時48分 公開
[山根康宏ITmedia]

 スマートフォンのカメラ性能の競争が激しくなっているが、Xiaomiは2022年に入り他社を大きく引き離す製品の投入を進めている。7月にはライカとコラボした「Xiaomi 12S」シリーズを発表、10月には2億画素カメラを搭載した「Xiaomi 12T Pro」を投入した。

Xiaomi 2億画素カメラ搭載のXiaomi 12T Pro

ライカとの協業で変わったXiaomiのカメラとブランドイメージ

 高性能カメラを搭載したスマートフォンの代名詞と言えばHuaweiだったが、米国政府による制裁を受け、スマートフォン事業は停滞を余儀なくされている。そのHuaweiの存在感が低下していく中で、ライバル各社は独自の技術革新を続けている。

 OPPOはAI処理に優れたチップ「MariSilicon X」を開発、vivoはスマートフォンカメラにジンバル機能を取り入れたりカールツァイスとの協業も進めたりしている。またSamsungは真っ暗な中で人物を撮影しても顔がはっきりと写る夜景モードを強化し「Nightography camera」とアピールしている。そしてOPPOの顕微鏡カメラやソニーの可変絞りなど、各社は新しい機能の模索も進めている。

 一方、Xiaomiは他社に先駆けて1億800万画素カメラ搭載モデルを投入するなど、カメラ性能の強化を続けてきたが、それが目を引いたのも当初だけであり、今や画素数だけでは消費者の関心を集めることは難しくなりつつある。また世界シェア3位に上り詰めたXiaomiの主力モデルは価格の安いRedmiシリーズであり、Xiaomiの名前を聞いて多くの人が思い浮かべるのは先進性や技術力より価格の安さだろう。

 しかしそのXiaomiがライカと協業したことで、Xiaomiに対するイメージはこれから大きく変わっていくに違いない。実はXiaomiのカメラ性能はライカ協業前から既に十分な性能を有しており、例えば2021年3月発売の「Mi 11 Ultra」のDXOMarkスコアは141と、現在でも「iPhone 13 Pro」と並ぶ7位である(2022年12月末時点)。とはいえ、その実力はなかなか認められなかった。やはりXiaomiの代表製品は、価格を武器にするRedmiシリーズだったからだ。

Xiaomi 「Mi 11 Ultra」のカメラ性能は今でも通用するクオリティーだ

 XiaomiがライカとコラボしたXiaomi 12Sシリーズの最上位モデル「Xiaomi 12S Ultra」は、その外観も大きなインパクトがある。背面はカメラのような革風のシボを入れた仕上げで、カメラ周りは大きな円形ガラスで覆われている。背面を見るとまるでカメラのように見えるデザインなのだ。そしてカメラの上に備わるライカの名前を見ると、まるでライカの小型カメラと思えるかもしれない。また世界初搭載こそ逃したものの、Xiaomi 12S Ultraは1型のカメラセンサーを搭載した本格的なカメラスマートフォンでもある。大型センサーによるボケの味は強力で、これだけでも味わいのある写真撮影ができるだろう。

Xiaomi まるでカメラのようなデザインのXiaomi 12S Ultra

 ライカがXiaomiと協業を行ったのは、Xiaomiの技術力だけではなく製品品質も認めたからだ。両者のコラボは先進国でのXiaomiに対するイメージを「価格を武器にシェアを伸ばしていた中国メーカー」から「ライカがお墨付きを与えたしっかりした製品を作るメーカー」「高性能なカメラ搭載モデルを作るメーカー」に変えていくだろう。それはHuaweiがライカとの協業以降、世界各国でシェアを高めていった歴史を思い起こさせる。

 実際に筆者は2016年秋、Huaweiが「P9」シリーズでライカとコラボした直後にドイツを訪れたところ、それまでHuaweiに見向きもしていなかったドイツ人たちが家電量販店やショッピングモールで行われたP9シリーズのイベントに群がっている姿を見たことがある。横目で見ていると誰もが「こんなにいいものが作れるのか」「カメラ性能がすごい」と感心している様子だった。そしてP9以降のHuaweiのフラグシップモデルはカメラ性能も本体性能も年々高めていき、ユーザーを増やしていったのだった。

 それから6年後の2022年9月、Xiaomiの「Xiaomi 12S Ultra」を持ってドイツを訪れたところ、筆者が写真撮影しているときに「そのスマホ、もしかして……」と何人かのドイツ人に話しかけられた。中国でしか発売されていないモデルであり、話しかけてきた人はみなカメラやスマートフォンが好きな方々だったが、ライカとコラボしたモデルということで大きな期待を寄せているのだろう。フランクフルト空港の免税店のライカ売り場でスタッフに見せたところ「これが本物か!」と喜んでいた光景もほほえましかった。

 Xiaomiは今後上位モデルを中心に「ライカカメラ」「1型センサー」を搭載したモデルを次々と投入してくだろう。2022年12月にはフラグシップ製品のフルチェンジモデル「Xiaomi 13」シリーズを発表、もちろんライカのカメラ性能が大きくフィーチャーされている。

Xiaomi Xiaomi 13シリーズもライカカメラを搭載
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