PayPayが個人間送金の施策を強化する。
1つが、お年玉をキャッシュレス(PayPay)で送金させる施策だ。これに関連し、PayPay専用のポチ袋で500円以上のお年玉を送金すると、送る側と受け取る側両方に、最大1万ポイントが当たるキャンペーン「お年玉くじ」を2023年12月21日から2024年1月14日まで実施する。
さらに、銀行口座に出金できるPayPayマネーを送付できる機能を12月から搭載している。これまで、PayPayでは、出金できないPayPayマネーライトを優先して送金する仕組みになっていたが、今回の改定により、出金できるPayPayマネーを確実に受け取れるようになる。なお、PayPayマネーを送る、または受け取る場合は、eKYCによる本人確認が必須となる。
では、なぜPayPayはこのタイミングで送金の施策を強化するのか。同社は12月21日に説明会を開催し、PayPay 執行役員 マーケティング戦略本部長の藤井博文氏が説明した。
PayPayのユーザー数(アカウント登録済みのユーザー数)は2023年12月で6100万人に達し、PayPayカードを合わせた決済取扱高は2022年度に10.2兆円まで成長している。スマートフォンのユーザーは約9600万人(総務省の統計による)のため、PayPayをまだ使っていないユーザーは3500万人だといえる。
この3500万人にPayPayを使ってもらうための「ラストピース」になるのが個人間送金だと藤井氏は言う。個人間送金はコミュニケーションの一環で行われるものなので、PayPayユーザー間で加速度的に広まることが期待される。例えば忘年会やプレゼントの代金を割り勘するのにPayPayを使うとなると、これまでPayPayを使ったことがない人に使ってもらうきっかけになる。
PayPayユーザーの中には「1000万を超えるような強い推奨者がいる」(藤井氏)ことから、こうしたユーザーがPayPay未利用者の背中を押してもらうことを同氏は期待する。決済を使わず、送金のみを利用している人も多いそうで、「入口として重要だと捉えている」と藤井氏。PayPay上に送金されたお金は出金または決済する必要があるので、送金をきっかけに使うという流れができる。実際、PayPayで送金した人は、決済の使用率が高いというデータも出ているそうだ。
これまで、個人間送金に関連したキャンペーンは積極的には行っていなかったが、今後は「マーケティング要素を入れて伸ばしていくステージに来ている」と藤井氏は言う。
PayPay調べによると、個人間のお金のやりとりは、現金が半数以上で最多だが、PayPayは現金に次ぐ30%を占める。コード決済に限ってみると、個人間送金ではPayPayを使う人が92%を占める。PayPayのユーザー数が多いことから、個人間送金でも高いシェアを獲得できていると藤井氏は胸を張る。
PayPayを使った送金の用途は、生活費の送付、仕送り、お小遣いが多く、年間での送付金額はそれぞれで0.3兆円に達している。特に飲食代については現金に匹敵するほど伸びており、PayPayの送金は割り勘に適していることがうかがえる。PayPayで送金するメリットは、いつでもどこでもチャージして送金できること、1円単位で会わずに送金できること、履歴が残るので回収漏れを防げることなどが挙がる。
割り勘を便利にできるよう、グループ支払い機能を提供。グループのメンバーごとに支払金額を設定できる他、誰が支払っているかが分かるので、受け取り漏れを防げる。お小遣いの用途を想定し、設定した日に、決まった金額を自動で送付する機能も用意している。
一方、個人間送金で懸念されるのが、フィッシング詐欺などによる不正送金だ。PayPay上でやりとりがないユーザーから請求が来た際には警告メッセージを掲出し、送金時に注意喚起を行ってきたが、2023年11月からは、過去の利用状況などが一定の基準を超えたとシステムが検知したユーザーに送金する場合、「詐欺にご注意ください」という警告メッセージを掲出している。また、PayPayマネーを送る、受け取る際は本人確認が必要なので、そこもセキュリティの担保になる。
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