モトローラとソフトバンクの強力なタッグは、価格だけにとどまらない。razr 40sの導入に伴い、サポート体制も拡充した。特に、フォルダブルスマホは可動部が一般的なスマホより多く、メインディスプレイも柔らかいため、故障の心配がつきまとう。もちろん、メーカー側では折り曲げなどの試験は行っているが、ディスプレイ保護のためにつけているフィルムにクセがついて折り目が目立つようになるなど、フォルダブルスマホならではの劣化要因も存在する。ソフトバンクのアンケートでも、28%が「壊れやすそう」と回答した。
こうした不安にこたえるため、ソフトバンクはrazr 40sを「あんしん保証パックネクスト」に指定している。あんしん保証パックネクストは、特定のモデルにだけ対応した保証サービス。スマホ修理業者のiCrackedと連携しており、全国にある店舗で即日修理を受けられる。データの初期化等も不要なため、ユーザーにとって手軽な修理といえる。現時点ではGoogleのPixelシリーズと、シャープのAQUOSシリーズのみの対応になっているが、ここにrazr 40sが加わる。月額990円だが、正規の部品を使った修理が年2回まで無料になる安心感は大きい。高額になりがちなフォルダブルスマホの修理代を抑えられるのは、ソフトバンクで端末を購入する動機になる。
iCrackedでは、この対応を機にモトローラ端末の修理を開始する。ソフトバンクのrazr 40sだけでなく、オープンマーケット版のrazr 40やrazr 40 ultraに加え、ストレート型の「motorola edge 40」「moto g53j」も修理可能なモデルに挙げられている。
同様の店頭修理はドコモが「Galaxyリペアコーナー」を展開しているが、対応するショップはまだ少ない。オープンマーケット版やドコモ以外のキャリア版Galaxyだと、その場所は「Galaxy Harajuku」に限定されてしまう。これに対し、iCrackedは全国92店舗で、都市部以外にも広がっている。「いざというときの安心感」を提供するうえで、モトローラがこの店舗網を利用できる影響は大きい。
その意味で、razr 40/40sは本体のスペック以上に、販売方法やサポート体制での進化にも注目すべき端末といえるかもしれない。モトローラのスマホは「3機種(razr 40 ultra、edge 40、moto g53y)に活躍してもらったおかげで、出荷台数が2022年と比べて倍ほどになっている」(松原氏)と急成長を遂げている。razr 40/40sの投入や、サポート体制を強化したことで、その勢いに拍車を掛けられる可能性も高まってきた。ドコモやKDDIなどに取り扱いが広がれば、さらなる成長も実現できそうだ。
一方で、年末に予定されている電気通信事業法施行規則等の改正は、同社にとっての不安要素になりうる。同改正は「4万4000円」の上限がフィーチャーされることが多いが、同時に、回線契約を伴う際の端末単体割引にも規制がかかるからだ。現状では、新トクするサポートの下取り額がいくら大きくなっても、端末単体割引と見なされるためおとがめはない。改正後は、一般的な下取り額との差分が割引と見なされる可能性が高くなる。
下取りとはいえ、2年前の端末の9万円近い残債を免除するまかりならないというわけだ。改正されたガイドラインの下では、ソフトバンクも価格設定の見直しが必至。razr 40sも実質値上げになる恐れがあるだけに、フォルダブルスマホ普及の起爆剤になるかは未知数の部分も少なくない。
【訂正:2023年12月25日13時10分 初出時、電気通信事業法を改正する旨を記載していましたが、正しくは「電気通信事業法施行規則等の改正」なので、該当箇所を修正いたしました。】
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