KDDIとソニーは9月20日、KDDIの商用5G SA(スタンドアロン)ネットワークにおいて、混雑環境下でゲームストリーミングに必要な通信品質を確保する実証実験に成功したことを発表した。5G SAならではのネットワーク機能である「ネットワークスライシング」(※1)を活用したといい、両社では人が多く集まるイベント会場でも「クラウドゲーム」(※2)を快適に楽しめる環境の構築に努めるという。
(※1)ネットワークリソースを論理的に分割(スライス)して、独立した複数のネットワークを構築する仕組み。要求される通信速度や機能に応じて複数のスライスを作ることで、他用途のスライスにおける混雑の影響を受けることなく安定した通信を行える
(※2)システムへの負荷が大きい描画(グラフィックス)の処理をサーバ(または遠隔地のゲーム機/PC)で行い、その結果を動画として端末(スマートフォンやPC)へと配信するゲーム
両社は2021年9月から継続的に5Gネットワークを活用したコンテンツサービスに関する実証実験を複数行っている。今回の実験も、その取り組みの延長線上にある。
今回の実験では、自宅を想定した実験施設に家庭用ゲーム機を置いた上で、混雑したイベント会場から5G SA対応スマホ(Xperia)でそのゲーム機へとau 5Gネットワークを介してアクセスする、という構成を取っている(家庭用ゲーム機側には評価用サーバを挟み込んでいる)。
クラウドゲームは描画の結果をストリーミング動画として配信するため、一定の通信速度が求められる。だからといって、レスポンスが悪化してしまう(応答が遅い)と、ジャンルによってはゲームプレイの快適性が大きく損なわれてしまう。ゆえに「速度と安定性を両立しなければならない」(KDDI 鶴田悟史氏)。
そこで今回は、通常通りの構成の5Gネットワーク構成に加えて、「ゲーム専用ネットワークスライス」を用意してネットワークスライシングの有効性も確かめたという。
実験に当たっては、操作信号と映像信号の“安定性”を5段階の「ゲーム体感レベル」として評価した。当たり前かもしれないが、ネットワークの混雑が激しい(≒在圏している端末が多い)ほど、レベルはどうしても低くなる。
しかし、ゲーム専用ネットワークスライスを経由して通信すると、周囲が混雑している場合でも安定してクラウドゲームを楽しめたという。
KDDIでは、2024年度から5G SAネットワークにおけるネットワークスライシングを段階的に提供する方針だ。外出先でも“快適に”クラウドゲームを楽しめる時代は、近いのかもしれない。
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