世界を変える5G

Open RANを巡る競争は楽天が一歩リードか ドコモと“協調”する可能性も?石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2024年03月05日 09時33分 公開
[石野純也ITmedia]

 無線機の仕様をオープンして、複数のベンダーの機器を組み合わせることを可能にするOpen RAN。この共通仕様を策定するO-RAN Allianceの規格にのっとったものをO-RANと呼び、2月26日から29日(現地時間)に開催されたMWC Barcelona 2024でも、テーマの1つとしてさまざまな事業者が関連した成果を展示していた。このO-RANに早くから力を入れていたのが日本勢。キャリアの中では、ドコモや楽天がO-RANのビジネス化も図っている。

 ドコモはO-RAN Allianceの設立メンバーの1社で、自身もさまざまなベンダーとタッグを組み、2023年のMWCでO-RANブランドのOREXを立ち上げ、海外キャリアへのコンサルタントを行っている。対する楽天も、傘下の楽天シンフォニーが完全仮想化ネットワークを海外キャリアに展開。ドイツでMVNOからMNOに転じた新興キャリアの「1&1」に、ネットワークを丸ごと展開している。MWCでは、この2社に新たな動きがあった。ここで、ドコモと楽天のO-RANを巡る戦いを取り上げていく。

Open RAN スペイン・バルセロナで開催されたMWC。2023年に続き、Open RANが大きなテーマの1つになっていた

OREXを法人化して海外展開に本腰のドコモ パートナーには世界各国の建設会社も

 ブランドとして展開していたOREXを、法人化したのがドコモだ。同社はNECと合弁会社の「OREX SAI」を4月1日に設立する。その代表取締役CEOには、ドコモで常務執行役員 ネットワーク本部長を務める小林宏氏が就く。O-RANの旗振り役としてOREXを推進してきたドコモのOREXエヴァンジェリスト 安部田貞行氏もOREX SAIのCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)として、技術面を支えていく。

Open RAN OREX SAIの設立を現地で発表。左から2番目がCEOを務める小林氏。安部田氏(右)は、CTOに就任する

 仕様はオープン化されているものの、ネットワークの根幹を支える装置なだけに、きちんと動作し、十分なパフォーマンスを発揮する必要がある。ベンダーごとに“方言”のようなものあり、接続時にトラブルが発生する恐れもある。もともと、ドコモが立ち上げたOREXでは、こうした事態に対応するため、複数ベンダーの機器を実際につなげ、検証を行っていた。2022年には、その検証環境を海外キャリアなどがリモートで利用するための「シェアドオープンラボ」を、横須賀のドコモR&Dセンター内に開設している。

 OREX SAIでは、検証やインテグレーションを事前に済ませた機器を「OREX Packages」としてまとめて、それを販売していく。NECが持つ海外の販路やシステムインテグレートの能力を、ここに生かす。例えば、2024年にOREX Packagesを導入するドコモの商用ネットワークには、NEC、Amazon Web Server(AWS)、Red Hat、Qualcomm、ヒューレッド・パッカード エンタープライズ、DELLといった各種ベンダー、メーカーの機器やソフトウェアが新たに採用される。

Open RAN ドコモ自身の商用環境にも、OREX Packagesを導入していく方針が明かされた

 このような組み合わせを複数作り、海外に実際に海外キャリアのネットワーク構築を支援するのがOREX SAIの役割だ。OREX SAI自身はハードウェアやソフトウェアといった製品を開発するのではなく、主な役割はキャリアへの導入支援。その意味では、ドコモ内のいちブランドだったOREXのときと立ち位置は変わっていない。一方で、法人という形を取ることで、その動きは加速していくという。先の安部田氏は、次のように語る。

 「OREXのブランドを立ち上げ、パートナーの皆さまと実際にお客さまのところで検証したり、やりとりを始めたりしているが、次のステップとしてフィールドトライアルをする話になると、現地でのサポートが増えていく。ドコモは正直なところドメスティックカンパニーで、世界各国に拠点があるわけではない。ショートタイムで効率よく雇用してとなると、時間もコストもかかる。そういうケイパビリティ(能力)を持った方と手を組んで動いた方が効率がいいということで、会社を設立し、その中で現地のサポートをやっていくことになった」

Open RAN 安部田氏は、法人化を次のステップと話す。実際にフィールドテストや現地サポートが増えてきたことから、OREX SAIを設立したという

 OREX SAIには、「OREX DELIVERY PARTNERS」として、基地局建設などを行う世界各国の通建会社も名を連ねている。具体的なネットワーク構築や保守までを視野に入れているからだ。コンサルティングにとどまっていたドコモ内のブランドではなく、実際に海外キャリアのネットワーク構築に携わるようになるという部分を見ると、その役割が楽天グループの楽天シンフォニーに近づいたともいえそうだ。

Open RAN 基地局建設に強い建設会社もパートナーに名を連ねる。設置までをサポートしていくという意思の表れだ
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年09月15日 更新
  1. 出そろった「iPhone 18 Pro」の価格を4キャリアで比較 ソフトバンクが衝撃の安さ、楽天モバイルが異例の施策 (2026年09月13日)
  2. 15日配信「iOS 27」の新機能まとめ Siri AIの恩恵を受けられる機種は? 画像編集やSafariにも注目 (2026年09月14日)
  3. iPhone Duoに競合メーカーが続々反応 「折りたたみの世界へようこそ」「Google Homeスピーカー21個買えます」 (2026年09月14日)
  4. 「Vポイントアプリ」をリニューアル Vカード提示と決済が1画面で完結 (2026年01月20日)
  5. 「iPhone 18 Pro」は何が進化した? 「iPhone 17/17 Pro」とスペックを比較 全て20万円超えの価格が悩ましい (2026年09月10日)
  6. 「iPhone Duo」でAppleの“折りたたみスマホシェア”は全世界5割超に? 激変するフォルダブルスマホ市場 (2026年09月13日)
  7. 「折り目があります」――Apple初の「iPhone Duo」実機画像がSNSで物議、高価ゆえにガッカリか (2026年09月10日)
  8. 【ワークマン】780円の「アウトドアギアポーチ」 ベルトループ幅を3段階で調節できる (2026年09月13日)
  9. ノキアがNTTドコモに納めた「MantaRay SON」を紹介――これで長年、苦しんできたネットワーク品質の改善に期待 (2026年09月13日)
  10. 「iPhone Duo」登場の裏で「iPhone 18」が発表されなかった理由 変わりゆくラインアップ戦略を読み解く (2026年09月12日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー