Pixel Foldは横折り型に新風を吹き込んだスマホだったが、その元祖ともいえるサムスン電子は、7月に初となる韓国・ソウルで製品お披露目イベントの「UNPACKED」を開催。ヒンジを刷新し、閉じた際の隙間をほぼなくすと同時に、薄型化・軽量化を果たした「Galaxy Z Fold5」を発表した。同じ機構のヒンジを備えた「Galaxy Z Flip5」は、外側に搭載されるカバーディスプレイを3.4型まで拡大。閉じたときの視認性や操作性を大きく向上させた。
開くとコンパクトなタブレットに近いサイズ感になる横折り型のフォルダブルスマホに対し、縦折り型のフリップ型端末は小さくたたんで持ち運べるだけで、それ以上の価値を訴求しづらかった。これに対し、Galaxy Z Flip5は、カバーディスプレイの大型化により、閉じたままでも小型のスマホとして利用可能。カバーディスプレイで開けるアプリに制約があるのは残念だが、フリップ型の新たな利用スタイルを明確に打ち出した。
フリップ型のフォルダブルスマホで先行していたモトローラも、やはり外側に搭載されるアウトディスプレイの拡大にかじを切った。「motorola razr 40 ultra」が、それだ。同機のアウトディスプレイはGalaxy Z Flip5より0.2型大きく、カメラの横までせり出した形状が特徴的。インストールしたアプリのほとんどを閉じたままでも起動でき、Galaxy Z Flip5より幅広い操作を可能にしている。日本では発売が遅れてほぼ同時期になってしまったが、発表の早さでもGalaxy Z Flip5を先駆けた格好だ。
フラグシップのフリップ型フォルダブルスマホが、閉じたままでの利用スタイルを打ち出した一方で、2023年はそのバリエーションも広がった1年だった。“フォルダブルスマホの民主化”が進んだというわけだ。この動きをリードしたのも、モトローラだ。同社は、razr 40 ultraに続き、廉価モデルの「motorola razr 40」「motorola razr 40s」を発表。後者のrazr 40sはrazr 40のソフトバンク版という位置付けで、発売直後からMNPで実質1万円以下の格安価格を打ち出し、大きな話題を集めた。
razr 40/40sは、プロセッサにミッドレンジ向けの「Snapdragon 7 Gen 1」を採用。アウトディスプレイも3.6型のrazr 40 ultraと比べると小さく、表示できる情報は部分的だが、フォルダブルスマホでありながら、本体価格を12万円台に抑えている。MVNOではIIJが独占的に販売し、一括価格で9万5800円を実現した。ここまで価格が落ちてくれば、通常のハイエンドモデルを手にする感覚で購入できる。フォルダブルスマホが気になっていたものの、価格で二の足を踏んでいた人の背中を押す効果もあるはずだ。
また、ソフトバンクやモトローラは修理業者のiCrackedと提携。razr 40 ultraやrazr 40/40sを含むモトローラスマホの即日修理に対応した。razr 40sの場合、ソフトバンクが提供する「あんしん保証パックネクスト」に加入していれば、年2回までの修理が無料になる。フォルダブルスマホは可動部が多く、落下時などの破損の心配が付きまとうだけに、こうした不安を解消できるのはうれしい。その意味では、端末の多様化だけでなく、サービスも深化した1年だったといえる。
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