ITmedia Mobileでは、2023年を代表するスマートフォンを決定する「スマートフォン・オブ・ザ・イヤー2023」を開催しました。
審査の対象となるのは、2023年1月1日から2023年12月中旬までに発売したスマートフォン。審査員がそれぞれ5機種を推薦し、その中で票が多く集まった10機種をノミネート機種として選定しました。2023年は「ハイエンド部門」と「ミッドレンジ部門」に分け、各部門で5機種ずつ(計10機種)、最終的に各部門で1機種(計2機種)を選定します。
2023年の審査員は、ITmediaなどで活躍し、1年間を通じて携帯電話業界を取材してきた石川温氏、石野純也氏、太田百合子氏、佐野正弘氏、島徹氏、房野麻子氏、村元正剛氏、山根康宏氏(五十音順)の8人とITmedia Mobile編集部です。今回は、審査員が推薦した5機種とその理由を紹介します。
・推薦機種(ハイエンド)……iPhone 15 Pro、Pixel 8 Pro、Xiaomi 13T Pro
・推薦機種(ミッドレンジ)……AQUOS sense8、TORQUE G06
「Pixel 8 Pro」は、従来のAI関連機能に加えて、「Feature Drop」の動画ブーストなど、クラウド処理の機能を利用できるなど、スマホでグーグルのAI関連サービスをいち早く利用できる機種として評価しました。もちろん、動画ブーストも処理に現状かなり時間がかかったり、「Gemini(ジェミニ)」を含むチャットの日本向けの機能強化が後回しになっていたりと、気になる部分もあります。とはいえ、AI周りのクラウド処理のリソースを全ての人に解放するのは難しいでしょうし、機種を絞ったうえでの提供は新しい形として理解できます。
「iPhone 15 Pro」は、USB Type-C(USB 3.1 Gen2)を介したSSDや映像出力などに対応しただけでなく、発売と同時期に「Blackmagic Camera」アプリが加わったことに注目していました。活用するうえで工夫は必要になりますが、シネマ撮影スマホとして、一定の完成の域に達した点に驚かされました。久々に重量級ではないハイエンドモデルでもあり、普段使いも便利になっています。
「Xiaomi 13T Pro」は、高コスパのハイエンドモデルとして、最新のiPhoneやクアルコム製最上位チップのAndroidに真っ向から対抗できるものがようやく出てきたと評価しています。MediaTekの最新ハイエンドチップ「Dimensity 9200+」を搭載していて、かつ価格が10万前後。キャリアだとさらに安かったので、私は発売直後から試しました。今のところ、性能面はトップクラス相当ですし、実際に高画質ゲームアプリも快適に動作しています。バッテリーの持ちも良好です。総務省が提示した新しい割引規制を踏まえたときに、8万円前後で手が届くモデルとしても魅力的だと感じます。
「AQUOS sense8」は、完成度が高かった前機種「sense7」と比べると差分は少ないです。しかし、価格は抑えつつも、新搭載のSoCである「Snapdragon 6 Gen1」の性能が比較的良かったり、従来機種の不満点だった指紋認証も電源キーに一体化されていたり、と堅実な改良が目立ちます。sense7を買ったり勧めたりする人としては、悔しくなる出来でしたね。
「TORQUE G06」は、シリーズのこれまでの傾向を踏まえて性能控えめで中途半端な価格に落ち着くかと思いきや、10万円内でチップにSnapdragon 7 Gen1を採用するなど、機能面を充実させる判断をしてきたことに驚きました。これによって普段使いの動作がより快適になり、数年単位の利用も考えられるモデルになっています。新しい割引規制や、2台持ちという話題にのっかったモデルだと感じました。
・推薦機種(ハイエンド)……motorola razr 40 ultra、iPhone 15 Pro Max、Pixel 8 Pro、Xperia 1 V
・推薦機種(ミッドレンジ)……AQUOS sense8
AQUOS sense8は、ミッドレンジモデルとして完成度が高かったと思います。最近のsenseシリーズはパッとしていなかった印象があったのですが、今年(2023年)はよかったですね。
ハイエンドに関しては、まず「motorola razr 40 ultra」にモトローラの本気を感じました。これまでも折りたたみをやっていましたが、今回はデザインも洗練されて、サムスンを驚かすような発売タイミングもよかったです。
「iPhone 15 Pro Max」は、カメラ周りの進化を評価しています。あのような機構を搭載しながらも、Androidだと厚くなりそうなところを、従来通りのデザインを維持してきたのはインパクトが大きかった。あとは、USB Type-Cがやたらと注目されていたのもよかったかなと。
Pixel 8 Proに関しては、これまで通りAI機能に注力している他、最新のAI機能を体験できるデバイスとしての役割も備えて、競争軸を「AI」に向けてきましたね。今年の象徴的な端末だったと思いますし、来年(2024年)以降、面白くなるのではないかとも思っています。
「Xperia 1 V」に関しては、目立ってはいませんでしたが、個人的に使ってみると、新しいセンサーになっていたり、ようやくデジカメにつなげられるようになっていたり、と進化を感じます。これまでは熱の処理がダメなことが多かったですが、ようやくまともに使えるようになったところを評価しました。
・推薦機種(ハイエンド)……motorola razr 40 ultra、Pixel 8 Pro、iPhone 15 Pro
・推薦機種(ミッドレンジ)……AQUOS sense8、TORQUE G06
今年(2023年)のハイエンドはどれも完成度が高くて、ギリギリまで悩みました。石川さんのお話にも出てきたように、各シリーズのウイークポイントだった部分がきっちり改善されているような印象を受けました。
モトローラに関しては、会社として前のめりで、いい端末を出していたと思います。縦折りの折りたたみについても、チップセットやおサイフケータイはGalaxyの方がいいのですが、実は使い方としてサブディスプレイでできることはmotorola razr 40 ultraの方が多い。たたむとコンパクトスマホとして使えて、開くと大きい画面も使えるという「横折り」に近いような体験が実現している点を評価しました。フォルダブルだからこそ必要な「防塵(じん)」に力を入れていたこともいいと思います。
Pixel 8 Proは、カメラの性能や「編集マジック」のような機能もすごいですが、やはり競争軸がAIになって「Gemini」に期待するところが大きいです。日本版ではまだ使えないですけれど、おそらく来年(2024年)以降は、AIで何ができるかという視点になってきて、そこに先行するスマホとして面白い。値段は高めですが、動画のノイズを低減するような最新のAI機能が使えるのも、最新上位モデルだけでしたので、相応の付加価値はある気がします。
iPhone 15 Proは、もちろんUSB Type-Cに統一されたこともうれしいのですが、私としてはチタニウムを採用したことを評価しています。キャンプ道具とかでもチタン製のものはグッと価格上がるんですよ。でも、iPhoneだとそんなに上がっていませんでしたし、重さも軽くなっていました。上位の「iPhone 15 Pro Max」の方が5倍ズームを備えているのですが、私にとっては、ややToo Much(トゥーマッチ)でして、カメラの切り替えが使いにくく感じます。そういう点もあって、スタンダードの方を挙げました。
コストパフォーマンスの高いモデルとしては、AQUOS sense8と「Pixel 7a」で悩みました。ただ、今回は、従来機種では別々だった電源ボタンと指紋認証が一緒になって使いやすくなっていたり、ライカと組んだ成果だと思いますが、カメラの性能・機能がよくなっていたりする点を評価して、AQUOS sense8の方を挙げました。お買い得な印象もありますし、海外へ進出する日本メーカーを応援したいという意味もこめて。
「TORQUE G06」は出てくれただけで御の字でした(笑)。京セラがコンシューマー事業から撤退するという報道が出たときには、「もうTORQUE出ないのかな?」と思った方も多かったと思うのですが、無事に発売されましたね。私はダイビングが趣味なので、周りには使っているユーザーも多いです。高耐久なのはもちろんですが、バッテリーが外せて予備バッテリーを持ち歩けるので、充電のままならないアウトドアシーンでも安心できる貴重な端末です。今後も出し続けてほしいという気持ちも込めています。
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