0円廃止騒動から1年、成長基調に乗った楽天モバイルの動向を占う 新たな懸念材料は?石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2023年08月12日 11時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 6月に「Rakuten最強プラン」を導入した楽天モバイルが、ユーザー数を順調に伸ばしている。MNO単体での契約者数は500万に迫り、1GB以下0円でユーザーを急激に増やしていた「UN-LIMIT VI」のころの契約者数に戻りつつある。0円目当てのユーザーがほぼいなくなった結果、解約率も低下。コスト削減効果を進めたことで、ようやく黒字化のめどが立ち始めた。

 8月下旬には、データプランで導入していた本人確認不要の申し込みプロセスを音声SIMに拡大。秋までに東京23区や名古屋市、大阪市でのKDDIローミングを提供し、エリア品質を向上させる。このタイミングでマーケティング活動を強化し、ユーザー獲得に弾みをつける構えだ。成長基調に乗った楽天モバイルだが、死角はないのか。“Rakuten最強プラン後”の同社の動向をまとめた。

楽天モバイル Rakuten最強プランの導入で、純増数やARPUの増加傾向が明確になった楽天モバイル。Rakuten Optimismや決算説明会での取材をもとに、同プラン開始後の動向を解説する。写真はRakuten Optimismの基調講演に登壇した楽天グループの会長兼社長、三木谷浩史氏

Rakuten最強プラン効果で純増数アップ、ARPUも堅調に拡大

 6月に導入されたRakuten最強プランの効果で、楽天モバイルのユーザー獲得が順調だ。8月10日に開催された楽天グループの決算説明会では、同社の第2四半期(23年4月から6月)に481万契約に達したことが明かされた。第3四半期に入ってもその勢いは衰えず、7月は491万と10万契約を上乗せしている。Rakuten最強プラン導入以前の第1四半期(23年1月から3月)は、1カ月平均で3万の純増だったが、新料金プランでその勢いが加速している。

楽天モバイル 6月の契約者数は481万に達した。7月は10万の純増で、500万契約にリーチをかけた格好だ

 新料金プランと銘打っているものの、Rakuten最強プランは、前身の「UN-LIMIT VII」との違いは少ない。データ使用量ごとの金額はそのままで、音声通話やオプションの料金も変わっていない。最大の違いは、同社がパートナー回線と呼ぶ、KDDIのローミングを使用した際のデータ容量が5GBから無制限になった点だ。データ容量の差分がなくなったことを受け、同社は人口カバー率を合算で99.9%とうたい、ユーザーの不安感払拭(ふっしょく)に努めてきた。

楽天モバイル ローミングの容量制限を撤廃し、エリアの不安払拭ができたことがユーザーに評価されたと見ていいだろう

 また、7月には「Rakuten最強プラン(データタイプ)」を開始するとともに、本人確認なしでオンラインの申し込みができる「簡単申込&開通(旧ワンクリックお申し込み)」を開始。ユーザー紹介キャンペーンを強化するなどして、徐々に契約者獲得のアクセルを踏み始めている。1カ月の純増数が10万に達したのも、料金プラン改定や簡易的な契約の仕組みが奏功したからだ。

 単に純増数が増加傾向にあるだけでなく、ユーザーの平均データ使用量も月単位で増加している。1GB以下が0円だったUN-LIMIT VIのころは、1日あたり0.33GBで1カ月10GBを切っていたが、UN-LIMIT VIIで増加傾向に転じた。UN-LIMIT VIIでは、無理をして1GB以下に抑える意味がなくなったため、データ使用量の平均値が伸びるのは自然だ。Rakuten最強プランの導入でこの数値が再び増加しているのは、パートナーエリアの“リミット”が外れた効果といえる。

楽天モバイル ユーザーの平均データ使用量は、UN-LIMIT VII導入後から増加。Rakuten最強プランで、もう一段伸び、20GBを超えた

 月間の平均データ使用量が20GBを超えるのは、楽天モバイルの収益にとって大きな意味がある。Rakuten最強プランは、20GB超の料金が3278円(税込み、以下同)に設定されており、20GBを境に料金が2178円から3278円に上がるからだ。実際、同社のARPUは四半期ごとに上昇しており、第2四半期には、APRU(1ユーザーあたりの平均収入)が2000円を超えた。モバイル事業の収益はユーザー数とARPUの掛け算。そのどちらもが増加したことで、楽天モバイルの収益性は徐々に改善しつつある。

楽天モバイル 第2四半期には、ARPUが2000円を突破。内訳を見ると、データARPUの伸びが顕著だ

 これに加え、楽天モバイルからの流出抑止もできているようだ。決算説明会で公開された資料によると、UN-LIMIT VIIを導入した1年前は、解約率が8%超まで上昇していている。通常、大手キャリアの解約率は1%かそれを下回る水準で推移しているため、その8倍以上に及ぶ数値は異例といってもいい。UN-LIMIT VII開始後も、移行措置としてキャッシュバックやポイントバックを実施していたこともあり、解約率は高水準が続いていたものの、Rakuten最強プランの開始でようやく1.93%と2%を切るようになった。

楽天モバイル 0円廃止騒動から1年がたち、解約率はようやく業界水準に落ち着きつつある
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