達人が選ぶ「2023年を代表するスマホ5機種」:スマートフォン・オブ・ザ・イヤー2023(3/3 ページ)

» 2023年12月28日 10時47分 公開
[井上晃ITmedia]
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石野氏:motorola razr 40sはフォルダブルの普及に一役買った

・推薦機種(ハイエンド)……iPhone 15 Pro、Pixel 8、Galaxy Z Flip5
・推薦機種(ミッドレンジ)……motorola razr 40/40s、Pixel 7a

スマートフォン・オブ・ザ・イヤー 石野純也氏

 この1年で業界にインパクトを与えた端末という意味では、まず「iPhone 15 Pro」ですね。チタニウムやUSB Type-Cを採用して、カメラも刷新しました。「Pro」か「Pro Max」かで悩みましたが、Proは軽くなっている反面、Pro Maxはカメラが重くなったせいかまだ若干重いという印象がありました。また、望遠カメラのテトラプリズムも技術的にはすごいのですが、3倍とかを抜かしていきなりズームの倍率を上げ過ぎているなど、使い勝手が気になりました。そういった理由で、今回は前者を選んでいます。

 次に、生成AIスマホとして「Pixel」シリーズも外せません。これも無印とProと、どちらにするか悩んだのですが、自分がソフトバンクで格安に手に入れたのもPixel 8でしたし、各社が競い合うようにPixel 8を値下げしているのも、そのくらい力の入った端末だったのかなと。端末としても、コンパクトに整えていて、日本市場のニーズを取り入れた印象も強い。バランスがよく、生成AIも楽しめるという意味でPixel 8を入れました。一方のPixel 8 Proは、相変わらずカメラのズームがすごいなど魅力はあるのですが、ちょっと大きいすぎるのと、価格面で手が出しづらい。搭載するチップは同じなのに、Feature Dropで「Pro」にだけ、一部機能を提供して差別化しているのは少し残念ですね。

 フォルダブルも次のトレンドとして確定だとは思います。ただし、僕は横折りの方が好きなのですが、今年(2023年)の「Galaxy Z Fold5」は、ちょっとそれはないだろう……と思うくらいアップデートが少なかった。隙間がなくなった、軽くなった、チップが変わった、くらいでしたよね。ちょっと停滞している気がします。次にノミネートさせるならSペンを内蔵させるくらいの進化が欲しいですね。

 反対に今年はGalaxy Z Flip5が頑張っていて、一気にディスプレイサイズが大きくなって、隙間もなくなりました。サブディスプレイで使えるアプリケーションを解放しないのは慎重すぎるのでは、とも思いましたが、端末としての完成度は高かった。サムスンも毎年2機種に全力投球できないでしょうから、今年はFlipの年で、来年(2024年)はFoldの年なのかな、と予想しています。ちなみに、競合のmotorola razr ultraはおサイフケータイなども対応していないですし、ちょっと日本ではおすすめしづらい端末になっているかなと思って、ハイエンド部門からは外しました。

スマートフォン・オブ・ザ・イヤー 2023年は「Galaxy Z Flip5」をはじめ、縦型折りたたみスマートフォンの進化が目立った

 一方で、ミッドレンジの「motorola razr 40/40s」は、どちらかというと「40s」の方ですね。買い方によっては、実質1万円台くらいで入手できるなど、価格面でのインパクトがすごかった。“フォルダブルの民主化”が一気に進むのでは、と感じました。これは来たなと。(改正省令を前にした)ソフトバンクの駆け込み・投げ売りニーズと、モトローラの安価な端末提供とがマッチして、この値段だったら手を出してみようか、と思う人も増えるのではないでしょうか。

 Pixel 7aは、Pixel 8シリーズが出た今となっては、Tensorの世代が1つ古いとはいえ、それでもスペックはかなり高いです。カメラもセンサーは「Pixel 7」と比べると少し劣りますが、AIのパワーで画質はほぼ同じような状態にできる。この値段でこの質ならいいなと思えました。あとは、Pixel 8からは適正な“レート”に変わってしまったので、ある意味でPixel 7aは最後の“Googleレート”の端末でしたよね。ドコモのための「n79」の周波数帯に対応したことをみても、かつてiPhoneが3大キャリアで扱われるようになったときのような勢いを感じて、「Pixel競争」時代の到来をほうふつとさせました。そういう意味で、23年を象徴する端末だったのではないかと思います。

房野氏:Xiaomi 13TにはXiaomiの日本市場での本気度を感じた

・推薦機種(ハイエンド)……iPhone 15 Pro Max、Pixel 8
・推薦機種(ミッドレンジ)……Xiaomi 13T、OPPO Reno 10 Pro 5G、motorola razr 40/40s

スマートフォン・オブ・ザ・イヤー 房野麻子氏

 もうトレンドについては語り尽くされたような気もしますが(苦笑)、ハイエンドについては、全体的に機能が行き着くところまでいったかな、と思っています。その中でも変化を感じたものを挙げました。

 「iPhone 15 Pro Max」は、厚みをさほど変えずに光学5倍を実現したテトラプリズムの望遠カメラが、競合他社とは違う路線というところで評価したい。焦点距離を3種類から選択できるとか、「空間ビデオ」を撮影できるのも面白い。USB Type-Cやアクションボタンの搭載など、何とかして変えようとしている姿勢が感じられました。

 Pixel 8は、AIの力をバリバリと使っていて、いち早くここに注目していたGoogleの凄さを再認識しました。来年(2024年)は今以上にAIの話題が増えそうですが、いち早くAIの恩恵を楽しめるという点で挙げています。Pixel 8を選んだのは、小型化が進んで、Pixel 8 Proと差別化できていたのがよかったと感じたから。ただ、24年に「Pixel 8a」が出てきたときに、そちらの方がコスパいいじゃんという話になりかねないのは、少し気になりますね。

 ミッドレンジについては、フラグシップ並みの満足感がある機種が増えてきた印象です。今回は、そういう端末を挙げました。例えば、Xiaomiは「Xiaomi 13T」かXiaomi 13T Proで悩みましたが、買いやすさの面を評価して、前者を選びました。また、本国の発表があった翌日に、日本での発売についても発表するなど、日本市場での本気度を感じました。もっと評価されてもいい端末ではないかな、と思っています。

 「OPPO Reno 10 Pro 5G」は、ソフトバンクの力もあると思いますが、安く買える端末になっていて、デザインと操作性のバランスが良かったです。

 motorola razr 40/40sも、本体価格が10万円台前半くらいで安かった。私はフォルダブルの必要性を感じていなかったので、これまでこの手の機種をおすすめしてきませんでしたが、今回については、このくらいの値段だったら買ってみてもいいかな、と思えた自分がおりました。そういう意味で選びました。

スマートフォン・オブ・ザ・イヤー motorola razr 40/40sは、お手頃価格の折りたたみスマートフォンとして注目を集めた

 何というか、総じて端末価格を工夫してくれたキャリアさんをノミネートしてあげたいくらいの1年だったと思います。

ITmedia Mobile編集部:GoogleがPixel Foldを出したことの意義を評価したい

・推薦機種(ハイエンド)……iPhone 15 Pro、Pixel 8、Pixel Fold
・推薦機種(ミッドレンジ)……AQUOS sense8、motorola razr 40/40s

 編集部では、「読者の関心を集めた」というメディアとしての視点もあわせて評価しました。トレンドとしては、ハエインドとミッドレンジの二極化はこれまでもあった傾向でしたが、23年はその隙間を埋めるような機種が増えました。皆さんが出された機種を見ても、ミッドハイの機種が多いですよね。円安の影響で20万円前後の上位モデルが買いづらくなって、それでも機能を妥協したくないというニーズがあって、メーカーが試行錯誤した結果だったと思います。

 iPhoneについては、iPhone 15 Proを選びました。チタニウムになって軽くなって、普段使いしやすくなっています。カメラもポートレートモードが撮影後に適用できるようになって、人物撮影が楽しくなったところを評価しています。一方で、iPhone 15 Pro Maxの5倍ズームは、競合と比べて解像感がそこまでよくないこともあって、あまり評価していません。

 Pixelは、サイズ感を考えると、日本ではPixel 8の方を好まれることが多いということで、スタンダードの方をチョイスしました。また、フォルダブルについては、デバイスの完成度としては、Galaxyの方が高いですが、今年(2023年)はGoogleが出したという点を評価して「Pixel Fold」を挙げました。フォルダブル向けアプリの開発もGoogleが主導していますし、このあたりのエコシステムの拡大に貢献するだろうという期待、そして後継機がブラッシュアップされていくであろう期待を込めています。

スマートフォン・オブ・ザ・イヤー 折りたたみスマホのエコシステム拡大において、意義があると感じた「Pixel Fold」

 ミッドレンジとしては、AQUOS sense8がやはり外せません。150g台の軽さは特筆すべきですし、昨今のスマホとしては珍しく金属ボディーを採用しています。もちろん、ワイヤレス充電に対応していないというトレードオフはありますが、素材・質感のよさが評価できます。Pixel 7aシリーズを意識したであろう戦略的な価格設定も魅力的でした。

 AQUOS sense8はmicroSDスロットやイヤフォンジャックなど、海外メーカーが捨てがちな部分も残っていますし、「これが無くて困る」点がない印象です。そこからさらにカメラの性能面を上げてきて、夜景撮影も破綻していない。ドコモの販売ランキングなどをみても、販売してから1カ月間はiPhoneを抑えて1位になっていて、ユーザーの支持も得ています。まさに隙がなく、今年を代表する1台だと思います。

 motorola razr 40/40sは、メーカーとしては「プレミアムモデル」という位置付けをしているように、一見ハイエンドかと思えるのですが、今回の区分ではどちらかというとミッドレンジなんですよね。最初に言いましたが、このようにハイ・ミッドでのシンプルな区分けが難しくなってきた印象があります。さて、本機は、値段のインパクトがあって、折りたたみスマホを一般ユーザーに浸透させるための端末という位置付けが大きかったと思います。また、「ultra」は海外仕様のままでしたが、「40/40s」はしっかり日本向けに仕様を調整していて、おサイフケータイなども対応していました。こうした点を評価しています。

ハイエンド部門とミッドレンジ部門で各5機種がノミネート

 審査員が選んだ5機種を集計し、ハイエンド部門とミッドレンジ部門の上位5機種をノミネート機種として選出しました。

ハイエンド部門

  • 1位……iPhone 15 Pro(5票)
  • 1位……Pixel 8 Pro(5票)
  • 3位……Pixel 8(3票)
  • 4位……motorola razr 40 Ultra(2票※決選投票3票)
  • 4位……Galaxy Z Flip(2票※決選投票2票)

 ハイエンド部門は1位にiPhone 15 Pro、2位にPixel 8 Pro、3位にPixel 8がランクイン。以降は2票ずつ獲得したmotorola razr 40 Ultra、iPhone 15 Pro Max、Xperia 1 V、Xiaomi 13T Pro、Galaxy Z Flip5、Xperia 5 Vが並びましたが、決選投票によってmotorola razr 40 UltraとGalaxy Z Flipが勝ち進みました。

スマートフォン・オブ・ザ・イヤー ハイエンド部門に選出された5機種。左からGalaxy Z Flip5、iPhone 15 Pro、motorola razr 40 ultra、Pixel 8、Pixel 8 Pro

ミッドレンジ部門

  • 1位……AQUOS sense8(7票)
  • 2位……motorola razr 40/40s(4票)
  • 3位……TORQUE G06(2票)
  • 3位……motorola edge 40(2票)
  • 3位……Pixel 7a(2票)

 ミッドレンジ部門は、1位がAQUOS sense8、2位がmotorola razr 40/40s、3位にTORQUE G06、motorola edge 40、Pixel 7aが並ぶという結果になりました。

スマートフォン・オブ・ザ・イヤー ミッドレンジ部門に選出された5機種。左からAQUOS sense8、motorola edge 40、motorola razr 40/40s、Pixel 7a、TORQUE G06

 この後、各部門で審査員が配点をした上で、ナンバーワン機種が決まります。果たして、各部門のノミネート機種5つの中から栄冠を手にする機種はどれか? 結果は12月中に掲載予定の次回レポートをお待ちください。

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