世界を変える5G

5G基地局と衛星通信地球局の電波干渉を抑圧 ソフトバンクと東京工業大学が試作装置を開発

» 2023年10月08日 15時50分 公開
[金子麟太郎ITmedia]

 ソフトバンクと東京工業大学 工学院 電気電子系 藤井輝也氏らの研究室は10月6日、「システム間連携与干渉キャンセラー」の試作装置を開発し、室内の疑似環境での実験に成功したと発表した。

 両者はソフトバンクに割り当てられている5Gの3.9GHz帯(Cバンド)の電波が、従来利用されている衛星通信の地球局の下り回線と同一周波数帯であり、電波干渉を与えることから、システム間連携与干渉キャンセラーの試作装置を開発した。

ソフトバンク SoftBank 衛星 基地局 地上局 電波干渉 システム間連携与干渉キャンセラー 電波 スマートフォン ITmedia アイティメディア ITmediaMobile 開発の背景を示す図

5G基地局と衛星通信地球局の下り回線の電波干渉を抑圧

 システム間連携与干渉キャンセラー装置を地球局に設置されている。地球局で受信した衛星信号と、その干渉となる5G基地局の下り回線の信号(以下、5G干渉信号)が混在している無線信号(以下、混在無線信号)を分岐させ、干渉キャンセラー装置に入力する。また、5G基地局の下り回線の送信信号を分岐させることで、一方は遅延装置を介して5G基地局から送信し、もう一方はDAS(分散型アンテナシステム)を活用して光ファイバーで干渉キャンセラー装置に転送する。

光ファイバーで転送した5G信号はレプリカ信号(またはカンニング信号)と呼称

 地球局の干渉キャンセラー装置は転送された5Gレプリカ信号を用いることで、混在無線信号内に含まれる5G干渉信号の大きさ(振幅)を検出できる。検出した5G干渉信号の振幅と、5Gレプリカ信号を干渉キャンセラー装置で重畳して、5G干渉信号と全く同じ大きさの5G信号(以下、5G干渉キャンセル信号)を生成し、それを混在無線信号に合成して差し引くことで、衛星信号だけを衛星通信無線装置に送信できるという。

ソフトバンク SoftBank 衛星 基地局 地上局 電波干渉 システム間連携与干渉キャンセラー 電波 スマートフォン ITmedia アイティメディア ITmediaMobile システム間連携与干渉キャンセラーのシステム構成

 なお、干渉キャンセラー装置は衛星通信アンテナと衛星通信無線装置をつなぐケーブルから分岐させて設置し、5G干渉キャンセル信号は混在無線信号に合成するため、衛星信号には触れることは一切ないという。

 また、5G干渉信号をキャンセルするためには、5Gレプリカ信号が5G干渉信号よりも早く干渉キャンセラー装置に到着する必要があるが、5G基地局から送信する5G信号はそのままでは光ファイバーで転送する5Gレプリカ信号よりも地球局へ早く到達するため、5G基地局に設置した遅延装置で5G干渉信号よりも5Gレプリカ信号の方が早く干渉キャンセラー装置に届くよう調整。衛星信号の到着時間を調整するような信号処理は加えていないという。

疑似衛星信号発生装置や疑似5G信号発生装置を利用した実験

 両者はシステム間連携与干渉キャンセラーの試作装置、疑似衛星信号発生装置、疑似5G信号発生装置を用いた実験を室内で行った。周波数や光ファイバーの長さは次の通りとなる。

  • 衛星信号の電波……3.9GHz帯で帯域幅が40MHz
  • 5G信号の電波……3.9GHz帯で帯域が100MHz
  • 光ファイバーの長さ……5km

 5G基地局の遅延装置を介して送信した5G干渉信号に、マルチパス干渉信号生成装置を用いることで、電力は等しく遅延時間が異なる干渉信号を3波生成。3波を合成した5G干渉信号の電力は衛星信号の電力よりも少し低くなるように設定したという。実験では干渉キャンセラーを適用することで、3波が合成された5G干渉信号の電力を雑音電力以下に低減し、衛星信号への干渉を抑圧できていることが分かったという。

ソフトバンク SoftBank 衛星 基地局 地上局 電波干渉 システム間連携与干渉キャンセラー 電波 スマートフォン ITmedia アイティメディア ITmediaMobile 室内実験の構成(上図)と伝搬遅延を考慮した5G干渉信号(下図)
ソフトバンク SoftBank 衛星 基地局 地上局 電波干渉 システム間連携与干渉キャンセラー 電波 スマートフォン ITmedia アイティメディア ITmediaMobile 実験による干渉キャンセル効果をスペクトルアナライザーで示した(干渉キャンセラーなし/ありの比較)

屋外での有用性も実証予定

 なお、このシステムの一部は2021年に国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の「Beyond 5G 研究開発促進事業」の委託研究課題として採択された、「移動通信3次元空間セル構成」の研究によるもの。

 今後、ソフトバンクはこの装置を活用するための無線局免許を申請し、屋外の実環境でその有効性を実証する予定だ。ソフトバンクと東京工業大学はこのシステムを用いた実証実験を行うとともに、実用化に向けた研究をさらに進めていくとしている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年09月05日 更新
  1. 楽天モバイルが「自動解約」を予告 11月末までに楽天ID連携しないと電話番号失効へ (2026年09月02日)
  2. スマホのメイン利用キャリアは「ドコモ」が圧倒、満足度トップは「povo」 MMDの調査より (2026年09月03日)
  3. スマホで久しぶりにワクワクさせられた「Galaxy Z Fold8」のカタチ パスポートサイズで完全に恋に落ちた (2026年09月03日)
  4. 横長の折りたたみ「Xiaomi 18 Fold」を中国発表へ 自社開発チップ搭載、折りたたみiPhone発表前に先手? (2026年09月03日)
  5. 「Galaxy Z Fold8」の極薄ボディーを実現した新技術「Flex Titanium」開発秘話 一方でトレードオフの機能も (2026年09月04日)
  6. WAON POINTやAEON Payのキャンペーンまとめ【9月4日最新版】 ポイント10〜20倍の獲得チャンス多数 (2026年09月04日)
  7. モトローラ初の横開き「razr fold」はなぜ生まれた? FeliCa搭載やIIJmio「10万円引き」の狙いを直撃 (2026年09月02日)
  8. 2.07型の大画面&最大20日連続使用できるスマートウォッチ「Amazfit Bip Max」、楽天市場で約1.7万円 (2026年09月04日)
  9. 光回線のバックアップにモバイル回線を――KDDIが新インターネットサービス「auひかりプラス」の提供を開始 ISPは3社から選択可(順次拡大予定) (2026年09月04日)
  10. 東京メトロ、空いている号車を床面に投影 シャープらと協力 千代田線北千住駅で (2026年09月03日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー