もう1つの問題が、都市部の屋内だ。都市部では複数の周波数帯を重ね、それを束ねるキャリアアグリゲーションで容量を上げるのが一般的だ。ドコモの場合、都市部ではプラチナバンドと呼ばれる800MHz帯に加え、1.5GHz、1.7GHz、2GHz帯などをまとめて運用している。ただ、建物内では800MHz帯の電波が強くなるため、どうしてもそちらをつかむ端末が増えてしまう。一般的に、周波数は低ければ低いほど遠くに飛びやすく、障害物にも回り込みやすくなるからだ。一方で、低い周波数帯は帯域幅が狭く、混雑しやすい。
仮に800MHz帯をつかんだとしても、キャリアアグリゲーションでその他の周波数を束ね、トラフィックを分散させれば解決できそうだが、逆に他の周波数を最初につかんだ端末が「Sセル(キャリアアグリゲーションで後からつかむ周波数のこと)で800MHz帯をフル活用してしまうようなこともあった」(福重氏)という。ここにトラフィックの増加が重なると、パケ詰まりはさらに起こりやすくなる。周波数分散の最適化がなされていなかったことも、都市部で頻発している要因の1つといえる。
4Gは、キャリアアグリゲーションで周波数を束ね、段階的に速度や容量を向上させてきた。ただ、この図のように、帯域幅の狭い800MHz帯も含まれており、ここが逼迫の原因になっていることがあるという。なお、写真は18年11月のもので、現在はより多くの組み合わせが存在するいずれパケ詰まりも4Gで起こっているため、3.7GHz帯や4.5GHz帯を使う5Gを入れれば解消できそうな話だ。実際、ドコモのネットワークも場所によっては非常に高速で安定している。駅では数文字のメッセージすら送信できない場合でも、電車が動き出した後に5Gをつかみ、一気にパケットが流れることがある。
パケ詰まりが起こるほど、容量が逼迫している場所には、5Gを導入するのが対策としては王道だ。ただ、基地局の設置は交渉事で、ドコモの思惑だけでは進めることができない。ドコモ側も「トラフィックの増加や街の変化の情報が入り次第、対策はしているが、計画通りにいっていない部分がある」(同)と認める。
簡単にまとめると、原因は次のような流れになる
(1)はパケ詰まりの発生要因、(2)と(2')はその対策ができなかった理由で、結果として(3)が起こり、パケ詰まりが頻発するということだ。(2)と(2')は場所によってどちらか一方、または両方が発生していることがある。根本的な解決策としては、(4)が必要だが、エリア設計から用地の交渉、基地局設置には時間がかかるため、パケ詰まりが起こってからすぐに全てを解決するのは困難だ。日本の大都市圏は特に人口密度が高いため、こうした問題は起こりやすい。
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