ソフトバンクは2月3日、2023年3月期第3四半期の連結業績を発表した。売上高は前年同期比4.1%増の4兆3454億5900万円、営業利益は同21.7%増の9820億300万円の増収増益だった。売上高は全セグメントで増収。営業利益は、PayPay子会社化に伴う再測定益があったため増益となったが、事業としては通信料金値下げ影響などもあって利益は減少している。
通期の業績予想に対する進捗(しんちょく)率は、売上高で74%、営業利益で94%、純利益で94%となって順調だった。セグメント別でも進捗率は順調に推移しており、同社の宮川潤一社長は、営業利益1兆円以上、調整後フリーキャッシュフロー6000億円水準、営業利益V字回復の達成に向けて順調な進捗と自信を見せた。
来期に関しては、「どこか(の事業)が飛び抜けて良いという来期の予想ではなく、全員野球の結果、全体が上がる」というのが宮川社長の予想で、営業利益1兆円を達成する時期は「はっきりいつといえるほどの自信はついていないが、5月の決算では堂々と発表したい」と話した。
コンシューマー事業では売上高が1%増の2兆1277億円、営業利益は17%減の4312億円。通期営業利益の予想に対しては90%の進捗率となった。スマートフォン契約数はソフトバンク、Y!mobile、LINEモバイル、LINEMOの4ブランドで2865万となって7%増。スマートフォン純増数は11%増の107万、主要回線純増数は129%増の60万となった。
減収要因は通信料値下げによる影響で、2022年度第3四半期は220億円のマイナス影響だった。通信料値下げ影響は、3年間の影響が想定されており、通期では2021年度が770億円、2022年度は900億円の影響が出る見込み。最終年度となる2023年度は500億円までマイナス影響が縮小。宮川社長は、「氷河期の終わりがようやく見えてきた」と安堵(あんど)する。
コンシューマー事業ではグループ会社との連携を強化することで、モバイル事業の競争力を向上させるとともに、グループサービス全体の成長を狙っている。第3四半期には、PayPayカードでは「PayPayカード ゴールド」の提供を開始。新規契約の増加、解約の抑止を目的に、通信料金の支払いに設定するとより多くのPayPayポイントを付与する。
ゴールドカードによるユーザーの拡大に伴い、グループ内のECサイト、金融ビジネスの拡大にもつながっていて、グループのサービス全体でシナジーが発揮されているという。さらに、ゴールドカードをソフトバンクショップでも獲得するよう活動を本格化。結果としてカード発行後の会員数純増数が拡大し、第3四半期には53万増となった。
第3四半期から新設されたセグメントである金融事業は、PayPay、PayPayカード、PayPay証券、SBペイメントサービスが含まれる。売上高は主にPayPayの子会社化によって876億円で77%増。それに対して営業利益は子会社化影響とPayPayカードの戦略投資によって115億円減の24億円だった。
PayPay自体は、顧客獲得費が縮小しているものの赤字が継続したため、54億円のマイナス影響となった。ただし、獲得費を除けば黒字化しており、損益は前年比で改善している。PayPayカードは42億円の減益要因となったが、顧客獲得のための先行投資という位置付けで計画通りとした。
黒字化間近まで成長したPayPayは、ユーザー数が前年同期比21%増の5400万人、決済回数は同43%増の37.5億回、決済取扱高は同465増の5.7兆円。単体の売上高は898億円で同134%増。EBITDAはマイナス138億円で、2021年度から307億円の改善まで成長した。
今後は、グループのシナジーを高めるサービスとして、販促プラットフォーム「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPayマイレージ」を投入して、決済・EC取扱高の拡大・広告収入の増加を目指す。
ふるさと納税のさとふるでは、「PayPay商品券」をスタート。1月末で480自治体の導入が予定されており、地域の活性化、PayPayの取扱高の増加も見込めるため、「大変良いプロダクトが生まれた」と宮川社長。
ヤフー・LINE事業は売上高が同4%増の1兆1696億円、営業利益は同17%減の1269億円。前日の2月2日には、Zホールディングス、LINE、ヤフーの3社が合併してCo-CEO体制から単独のCEO体制に移行することなどが発表された。これに対して宮川社長は、「親会社の立場として、意思決定のスピードアップをしてほしい、ID連携などのシナジーを早く出してほしいと再三言っていた」とコメントする。
もともとZホールディング、ヤフー、LINEが経営統合したことで、非常に期待感を持っていたという宮川社長。ただ、この2年間は「なかなか新しいプロダクトが生まれてこない。この部分についてもう少しスピードを上げてくれないかと常々思っていた」という状況だった。
「サービスの選択と集中をすべきではないか、オフィスもリアルに合体して同じ釜の飯を食ったらどうだなど、いろいろなことをリクエストしてきた」と宮川社長はさまざまな要望をしていというが、2023年に入ってからはそろそろ結果を出し、「新しく世の中がビックリするようなサービスが出てこないのか」と求めていたそうだ。
結果として、1月中にZホールディングスの経営陣から経営統合の案が示されたという。「方向性としては非常に正しいと感じたので、即答で(統合案に)賛成した」そうだ。合併によって「相当変わるんじゃないかと期待している。自分の中でのモヤモヤ感は吹っ切れた」と宮川氏。
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