楽天はポイントだけが「経済圏」ではないはず――auフィナンシャルホールディングスを見習うべき石川温のスマホ業界新聞

» 2023年08月27日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 3時間にわたる対談では「楽天はMVNOのままでよかったのでは」という雰囲気になり、逆境を跳ね返すのは難しいのではないかという結論になりつつあった。なかなかポジティブな話にならないなか、個人的にはまだ楽天モバイルには浮上のチャンスは残されているような気がしている。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2022年8月17日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。


 楽天モバイルは、やはりまだ「楽天経済圏の活用」がまるでできていない。単に「ポイント」を付与するだけでは、特定の人にしかなびかない。そもそも、ポイントに興味のない人を振り向かせることはできないだろう。

 議論のなかでも少し触れたが、起爆剤としては、例えば楽天モバイルのユーザーであれば、楽天銀行と一緒に使えば、預金の金利が上がり、住宅ローンの金利が優遇され、外貨預金や楽天証券の手数料が安くなるといった「金融的なお得」で、楽天経済圏を活性化できるのではないか。

 すでにauであれば、auじぶん銀行で「au金利優遇」として、au回線とじぶんでんきとのセットで住宅ローンが年0.1%、引き下げられるという優遇策を展開している。

 また、じぶん銀行とau PAYカード、カブコム証券、au PAYとの連携で、円普通預金金利が通常、0.001%なのが最大0.2%になるといった優遇策も展開中だ。

 KDDIでできて、なぜ楽天経済圏で実現できないのか。

 楽天モバイルが一気にユーザーを増やすには、すでに楽天銀行や楽天証券を使っているユーザーにNTTドコモやKDDI、ソフトバンクから乗り換えてもらうことだろう。

 さらに「通信料金の節約」に興味が無くても、金融的にお得になることには敏感なユーザーを捉えることが重要なのではないか。

 楽天モバイルのデータ使い放題で3278円に響かない層でも、楽天銀行で普通預金の金利が優遇される、住宅ローン金利が下がるというだけでも引きがあるはずだ。

 こうした金融との連携は、そもそも銀行を持たないNTTドコモには難しく、銀行を持っていても、ヤフーとLINEでID統一ができてないソフトバンクも実現するには時間がかかる。

 金融連携に対して、堀江貴文氏は「銀行や証券を上場をさせてしまったら、そうした連携もできなくなるのでないか」、大西氏は「金融はガチガチのルールがありすぎて、やれることは限られている」と指摘するが、auじぶん銀行は三菱UFJとの共同出資でもちゃんと差別化できている。

 au系金融サービスはどれも業界の先を行っている感はあるのだが、いかんせん、地味で認知度が高いとはいいづらい。メディアで扱おうとしても「ぽかん」とされてしまっている感がある。

 楽天はもうちょっとauフィナンシャルホールディングスを見習った方がいいのではないか。いま、楽天がauのようなサービスを提供したら、話題になるのは間違いない。

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