世界を変える5G

5Gが発展途上の中、ドコモが早くも「6G」を大々的にアピールする理由 キーパーソンに聞くMWC Barcelona 2023(2/3 ページ)

» 2023年03月07日 17時56分 公開
[房野麻子ITmedia]

6G時代には空のエリア化、地上100%は当たり前になる

―― 6Gや5GはSFのようなイメージもありますが、私自身は、飛行機の中で今よりももっと仕事をしなきゃいけなくなるんだろうな、ということをよく考えます。

中村氏 おっしゃる通り、非地上系のサービスは6Gのネットワーク技術として捉えて取り組んでいます。ご存じかと思いますが、NTTグループとしてSpace Compassという会社を立ちあげました。スカパーJSATさんとNTT持ち株との出資ですが、内容的にはドコモもかなり密に協力しています。特にHAPSはエアバスさんのZephyr(ゼファー)という機体で実験をしていたりしますので、空のエリア化、地上100%、また、NTT持株がやっていますが海上や海中にも広げて、飛躍的なエリア改善はしたいと思っています。

 6G時代にはそれが当たり前になっていくようなイメージでいますけど、出せる部分は5G時代、2020年代からやっていきたいと思っています。HAPSはまさにそうですね。

―― HAPSはけっこう難しいところもあると聞きます。また、衛星とスマートフォンが直接通信するようになるともいわれていますが、本当にできるのか、少し疑問を感じることもあります。

中村氏 ニーズは当然あると思いますので、そうなればいいでしょうが、おっしゃる通り技術的な課題はあって、距離があると大変だとは思います。われわれとしては使えるものをベストミックスで使っていく。HAPS、LEO(低軌道衛星)、GEO(静止軌道衛星)ですね。あと、普通の地上のネットワーク。それらをうまく使って、連携させていくことが重要だと思っています。

6G 6Gで目指す要求条件。陸上のカバー率100%や空や宇宙へのチャレンジなど、「超カバレッジ拡張」が特徴の1つとなっている

5Gは「設定する山が高すぎた」が、2025年ごろに広く浸透する

―― お話を聞いていると、5Gが延々と続くような印象もあります。3Gから10年おきに4G、5Gと新しい技術が出て世代が変わってきましたが、6Gは本当に2030年に出てくるのでしょうか。5Gの高度化が続くんじゃないかという意見も聞きます。

中村氏 そうですね。一応、2030年くらいから6Gということを前提に、6Gに向けた技術として、どういうものが必要か、できるかという検討はしています。

 技術的な内容は、多くの部分がやっぱり5G技術のさらなる高度化です。例えばMIMO的な技術とか、そういうことは間違いなくあると思います。正直、4Gから5Gも、技術的に大きく違ったかというと、そうではないですね。4Gくらいから、2G、3Gのときのように技術的な差が明確にあったり、代表的な名称で違いを表せたりするかというと、そうではなくなってきています。

 大事なのは、やっぱり細かな改良。それの組み合わせで、トータルとして大きなゲインを出すという方向になっていて、6Gもそういう感じかなと思っています。MIMOもどんどん高度化していきます。アクセス方式の部分に新たな技術を入れるかもしれませんが、既存周波数帯で無理してそれを入れるかというと、それはあまりゲインがない。費用対効果があるんだったら、それを入れていきましょう、ということかと思います。

―― 5Gはいまひとつサービスが花開いていないように感じますが、6Gになると花開くのでしょうか。以前「偶数世代は成功し、奇数世代は停滞する」というような考え方を聞いたことがあるのですが……。

中村氏 尾上さん(※)ですね。尾上さんの言った通りに進むような……それはなんだか尾上さんの呪縛にはまっているみたいで(苦笑)。

※:NTTのChief Standardization Strategy Officer(CSSO)尾上誠蔵氏。「LTEの父」とも呼ばれる

―― なかなかつらいところですか。

中村氏 5Gをやってきた者からすると、あれはムッとしましたよ(笑)。過去を振り返ったときに、確かにそういう面があることは否定しません。今、私は偶数世代の6Gをやっているので別にいいんですけど、5Gもやっているので(笑)。

 ただ、6Gに行くには5Gをしっかり作っていかなくてはいけません。技術的な連続性が当然ありますので、5Gをしっかり作り上げ、その上で6G、そしてさらなる飛躍、というストーリーは基本中の基本ですよね。5Gがちょっと足踏みしているというのは、確かにあるとは思いますが……。

―― 私はコンシューマー向けサービスを中心に取材しているので、特にそう感じるのかもしれません。

中村氏 おっしゃる通りで、エンタープライズ系はいろいろ出しているので、それをどんどん広げていけると思っています。ニーズは高いです。また、NTTコノキューがやっているようなXR系も、エンタープライズ系でどんどんいいものが出ていますので、使われていくと思います。通信容量も増えていき、5Gらしくなっていくのだと思います。

 コンシューマー系は、人間拡張が1つのキーになることを狙いたいと思っています。個人的にはB2Cですね。直接コンシューマーにというと、なかなか難しいのですが、B2B2C的なやり方でコンシューマー向けサービスを提供していく方法は当然、あると思っています。いろいろなパートナーさんと協力して、新たなアプリケーションをコンシューマー向けに作っていく。そういうところを目指せたらいいなと思っています。

―― 法人向けだと、具体的にどんなサービスが出ているのでしょうか。

中村氏 多くの業界で、通信というものが欠かせないものになっています。有線の無線化の動きもどんどん広がっています。特に工場ですね。工場で、無線で機器をつなぐ。工場内のリモートコントロールや遠隔監視、コーチング、そういうニーズが非常に高まっています。また、医療関係もいろいろやっています。遠隔医療、引いては遠隔手術、明らかにニーズがあります。

 エンタープライズ系は、今まで本当にいろいろな実証実験をしてきたものが、次々と本格的に導入されていくことになると思います。少し時間がかかるかもしれませんが、個人的には2025年あたりは、かなり使われていることになっていると予想しています。過去を振り返っても、大体5年目あたりで(浸透していく)。

―― 確かに、5Gが始まってまだ3年ですね。

中村氏 そうなんです。5年くらいで本格化を迎える、みたいなところがありますので、もうちょっと時間がかかるかもしれません。5Gでは「宣伝しすぎ」と散々いわれている。「設定する山が高すぎた」と。

―― ただ、志を高く持つことは大切だと思います。

中村氏 目指すところを示唆するのは大事だと思っています。「ああいう世界を目指すんです、どんどん作っていきましょう」というものは示せたかなと思います。ただやっぱりコスト的な要因、また世界情勢の影響もありました。そもそも、われわれの5Gデビューのイベントが、コロナ禍のせいで大々的にはできなかった。

―― 確かにそうでしたね。コロナ禍が収まってだいぶ変わってきていますか。

中村氏 (MWC Barcelonaに出展しているという)こういう場を持てていること自体が、大きな変化だと思います。人がよりいっそうネゴシエーションして、ビジネスを作り上げていくスピードが上がるんじゃないかと思いますね。

―― 端末の変化は出てくるでしょうか。

中村氏 XRデバイス系で、5Gモジュールを搭載したものがどんどん出てくる可能性があります。今は有線だったり、Wi-Fiでスマホとつなげたり、専用モジュールとつなげたりという状況ですが、QualcommさんもXRデバイス系に非常に注力されていますので、5Gを搭載して、直接通信できるようになる。そうすると、もっと身軽にXRデバイスが使えるようになる。そこで、われわれが人間拡張と組み合わせる。そういうことを考えたいです。

―― 3Gではメール、4GでSNSといわれ、5GはやはりXRでしょうか。

中村氏 XRは間違いなく来ると思います。そのつもりでNTTコノキューも頑張っています。XRはエンタープライズ系含め、いろいろな用途があると思いますので、より使いやすくなれば、より使う機会、使うアプリケーションが増えてくる。そうなると通信容量、通信速度が求められていく。そこで5Gのよさが生かせる。こうした良循環がどんどん生まれてくると思います。3G、4Gでもそうでしたよね。

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