そもそも相互接続、と題したニュースリリースや資料を見ただけでは、多くの日本通信ユーザーが「自身にとってどのようなメリットがあるのか」分からないはずだ。ここからは、相互接続で実現することが何か、そしてユーザーが受けられる恩恵は何かについて見ていきたい。
音声通話に関しては、誰がいつどの電話番号でどれだけの時間通話したのかを示すデータが、MNOから日本通信に受け渡され、日本通信がそのデータに基づいてユーザーに請求する仕組みとなっている。データ通信と異なり、日本通信の設備を介さずにサービスが提供されているため、このような仕組みとなっている。SMSも同様だ。
日本通信はドコモから得た通話時間などのデータに基づきユーザーへ利用料金を請求している
データ通信、音声通話、SMSの全てを日本通信の設備を介す仕組みとすることで、日本通信がサービスの価格を自由に設定できるようになる
音声通話の接続料、つまりMVNOがMNOに対して支払う料金にも影響が出る見込みだ。現在は発信された場合に限り、MVNOがMNOに対して接続料を支払うようになっているが、「次の段階へ進むと(相互接続になれば)、MVNOが着信時に着信料を受け取れる」(福田氏)ようになるため、「MVNOがより自由に価格を設定できる」という。
そして、ユーザーが最も恩恵を受けられるであろう内容が、SIMやAPNに関する内容だ。従来のMVNOサービスでは、MNOからSIMを借りるようになっているが、MVNOに対する電話番号の直接付与により、同社が独自にSIMカードを発行したり、APN設定を自動化したりできる。
日本通信の独自SIMについては既に米国で販売されているが、日本国内では従来通りMNOから借りたSIMを提供している。ただ、こちらは個人向けというより、法人用途を想定している。1つの電話番号で病院などのローカルエリア内と、MNO基地局経由で接続するローカルエリア外の両方をカバーできるイメージだ。
日本通信独自のSIMは日本国内では販売されていないが、福田氏は海外の例を挙げて用途を説明した
SIMによるWi-Fi認証も可能になるという。例えば、MNOのサービスではMNOのSIMを搭載した端末で、Wi-Fiのサービスに申し込んでいる場合、接続時の認証が自動で行われるが、MVNOでは同じことができないのが現状だ。今後はこうしたハードルを取り払い、利便性向上をうたえるようになるという。
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