MWCで盛り上がりを見せた「Open RAN」――井伊ドコモ社長「芸風が違う」、三木谷楽天会長「見下されている」石川温のスマホ業界新聞

» 2023年03月12日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 今回のMWCではノキアがロゴを変更し、Open RANに舵を切ろうとするなど、Open RANが話題の中心であった。数年前からO-RANに注目が集まっているが、景気後退もあって、思うようには進んでいない。まだまだ「様子見」のところも多いようだが、だからこそ、このタイミングで売り込みをかけているようにも見える。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2022年3月4日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。


 NTTドコモはO-RAN事業に「OREX」というブランド名をつけた。すでにボーダフォンやSingtel、Dishなどと交渉しており、支援に向けた話し合いが進んでいるという。

 一方で、楽天シンフォニーも、MWC期間中にプライベートイベントを実施。世界のキャリアに向けてのアピールに余念がなかった。

 NTTドコモと楽天シンフォニーという日本企業がOpne RAN事業に参入していると言うことで、メディアとしてはどうしても両社を比較したくなってしまう。

 しかし、NTTドコモの井伊基之社長は「楽天シンフォニーとは芸風が違う」と言い切る。

 「彼らは買ってきて、売るというモデルだが、僕らは研究所などで技術を磨き、13社入れて、自分のネットワークで使って、その結果を他キャリアに売るというビジネスモデル。

 検証し、サポーティング能力、フォローする能力を信頼してもらい、売るモデル。売り切るよりも、アフターもしっかり面倒を見る。

 そもそも、会社の成り立ちが全く違う。全部とは言わないが、グリーンフィールドのように新しくやるところとは楽天シンフォニーのほうが相性がいいのかも知れない。しかし、ブラウンフィールド的に3G、4Gをやってきた人たちからすると『いったい、どうやって移行すればいいの』という話になってくる。ハイブリッドとなるとどうしたらいいのか。僕ら自身がそういう状態なので、そのノウハウを上手くシフトしながら、数%をOpne RANにするというアプローチをしている」と語る。

 一方で、楽天の三木谷浩史会長はNTTドコモのOREXに対して「実績はあるんですか。お手並み拝見といったところ。もしかしたらうまく行くかも知れませんが」と一蹴する。

 三木谷会長は「我々が世界で一番先を行っている。大きいテレコムカンパニーからの関心が寄せられ、一度試してみたいという要望がある」という。

 楽天には「実績がない」という指摘があるなか、三木谷会長は「いろんな周波数帯域があり、いろんな機器があり、3GPPの仕様だけでなく、それぞれのキャリアに個別の使い方がある。

 それらにすべて対応していかなければいけない。単純に動けばいいわけじゃない。いろんな機能をつけていかなければいけない。パフォーマンスも必要。実際に使ったとき、オートメーションやオートヒーリング、オートスケーリングが本当に動くのか。

 動いたけど、消費電力が3倍では意味がない。みんなが昔、これは不可能だと言っていた理由は、それなりにある。いつかはほかの人もできるでしょうけど、結構時間はかかるのではないか」と、先頭を走っているからこその苦労を明らかにした。

 では、Open RANビジネスは儲かるものなのか。

 三木谷会長は「仮想化の市場は、15兆円や20兆円になる。そのうち、全部が全部うちに来るわけではない。ここにはハードウェアも入っているが、うちはハードウェアは基本的にやらない。

 利益率は高いビジネスになると思いますが、あとはしっかりデリバリーができる体制の構築が重要になる」とした。

 一方で、井伊社長は「儲かってくれないと困る。売り切りモデルじゃないので、売った後のフォロー、サポートをリカーリングでもらっていく。数が集まれば、収入が上がっていく。数を増やさないとしょうがない。

 私は社内で売上げ100億円いかないとビジネスじゃないといっている。楽天シンフォニーは600億円をいっている。そういうレベルにいくビジネスになると思っている」と語った。

 記者から「NTTドコモと一緒にやればいいのでは無いか」と提案があったが、三木谷会長は「どちらかというと、(NTTドコモから)見下されていると思っている。ウチは表向きは日本の会社だが、中身は国際チームなので、そこは違うところではないか」と語った。

 いずれにしても、来年のMWCでどちらがOpne RAN市場で勢いづいているのか。かなり楽しみになってきた。

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