モバイル通信でもクラウドゲームを快適に!? KDDIとソニーが商用5G SAネットワークにおける「ゲームストリーミング」の安定通信に成功

» 2023年09月20日 15時30分 公開
[井上翔ITmedia]

 KDDIとソニーは9月20日、KDDIの商用5G SA(スタンドアロン)ネットワークにおいて、混雑環境下でゲームストリーミングに必要な通信品質を確保する実証実験に成功したことを発表した。5G SAならではのネットワーク機能である「ネットワークスライシング」(※1)を活用したといい、両社では人が多く集まるイベント会場でも「クラウドゲーム」(※2)を快適に楽しめる環境の構築に努めるという。

(※1)ネットワークリソースを論理的に分割(スライス)して、独立した複数のネットワークを構築する仕組み。要求される通信速度や機能に応じて複数のスライスを作ることで、他用途のスライスにおける混雑の影響を受けることなく安定した通信を行える
(※2)システムへの負荷が大きい描画(グラフィックス)の処理をサーバ(または遠隔地のゲーム機/PC)で行い、その結果を動画として端末(スマートフォンやPC)へと配信するゲーム

実証実験 KDDIとソニーが快適にクラウドゲームを楽しむための実証実験を実施

実証実験の概要

 両社は2021年9月から継続的に5Gネットワークを活用したコンテンツサービスに関する実証実験を複数行っている。今回の実験も、その取り組みの延長線上にある。

実証実験の履歴 KDDIとソニーは5Gを利用したコンテンツサービスに関する実証実験を複数行ってきた

 今回の実験では、自宅を想定した実験施設に家庭用ゲーム機を置いた上で、混雑したイベント会場から5G SA対応スマホ(Xperia)でそのゲーム機へとau 5Gネットワークを介してアクセスする、という構成を取っている(家庭用ゲーム機側には評価用サーバを挟み込んでいる)。

 クラウドゲームは描画の結果をストリーミング動画として配信するため、一定の通信速度が求められる。だからといって、レスポンスが悪化してしまう(応答が遅い)と、ジャンルによってはゲームプレイの快適性が大きく損なわれてしまう。ゆえに「速度と安定性を両立しなければならない」(KDDI 鶴田悟史氏)。

 そこで今回は、通常通りの構成の5Gネットワーク構成に加えて、「ゲーム専用ネットワークスライス」を用意してネットワークスライシングの有効性も確かめたという。

ネットワークスライス 5G SAネットワークならではのネットワークスライシング機能によって「ゲーム専用ネットワークスライス」を作って、その有効性も確認している
ゲームストリーミング ゲームストリーミングは、通信速度と安定性の両立が求められる。ゆえに、理論上はネットワークスライシングのメリットを生かしやすくもある

 実験に当たっては、操作信号と映像信号の“安定性”を5段階の「ゲーム体感レベル」として評価した。当たり前かもしれないが、ネットワークの混雑が激しい(≒在圏している端末が多い)ほど、レベルはどうしても低くなる。

 しかし、ゲーム専用ネットワークスライスを経由して通信すると、周囲が混雑している場合でも安定してクラウドゲームを楽しめたという。

混んでると楽しみづらい 今回の実験では、クラウドゲームの操作信号と映像信号の“安定性”を5段階の「ゲーム体感レベル」として評価している
思ったよりもすごい ゲーム専用ネットワークスライスを使った通信では、カスタマイズなしのネットワークスライス(≒通常の5Gネットワークに近い構成)で通信した場合と比べて描画や操作のカク付きを約99.5%減少できたという

 KDDIでは、2024年度から5G SAネットワークにおけるネットワークスライシングを段階的に提供する方針だ。外出先でも“快適に”クラウドゲームを楽しめる時代は、近いのかもしれない。

スケジュール KDDIでは2024年度以降に5G SAネットワークにおけるネットワークスライシングを順次提供する計画である

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