バリュープラスのラインアップを増やし、中容量プランのニーズに応えようとしているNUROモバイルだが、これとは対極にあるのが、同時に導入されたかけ放題ジャストだ。NUROモバイルは、2022年10月に完全音声定額と1GBのデータ容量をセットにした「かけ放題プラン」の提供を始めていたが、かけ放題ジャストは、このカテゴリーに入る料金プラン。1回あたりの通話時間を抑えた分、料金を安価にしている。
かけ放題プランは1870円なのに対し、かけ放題ジャストは「5分かけ放題プラン」が930円、「10分かけ放題プラン」が1320円。ベースとなっているのはバリュープラスで、先に挙げたバリューデータフリーやデータ繰り越しといったサービスにも対応している。バリュープラスにもオプションとして「通話定額オプション」が用意されているが、5分かけ放題をつけるとVSプランでも1282円になる。データ通信はあまり使わず、電話中心の連絡用にスマホを使うユーザーが料金を抑えるための料金プランといえる。
少ないデータ容量と音声通話定額を掛け合わせた料金プランには、一定のニーズがある。代表的なのは、「自由自在プラン」で100MB未満290円を打ち出したHISモバイルだろう。この290円プランに5分のかけ放題オプションをつけると、料金は790円に収まる。ただし、データ使用量が100MB以上になると、料金は1050円に上がる。両社の料金プランを比べると、100MB未満の場合はHISモバイル、100MB以上1GB以下の場合はNUROモバイルの方が安くなることが分かる。HISモバイルにはない、10分かけ放題プランが用意されているのも、NUROモバイルの魅力だ。
3G停波はソフトバンクが2024年1月、ドコモが2026年3月に控えているなか、音声通話中心だったユーザーの流動性が徐々に高まることが期待されている。特にドコモは停波までまだ2年以上の時間があり、3Gの契約者は多い。2023年3月時点で、FOMAの契約者数は912万2000契約。うち446万4000はIoTなどに使われる通信モジュールだが、それを除いても445万8000契約と規模が大きいことが分かる。各社とも、移行を促す料金プランや割引は用意しているものの、MVNOと比べるとどうしても料金は割高になる。
田中氏は「特にガラケーユーザーを狙ったわけではない」と言うが、実態として、データ容量はドコモの「はじめてスマホプラン」と同じ1GB。低価格な音声定額とのセットをアピールするHISモバイルも、3G停波を見越してデータ使用量が少ないユーザー向けのプランを拡充している。ドコモのエコノミーMVNOになったLIBMOも、5分かけ放題をセットした500MBで1100円の料金プランを導入している。NUROモバイルのかけ放題ジャストも、こうした料金プランに対抗する一環で導入されたと見ていいだろう。
ソフトバンクやドコモの停波に向け、3Gユーザーを巡る競争はさらに激化する可能性もある。一方で、いずれの料金プランも1000円前後で差が小さく、音声通話が無料になる時間もほぼ同じ。選択の際の決め手に欠けるのも事実だ。NUROモバイルがバリューデータフリーやデータ繰り越しなどで差別化を図ってきたように、今後、料金以外での特徴をどう出していくかはさらに重要になりそうだ。
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