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全国で通信品質の改善を迅速に――ドコモが「通信品質向上」に向けた取り組みを紹介(2/2 ページ)

» 2023年08月02日 21時00分 公開
[井上翔ITmedia]
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都内4カ所での対策は全国の混雑地でも展開

 通信品質の低下に対して、ドコモでは短期的な対策として「エリアチューニング」を順次実施している。具体的には、以下の調整を行っているという。

  • 基地局の「カバーエリア」
    • アンテナの角度調整
    • 電波の出力調整
    • アンテナの指向調整
  • 基地局の「分散制御」
    • 端末が特定の周波数帯(バンド)に集中しないように設定を変更

 並行して、特に混雑の激しいエリアについては、以下の取り組みも進めている。

  • 品質改善サイクルの高速化
    • 品質検証を行う頻度を増加
  • 人的リソースの投入
    • 現地に人を派遣して実態調査や改善確認を実施
  • 基地局の新設/設備追加スケジュールの前倒し

 7月28日に発表された都内の4カ所における状況は取り組みの先行事例として公表したもので、全国の混雑エリアでも実施中か、今後実施するという。

実施概要 都内4カ所で行った取り組みの概要。7月28日の発表にもある通り、JR渋谷駅のホームについては、9月に予定しているの基地局の再設置をもって改善完了となる

実際、どんなことをやったのか?

 通常、通信品質の確認はトラフィックのモニタリングで済ませ、改善策はモニタリング結果からのシミュレーションで検討することが多い。しかし、今回の都内4カ所における取り組みでは、人的リソースを割いて現地調査を組み入れつつ、品質改善サイクルを最大で90%ほど高速化したという。

 基地局の新設/設備追加の計画については、一番早いもので約3カ月ほど前倒しできたという。

リソースの集中投入 人的リソースを集中投下することで、品質改善を行うための行動サイクルを高速化。通常は机上(モニタリングやシミュレーション)だけで済ませてしまう部分も、現地調査を交えて行うようにしたという
基地局 基地局のアンテナの角度や出力調整も行っている
アンテナ角度調整 アンテナ角度調整については、遠隔操作で行える基地局(中〜大規模が中心)がある一方で、現地での手動調整が必要な基地局(小〜中規模が中心)もある。いずれも最適な角度を求めて、何度も調整したそうだ
分散制御 一般的に、基地局は複数のバンドをカバーしている。従来は対応機種の多いバンドや接続性のよいバンド(図中の「800MHz」「2GHz」)に接続が集中しやすい傾向にあったので、基地局側で他のバンドにつなぎ変えさせる制御を積極的に入れるようになった
設備追加 基地局の新設/設備追加についても、可能なものはスケジュールを前倒して対応している

やってみたらどうだった?

 これらの取り組みの結果は、7月28日の発表にあった通りである。渋谷駅のハチ公口周辺については、混雑時における4G通信のスループット(実効通信速度)が対策前の最大10倍(下り10Mbps以上)に改善された

 「え、10Mbpsで改善なの?」と思うかもしれないが、ドコモでは「混雑時でも動画ストリーミングサービス(YouTubeやNetflix)を問題なく楽しめるレベルにすること」を目標としたので、10Mbpsも出れば十分に“達成”といえる状況にはある。

 「たった10Mbpsじゃあなぁ……」と言いたくなる気持ちもあるが、品質改善の“副作用”を織り込んで達成した目標だと知ると見方が変わる。というのも、基地局側でバンドの分散制御を行うと、特にキャリアアグリゲーション(CA)に対応する端末ではピークスループットが低下しやすくなるのだ。

 今回は「ピークスループットよりも多くのユーザーが安定して通信できることを優先する」という前提で、4Gでは下り10Mbps以上のスループットを確保した。そういう意味では、頑張っているという見方もできる。

 同社は「これで改善が終わりとは思っていない」としており、安定した通信を前提として、さらにスループットを改善できるよう取り組んでいくという。さらなる品質改善に期待したい。

スループット改善 渋谷駅駅のハチ公口周辺は“4Gでは全然通信できない”という象徴的な場所だったが「チューニング→設備対策→再チューニング」というサイクルによって混雑時のスループットが最大で10倍になった
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