とはいえ、現行のISDB-T規格に準拠したTVは広く普及しており、TV局側の機材体制を含めて一気に新規格へと移行することは、現実的に不可能だ。そこで新規格(高度化地デジ)の策定に当たっては、主に以下の要件を満たすことが求められた。
これらに基づいて、情報通信審議会の情報通信技術分科会 放送システム委員会では「映像コーデック」「音声コーデック」「多重化(※2)」「限定受信(スクランブル)方式」「伝送路符号化(※3)」の5点に関する検討を進めてきた。
(※2)映像/音声を含む各種データを1つに合成する方法
(※3)多重化したデータを無線で伝送する方法
高度化地デジの映像コーデックは、圧縮率を高める観点から「H.266(VVC)」を採用する。
H.266は現行の地デジが使っている「MPEG-2」はもちろん、4K8K衛星放送が利用している「H.265(HEVC)」と比べても圧縮効率が向上している。計算上は1チャンネル分の帯域(6MHz幅)でも4K放送を同時に1〜2番組(フルHD放送は最大6番組)を伝送できるという。
映像の入力フォーマット(映像解像度/フレームレート/HDR対応)は、コンテンツの流用も考慮し、原則として4K8K衛星放送とそろえている。そのため、映像解像度は少なくともフルHDとなり、インターレース走査の映像には非対応となる(※4)。
(※4)インターレース走査のコンテンツを放送する場合は、TV局側でプログレッシブ走査への変換処理を行うことを想定している
音声コーデックは、音質向上と臨場感の確保という観点から「MPEG-H 3D Audio」または「AC-4」の選択制とされる。
音声の入力フォーマット(サンプリングレート/量子化ビット数/入力チャンネル数)は、映像入力と同様に原則として4K8K衛星放送とそろえており、最大22.2chの空間オーディオ音声にも対応可能だ。
高度化地デジにおけるデータの多重化は、4K8K衛星放送と同じ「MMT・TLV方式」で行うことになった。
この方式の場合、データは「MMT(MPEG Media Transport)層」「TLV(Type Length Value)層」「IPパケット層」の大きく3層でパッケージングされる。いわゆる「ハイブリッドキャスト」(放送コンテンツとインターネットコンテンツを一体表示する仕組み)に対応しやすいことがメリットだ。
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