NTTドコモが、1月17日から19日まで同社の研究開発や最新技術を紹介する「docomo Open House'22」をオンラインで開催している。イベント初日の17日には、リアルの展示会場をメディア向けに公開し、説明員によるデモンストレーションを実施した。また、執行役員 R&Dイノベーション本部 6G IOWN推進部長 中村武宏氏が「5G Evolution & 6G」の現状を説明した。
日本に5Gが導入されたのが2020年5月。既に高度化、つまり5G Evolutionの技術開発が進んでおり、世界的には既に6Gに向けた流れができつつある。
親会社であるNTTは、光の技術をベースとした将来の情報処理基盤「IOWN」を提唱しているが、ドコモが6Gで目指す世界とIOWN構想は方向性が同じことから、NTT持株の研究所と密に連携し、研究開発を進めている。今回のイベントで紹介されている展示にも、持株の研究所とワンチームで取り組んでいるものが多いと語った。
ドコモは、サイバー空間とフィジカル空間を融合させる、いわゆる「デジタルツイン」に取り組んでいるが、そこでは大量のデータがやりとりされ、しかもリアルタイム性が重要になる。そのために必要となるのが、今よりもさらに高速大容量で低遅延、高信頼なネットワーク、5G Evolution & 6Gのネットワークだ。
5G Evolution & 6Gには6つの方向性がある。「(1)高速大容量」「(2)低遅延」「(3)高信頼」「(4)多通端末接続」という要素は、現状の5Gから継続的に進化しており、「(5)サービスエリアが飛躍的に広がる」ことも期待される。
「地上は当然100%。人口カバー率という概念ではなく、もう全エリアです。さらには海上あるいは海中。空も当然で、ドローンは将来的には“空飛ぶタクシー”になっていきますし、飛行機の通信環境も良くしていく。果ては宇宙までサービスエリアにしなければいけないと思っています」(中村氏)
それらに加え、サステナブルな世界を目指すための「(6)低消費電力化」も重視されている。これら6つの要求条件を踏まえた5G Evolution & 6Gのネットワークを作ることで、サイバーとフィジカルの融合を実現すべく、ドコモは研究開発に取り組んでいる。
世界でも6G研究開発の動きは「競争激化、熾烈(しれつ)」で、特に積極的なのが中国。世界中で6G関連のプロジェクトが数多く立ち上がっているという。スピードも速い。2020年頃の商用化を目指していた5Gの際は、さまざまなプロジェクトが立ち上がり、ホワイトペーパーが出されるのが2010年代半ばくらいだったが、2030年頃に始まると予想される6Gに向けては、既に多くのプロジェクトが始まっている。ホワイトペーパーもドコモをはじめ各事業者、関係機関が出しており、「3年ぐらい前倒し」(中村氏)されているという。6G商用化のタイミングも早まる可能性が十分あると中村氏はみている。
「ドコモが6Gを早く導入すると誤解されることがあるんですが、われわれはまだ導入タイミングを決めているわけでもないし、われわれから早めたいと言っているわけでもありません。ただ、世界で導入が早まった場合に追従できるように、今から準備をしないといけない。研究開発のアクセルを踏んでいかなければいけないと思っています」(中村氏)
日本でも総務省が中心となって「Beyond 5G推進コンソーシアム」を立ちあげ、もちろんドコモも参加している。中村氏は、「世界の技術開発競争に日本が負けないように、もしくはイニシアチブを取れるように積極的に貢献したい」と意気込みを見せた。
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