それ以上にインパクトが大きいのは、キャリアやMVNOの価格設定だ。冒頭で述べたように、razr 40はオープンマーケットモデルだが、MVNOではIIJmioが独占的に販売を行う。同社での通常価格は11万2000円だが、2024年1月31日までは期間限定割引で9万5800円に値下げされている。一括価格で10万円を切ったというわけだ。さらに、IIJmioにMNPした場合、1万6000円の割引が追加され、価格は7万9800円まで下がる。回線契約込みではあるものの、価格の安さが話題になった海外版に近い価格設定を実現した。
IIJmioは、モトローラのフォルダブルスマホを戦略的に展開しており、razr 40 ultraも、モトローラ公式価格より値引きして販売。発売直後のハイエンドフォルダブルスマホがMNPで10万9800円になる影響は大きく、入荷のたびに完売を繰り返してきた。IIJの執行役員 MVNO事業部長 矢吹重雄氏は、当時の説明会で「モトローラと一緒に折りたたみスマホのマーケットを開拓するという強い意志を持って販売する」とコメント。その狙いが当たった格好だ。razr 40の独占販売も、その延長線上にあるとみていいだろう。
対するソフトバンクも、razr 40sの販売には前のめりだ。razr 40にはない「サマーライラック」をカラーにそろえ、本体価格もモトローラ公式より安い12万1680円に設定。MNPでソフトバンクに移った場合や、5歳以上22歳以下のユーザーが新規契約した場合には、端末購入補助の上限である2万2000円の割引を受けられる。この割引を加味した場合の価格は9万9680円。あくまで割引前提の価格設定にはなるが、こちらも10万円を下回っている。
それ以上に衝撃的なのが、「新トクするサポート」を利用した時だ。新トクするサポートは、48回の分割払いの後半24回を端末の下取りで免除するアップグレードプログラム。これを適用し、MNPや22歳以下が新規契約した際の“実質価格”は9840円まで下がる。スペック的にはミッドレンジモデルに近いとはいえ、フォルダブルスマホの新製品が実質1万円以下で販売されるのは前代未聞。しかも3月31日まで開催される「motorola razr 40s ガチャキャンペーン」を併用すると、最低でも3000円相当のPayPayポイントがプレゼントされる。1万ポイントの2等以上が当たれば、実質価格はマイナスになってしまう。
48分割中24回を免除した実質価格とはいえ、単純計算だとMNPでも実質5万円以下にしかならない。1万円以下を実現した背景には、新トクするサポートのカラクリがある。ソフトバンクは、一部モデルで前半24回分の分割支払金を大幅に下げ、その分を後半24回に乗せている。これによって、端末の下取りで免除される金額が、単純な48分割より大きくなる。他社の残価設定型アップグレードプログラムに近い形だが、その軽重のつけ方を大胆にしているところが特徴。razr 40sも、前半24回が月410円なのに対し、後半24回は月3744円に支払額が跳ね上がる。2年間できっちり機種変更していけば、お得になる仕組みといえる。
また、機種変更や23歳以上の新規契約の場合でも、新トクするサポートを使えば2年間の実質価格は3万1824円まで下がる。フォルダブルスマホに何となく興味があったものの、その価格の高さで購入を見送っていたユーザーに対してアピールするには十分な価格設定といえる。
ソフトバンクのモバイル事業推進本部 本部長の郷司雅通氏によると、フォルダブルスマホの不安要素として「端末代金が高い」を挙げていた人は48%にも上る。そのハードルを大きく下げ、普及を後押しするために設定したのがrazr 40sの価格設定というわけだ。郷司氏も、「10万円を切る価格で投入し、フォルダブルスマホを一気に普及させたい」と意気込みを語っている。
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