根本的な解決策が5Gエリアの増強だとすると、対応には年単位で時間がかかってしまう。そこで、ドコモは夏ごろまでにネットワークにチューニングを施し、パケ詰まりを解消していく構えだ。福重氏によると、「既に進めている場所もあるので、短期的な対策としてやり切りたい」という。夏になって一斉に解決するのではなく、現時点から、エリアごとに徐々に改善していくイメージだ。
対策の1つ目が、5G化している基地局のセル範囲を広げて、混雑している基地局から端末を移すというものだ。これは、5Gそのものを拡大するわけではなく、5Gと一体になっている4G側に収容する端末を増やすことを意味する。4Gは帯域幅が限定されているため、そちらの基地局側が混雑してしまうようにも思えるが、無線アクセスネットワーク部 エリア品質部門 担当部長の佐々木和紀氏によると、「5Gを使っていることで、下(4G)にも少し余裕がある」という。
5G自体を拡大したり、5Gにつながるようなしきい値を変更したりするわけではないため、2021年ごろに発生していた5Gのセル端で起こる「パケ止まり」が再発する心配もないという。調整方法は「場所によって異なり、程度も違う」(福重氏)というが、主に5Gを設置した基地局側の「アンテナの角度や出力を調整」(同)してエリアを広げたり、逆にエリアを狭めたりしていく。これによって、混雑していた側の基地局に余裕が出る。
もう1つの対策が、帯域幅の少ない800MHz帯の利用を減らしていくというものだ。こちらは、基地局側のパラメーターを変更することで対策を施す。先に挙げたように、屋内では800MHz帯をつかみやすいだけでなく、別の周波数帯をつかんだ端末がキャリアアグリゲーションで800MHzを足し、帯域を消費してしまうことがある。「まずPセル(最初につながる周波数帯)としてどこに収容するのか。800MHz帯でなくてもいい場合は、そこにつなぐようにする」(同)。また、キャリアアグリゲーションで「複数のSセル候補があった場合、そこを使わないようにする」といった対策も施すようだ。
もっとも、パケ詰まりが起こるほどトラフィックの多いエリアでは、本来、5Gをより広く展開していく必要がある。佐々木氏が「手段として長期、短期がある」と語っていたように、発表された対策は後者に当たる。そのため、パケ詰まりが一気に解消されるというより、ある程度使える水準に持ち直すといった方がイメージとしては近いだろう。長期的な対策としては、やはり5Gのエリア拡大が重要になる。「本当に必要なところは検討に入っており、(5Gエリアを)構築中」(同)というだけに、今後のさらなる改善にも期待したい。
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