背景には、既存の丸抱え型ビジネスモデルは、展開にコストや時間がかかることがある。実際、1&1のネットワーク構築には、楽天シンフォニーのメンバーが常駐し、その運用を全面的にサポートしていた。件数が少ないうちはいいが、数が増えてくるとその都度、ビジネスを拡大しなければならない。三木谷氏も、そのビジネスモデルを「てこが効く」と評する。
先にビジネスを拡大し、その中核ともいえるソフトウェアをオープン化していく点では、楽天がドコモを一歩リードしているようにも見える。三木谷氏が「1周遅れ」と語っていたのは、そのためだ。一方で、リアルOpen RANプログラムを開始したことで、ドコモと楽天が手を組める可能性も見えてきた。三木谷氏は、オープン化したvRANを「競合が利用するかもしれないが、それはそれでいい」と語る。
ドコモとの協業については、「オープン化していくというのがわれわれの方向性。もしかしたらそこでコラボレーションしていけるかもしれない」(同)と話す。実際、OREX SAI自身はソフトウェアを開発しておらず、AltiostarのvRANソフトウェアをOREX Packages内の製品の1つという形で扱うのも不可能な話ではない。これは、お互いのビジネスモデルが完全にはかぶっていないからこそ、できることだ。
では、ドコモは協業の可能性をどう見ているのか。安部田氏は、「Altiostarのソフトがどれだけコンペティティブかは実際に検証していないので、(OREX Packagesの中に)増やすかどうかは何とも言えない」と前置きしつつも、「Open RANを普及させるという意味では、楽天と同じ精神で、お互いに協力できることもある」と語る。
ドコモの代表取締役社長、井伊基之氏も見解は同じだ。同氏は、「もともとベンダーフリーでできるというのがOpen RANのコンセプト」としながら、「楽天が持っているものも、本当は(OREX SAIで)一緒になってできると思っている。ウエルカムです」と話す。Altiostarのソフトウェアは日本やドイツの比較的大規模な商用環境で動作することが実証されているだけに、ユーザーである海外キャリアがこれを求める可能性もある。
KDDIの代表取締役社長CEOの高橋誠氏は、ドコモの井伊氏とMWC会場で行われた共同取材で、「競争と協調」というキーワードを挙げ、「O-RANの世界もそうだが、何を協調して、何で競争するのかがすごく戦略的に面白い時代になってきている」と語る。海外の大手ベンダーはその規模が巨大なだけに、対抗するには手を取り合うことが不可欠だ。今はまだライバルのドコモと楽天だが、将来的に協力し合える可能性を築けるのではないか。MWCからは、そんな未来も見えてきた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.