ユーザーにとってY!mobileの入口になるSプランやMプランは、データ容量を増やして「実質的な値下げをした」。その上で、データ容量の足りなくなったユーザーが「SプランからMプランに上がることで、ARPUを取れる方向にした」。これが、新料金プラン導入の狙いだ。「料金コンセプトとして3つ(の選択肢)を作っているが、一番使っていただきたいのは20GBのMプラン」というように、Y!mobileも20GBを主戦場にしている。
同じ20GBプランには、先に挙げたahamoやUQ mobileの「コミコミプラン」があるが、いずれも音声通話定額がセットになっているため、料金自体はY!mobileの割引適用後よりも高めに設定されている。UQ mobileは、各種割適用後の料金が2178円になる「トクトクプラン」も用意しているが、こちらのデータ容量はY!mobileの現行プランと同じ15GB。お得さでは、容量を5GB上乗せしたシンプル2のMプランに軍配が上がる。
さらに、楽天モバイルの「Rakuten最強プラン」も横目で見る。寺尾氏は、「(料金プランの表を)じーっと見ていただくと分かるが、30GB以下は同額かお得になる。料金を練っている中で改めて見返してみたら、30GB以下が彼らの階段(料金プランのステップ)とピタッと合っている」と語る。Y!mobileの料金は、あくまでおうち割 光セット前提のため、完全に対抗しきれているわけではないものの、楽天モバイルを強く意識していることはうかがえる。
また、Y!mobileは「ごちゃごちゃ(割引が)あってこのぐらいの値段になるが、LINEMOに行けば(そのままで)同じ値段になり、どちらにも行けるようにしている」。シンプル2のMプランをLINEMOの「スマホプラン」と同じ20GBにそろえたことで、その比較がしやすくなった。割引対象となる固定回線があり、サポートやYahoo!プレミアムの特典が必要であればY!mobile、そうでなければLINEMOという形ですみ分けができる。ユーザーごとにブランドを使い分け、それぞれの層にリーチできるのはソフトバンクの強みだ。
ただ、そのLINEMOに勢いがないように見えるのは、ソフトバンクにとっての課題といえそうだ。ドコモは20GBプランとしてahamoを展開しており、ユーザー数を伸ばしている。KDDIも、povo2.0はトッピングで自由に料金プランを組み立てられることを売りにし、独自性が高い。これに対し、LINEMOはLINE上でデータ残量の確認ができるなど特色はある一方で、他社と比べるとインパクトが弱いことは否めない。
このような状況を、寺尾氏は「(逆に)何をやってもいい状態」と表現する。「1Mbpsに制限した使い放題や、povoのような形もあり、年単位でスタディーをしている」として、サービスを刷新する可能性を示唆した。ユーザー数が少ないからこそ、単なるテコ入れではなく、大胆に料金体系やサービス内容を変える余地があるというわけだ。サブブランドの主戦場になっている20GBのデータ容量がY!mobileで展開されるようになった中、同じ20GBのスマホプランでサービスを開始したLINEMOの立ち位置を見直す機運も高まりつつあるといえる。
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