ソニーのハイエンドモデル「Xperia 1 V」が2023年6月16日に発売された。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社に加え、7月にはソニーストアや家電量販店での取り扱いも控える。
Xperia 1 Vはメインの広角カメラに使うセンサーを大判化するとともに、2層トランジスタ画素積層型CMOSセンサーの「Exmor T for mobile」を世界で初めて採用。低照度時の集光量を大幅に上げ、明るい画に仕上がるようになった。ミラーレス一眼カメラの機能などを取り込み、使い勝手も向上。スピーカーは音圧が向上し、ビジュアルとオーディオの性能をよりブラッシュアップしたモデルとなる。
その実機を借りる機会を得たので、先代の「Xperia 1 IV」との比較を交えつつ、カメラ、オーディオを中心にレビューしていく。
まずはカメラからチェックしていく。
スマホカメラの性能アップの手法として、中にはセンサー大判化として1型センサーを搭載する端末も増えている。ソニー製では「Xperia PRO-I」で1型センサーを搭載したモデルが存在しているが、Xperia 1 Vはメインの広角カメラに使うセンサーはサイズをXperia 1 IVまでの1/1.7型から1/1.35型へと大判化。本体の厚みへの影響を考慮し、画質を突き詰めた結果、この1/1.35型となっている。4つの画素を1つとして扱う「ピクセルビニング」技術を新規採用したこともあり、暗所性能が大幅に向上したという。
日が沈んだ19時頃、暗い神社へ行き、Xperia 1 VとXperia 1 IVとでどれほどの差があるのかを確かめてみた。どちらも24mmの広角カメラで撮影している。Xperia 1 IVでは全体が暗く、境内の奥の木の幹が分かりづらいが、Xperia 1 Vでは木の幹を含め全体的に明るく撮れる。手持ちで撮影したら、手ブレにも強くなっており、これから迎える夏祭りなどで、Xperia 1 Vの24mmの広角カメラが活躍しそうだ。暗所性能が引き上げられただけあり、実際の仕上がりがXperia IVと比べて明るくなっている。
一方で16mmの超広角カメラで大きな差といえる違いはほとんどなく、しいて違いを挙げるなら色味が異なることくらい。85-125mmの望遠カメラについては、光学ズームで遠くのものを撮るに連れ、画質に変化が現れて不鮮明になっていく。
人肌をより鮮やかに撮影できる「S-Cinetone for mobile」の搭載も進化点の1つで、ソニー製の業務用カメラ「FX9」にも搭載される「S-Cinetone」をスマホに最適化したものとなる。人の肌を描写する際に使われる中間色の表現力をアップさせ、色合いはソフトに、ハイライトの描写は被写体を際立たせる自然なトーンとなっている。
FX9とXperia 1 Vの撮り比べを繰り返し、S-Cinetoneの設計者の意見を取り入れながら、肌の彩度と唇のコントラストなどを実際の色と遜色ないレベルにまで調整したという。
実際に薄暗い場所で人物を撮影してみると、Xperia 1 Vの方がXperia 1 IVよりも明るく自然な肌の色味となった。条件が悪く陰はどちらも出てしまうが、顔だけでなく手の色もより肉眼で見たときに近い色合いとなる。
カメラの機能としては「クリエイティブルック」の初搭載もトピックの1つだ。色味やシャープネス、明るさなどの多彩な要素から醸し出される映像(動画、静止画)の見た目、印象を表すルックをプリセットから選べるため、後処理や専用アプリなしでさまざまな静止画像や動画を撮影できる。これはフルサイズセンサー搭載の一眼カメラ「α1」「α7 IV」でも既に使えるものだが、Xperia 1 Vのアウトカメラとインカメラの両方で扱えるようになった。
花をアウトカメラで撮ってみると、クリエイティブルックのおかげで、それぞれ違った印象の仕上がりとなる。それもあっという間にだ。
スマホならではのUI(ユーザーインタフェース)で簡単に操作でき、アウトカメラとインカメラの切り替えも即座に行える。例えば、これまでは撮影してから色味などを変更する作業をしていたところ、Xperia 1 Vのクリエイティブルックを使えば、撮影時にお気に入りのルックを選び、そのままSNSにアップロードする、といった一連の流れを効率化できる。
昨今の動画需要を踏まえてか商品レビューに特化したモード「商品レビュー」をXperiaとして初搭載した。通常、手に持ったものを撮る際、顔にフォーカスが合ってしまい、手に持った商品がぼけてしまうが、商品レビューをオンにすると、顔ではなく商品にフォーカスが合うようになっている。商品にフォーカスが合うまで長い時間待つ必要はないし、AFの速度と追随性も優れている点はさすがソニーといいたいところだ。
「Photography Pro」で動画モードに切り替え、人物と商品のようなアイコンをタップすることで、このモードが使えるようになる。オフの場合は商品レビューのアイコンにスラッシュが入る。
「Vlog Monitor XQZ-IV01」と三脚を組み合わせて使えば、モニターを見ながら商品紹介ができる。このようなシーンを想定し、Xperia 1 Vではアウトカメラ付近に「声優先マイク」を搭載する。日頃からYouTubeに商品紹介動画をアップしている人にとっては、この商品レビューが役立つが、そうでない人はあまり使わないだろう。
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