10月6日に「OPPO Reno 10 Pro 5G」を発売したオウガ・ジャパン。同モデルは、ソフトバンクが取り扱う他、オープンマーケットモデルとしてOPPO自身でも販売する。同社独自の超急速充電技術となる「80W SUPERVOOCフラッシュチャージ」に対応しており、わずか28分間でフル充電が可能。ソフトバンク版は、2022年に発売されたXiaomiの「Xiaomi 12T Pro」に続き、2機種目の「神ジューデン」モデルとしてプロモーションされている。
バッテリー関連では最大容量の低下を抑え、4年間の長寿命を実現する「Battery Health Engine」に対応。ミッドハイモデルながら、カメラセンサーはハイエンドモデルに採用されることが多いソニー製の「IMX890」で、3200万画素の2倍望遠や800万画素の超広角カメラも備える。ミッドレンジ以上、ハイエンド未満のモデルとして、価格の割にスペックの高い1台といえる。これまでOPPOが日本市場に主力にしていた、Reno Aシリーズの上を行くモデルだ。
ここ数年、Reno Aシリーズと価格が安いエントリーモデルのAシリーズにラインアップを絞ってきたOPPOにとって、Reno 10 Pro 5Gは久々となるミッドハイのスマホになる。発表会では、ラインアップを拡大することも宣言した。当初はさまざまな端末を投入し、市場の反応を試していたかのように見えたOPPOだが、ここ数年、日本では売れ筋に集中していた。一方で、海外ではフォルダブルスマホも含め、ラインアップの幅は広く、日本での拡大を望む声もあった。では、なぜ同社はReno 10 Pro 5Gの投入やラインアップ拡大を決めたのか。オウガ・ジャパンで専務取締役を務める河野謙三氏に話を聞いた。
:―― OPPOには、さまざまなバリエーションの端末があります。今回、ラインアップ拡大にあたってReno 10 Pro 5Gをチョイスした理由を教えてください。ソフトバンクの販売もあるということで、5G導入時に取り扱っていた「OPPO Reno3 5G」の後継的な役割もあるのでしょうか。
河野氏 ソフトバンクという意味合いでは、おっしゃるように、Reno3 5Gというモデルを販売したことがあります。あれも非常にいい機種で、ミッドハイながら光学式手ブレ補正も入っていました。今回は、ソフトバンクに神ジューデンというセールスポイントがあり、そこに対応しています。一方で私どもも、お客さまのニーズ調査をしていました。このような調査は真のニーズを捉えることが重要で、お客さまが欲しいとは言っていないが、恐らく気付いていないだけのものがある。その中で一番大きかったのが、超急速充電でした。
OPPOは9年ほど前からVOOCという技術があり、現在はSUPERVOOCに進化し、技術としては最大250Wの急速充電ができます。このSUPERVOOCを活用し、お客さまが気付いていないニーズにどうアプローチしていけばいいかを悩んでいました。そんな私どもと(神ジューデンのラインアップを増やしている)ソフトバンクのニーズが一致する形で、Reno 10 Pro 5Gの導入が決まりました。
―― SUPERVOOC対応モデルとしてReno 10 Pro 5Gを導入したということですが、その機能を販売好調なReno Aシリーズに入れて訴求する手もあったと思います。
河野氏 日本専売モデルのReno Aシリーズにも、超急速充電ではありませんが、18Wの急速充電が入っています。しかしながら、こちらはSUPERVOOCではなく急速充電どまりです。今回、80WのSUPERVOOC対応の第1弾としてReno 10 Pro 5Gを投入したのは……先に言ってしまうと、今後、日本市場にフィーチャーした機種を出していきますが、その新商品においても、超急速充電を活用することを予定しています。これは経営戦略そのものなので、どこまで申し上げるかは迷っていましたが、製品ポートフォリオの組み直しをする中、今後、超急速充電はしっかり投入していきたいと考えています。
―― SUPERVOOCは独自技術で、専用の充電器も必要になります。その意味だと、対応端末が増えていた方が、アクセサリーも広がりやすいですよね。
河野氏 共通仕様の端末が増えればいいというのはまさにその通りです。SUPERVOOCには私どもの独自技術や特許も活用しています。発表会では申し上げられませんでしたが、電源メーカーやバッテリーメーカーにもライセンス供給という形で活用していただければと考えています。
―― もう1つのバッテリー関連技術にBattery Health Engineがあり、バッテリーの最大容量をある程度維持できるとしています。これはどのようなことをしているのでしょうか。
河野氏 Battery Health Engineは3年かけて研究してきた技術の集大成で、より安全に、かつより長寿命になるようにしています。やっていることは、大きく2つに分かれます。リチウムイオンバッテリーは充放電をする際に、リチウムのイオンがマイナスからプラスに、プラスからマイナスに動きます。なぜ充電すると容量が減ってしまうかというと、繰り返し充放電をすると、マイナス極に移ったイオンがプラス極に戻れなくなり、それが堆積してくるからです。そうなると、バッテリーの最大容量が減ってしまいます。これは、どのメーカーでも同じです。
ここでBattery Health Engineが何をしているかというと、マイナス極側の電位をリアルタイムで監視しています。リアルタイムに監視することで、リチウムイオンが劣化しづらいように充電できます。例えば温度が急激に高くなったり、負荷が高かったりする状態を感知して、充電速度を意図的に落とすというようなことをやっています。イメージ的には、Battery Health Engineは医者のようなもので、風邪をひかないよう、予防するのが大きな特徴です。
もう1つがSEI(Solid Electrolyte Interphase)と呼ばれるリチウムイオンの中の被膜です。リチウムイオンでは、このSEIが電極に付く。この厚みが薄いとバッテリーの劣化が早まることがありますが、厚すぎると容量が減ってしまいます。われわれは、リチウムイオンバッテリーを合成する際の式も、他社と変えていて、SEIの凹凸をなるべく減らし、皮膜の厚みを制御するようにしています。イメージとしては、ヘタレないバッテリーを自ら作るようなことをやっています。そうすることで、充放電を繰り返した際にバッテリーが受けるダメージを減らせます。先ほどの医者の例えで言えば、そもそも風邪をひかないために免疫を高めるようなものです。
その結果として、今までは800回の充放電で80%まで容量が減っていましたが、これが1600回に増えたデータが出ています。これは、中国国内の第三者機関に出して取ったデータです。また、私どものVOOCには4億を超えるユーザーがいるので、同意をいただいたうえでデータを集め、Battery Health Engineの基礎研究もしています。今SEIのお話をしましたが、あれを完全に制御できれば完璧なリチウムイオンバッテリーになります。ただ、実はメカニズムは解明されていないのです。その中で、OPPOはビッグデータを使い、恐らくこういうことが起こっているからこういう打ち手を取れるという形で実装しています。
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