ソフトバンクは5月10日、2022年度通期決算と新中期経営計画を発表した。決算説明会では宮川潤一社長が登壇し、展望を紹介した。
ソフトバンクの2023年3月期の売上高は5兆9119億9900万円(前年比3.9%増)、営業利益は1兆601億6800万円(前年比9.8%増)、純利益は5313億6600万円(前年比13.7%増)と、増収増益の決算となった。
このうち、コンシューマー向け通信部門の売上高は2兆8831億円(前年比0.01%増)とわずかな増加にとどまった。同部門の営業利益では4624億円で、前年比26%減のマイナス成長となっている。携帯電話サービスでは、政府の政策に沿って2020年に実施した携帯電話料金値下げの影響が続いており、2022年度における値下げの影響はマイナス890億円としている。電力サービス「ソフトバンクでんき」は売上増加に貢献したが、燃料価格高騰により採算が悪化し、減益の要因となった。
モバイルサービスの累計契約数は、2022年末時点で5043万8000件。このうち、スマートフォンの契約数は2831万8000件となっている。サブブランドのY!mobileが回線契約の増加をけん引しといる状況という。主要回線の総合ARPU(1回線当たりの月間収入額)は3840円となっている。
ソフトバンクの2023年度〜2025年度の中期経営計画では、非通信事業の強化で成長を目指す「ビヨンド・キャリア戦略」を推進する方針が改めて強調された。コンシューマー向け通信、法人向けソリューション、PayPayを含む金融、ヤフー・LINEの各事業部門について展望が説明された。
宮川社長が特に注力する領域として紹介したのが、法人部門のデータセンター事業だ。この事業では、次世代の社会インフラとして、分散型のAIデータセンターを全国に配置し、xIPFと呼ばれる超分散コンピューティング基盤を構築する計画が示された。この構想は、AIサービスの普及を背景とする演算ニーズ拡大への対応を見据えたものだ。データセンターを郊外にも配置し、高速な通信網でつなぐことで、大規模災害への備えや、電力消費の分散化も目指すとしている。
法人部門ではこの他、中小企業向けのソリューションサービスの営業体制を強化する方針を発表。オフィスビルに各種センサーを取り付けて、業務用ロボットなどを運用する「オートノマスビルディング」など新しいサービスを開発していく方針も示した。
個人向け携帯電話サービスが含まれるコンシューマー向け通信部門については、携帯電話料金値下げの影響が続いている状況だが、2022年度を底として反転する見通しという。2023年度の営業利益予想は4700億円(22年度比で102%増)と保守的な目標が示された。スマートフォンの累計契約数については、2023年度に累計3000万件(前期比で74万件増)を目標とする。2024年度以降も年100万件水準の純増を目指すとしている。
このうち、モバイル通信事業では、メインブランドのSoftBankブランドのテコ入れをARPU向上を狙う。並行して製品保証やエンタメサービス、店頭でのサポートサービスなど、通信料収入以外の収益源の多様化も進める方針だ。
金融部門では2023年度に連結子会社化したPayPayを中核として、事業の拡大を狙う。PayPayは2022年度にPayPayカード(旧ワイジェイカード)を子会社化しており、スマホ決済の事業開始から4年半にして決済取扱高は10.2兆円を達成。今後は収益化を進めていく方針で、2025年度までに金融事業の黒字化を目指す方針を示した。
ヤフー・LINE事業では、ZホールディングスのLINE社の合併を完了し、LINEヤフー株式会社への再編が2023年10月に完了する予定となっている。経営の一体化が遅れていたヤフーとLINEの事業を再構築し、2025年度までに事業の立て直しを図る。
設備投資額は、5Gのエリア構築が一段落したことから、抑制する方針を示している。2022年度実績が4075億円だったのに対し、2023年度〜25年度までは、各年度で3300億円を割り当てる。
通信事業では、再生可能エネルギーの使用比率を高める方針を示した。2030年度までにソフトバンクが通信サービスで使用する電力の100%を再生エネルギーに置き換える方針が示された。この計画を遂行するため、ソフトバンクは発電事業者と20年間の再生可能エネルギー調達契約を締結している。調達量は累計20億kWhに上る。これは現在通信事業で使用している電力の20年分に相当する量だという。
また、質疑応答の中では、ここ数カ月、注目を集めている生成AIサービスについても踏み込んだ発言がなされている。
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