世界を変える5G

Open RANを巡る競争は楽天が一歩リードか ドコモと“協調”する可能性も?石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

» 2024年03月05日 09時33分 公開
[石野純也ITmedia]

いち早く実績を上げ、ソフトウェアのライセンス化に踏み切った楽天シンフォニー

 ただし、そのアプローチの仕方は少々異なるという。安部田氏は、「正しく理解しているわけではないかもしれないが」と前置きしつつ、「楽天シンフォニーは、先にベースを持って展開しているように見える」と語る。楽天自身も、先に楽天シンフォニーを設立し、営業活動を開始していることを強みに挙げる。楽天グループの代表取締役社長兼会長の三木谷浩史氏は、「MWCでは基本的に誰もがバーチャリゼーション(仮想化)と言っているが、うちはO-RANが難しいといわれる中、5年も前から始めている」と自信をのぞかせる。

Open RAN 三木谷氏は、成熟したO-RANだと楽天シンフォニーに技術や運用ノウハウに自信をのぞかせた

 実際、楽天シンフォニーは日本で展開する楽天モバイルだけでなく、先に挙げたドイツの1&1にもネットワークを提供。ドイツでも既にサービスは始まっており、ユーザーは徐々にMNOへと移行している。MWCで開催された楽天グループのイベントに登壇した1&1 MobilfunkのCEO、ミハエル・マルティン氏は、「何千ものユーザーが毎日われわれのネットワークに入ってきているが、今のところネットワークのステータスは良好だ」と語った。

Open RAN 楽天モバイルに加え、ドイツの1&1でもネットワークの安定性を証明している。写真は、1&1 MobilfunkのマルティンCEO

 楽天シンフォニーは、MWCに合わせてウクライナの通信最大手「Kyivstar(キーウスター)」に同社のOpen RAN技術を導入することで基本合意したと発表。フィリピンの通信事業者「Now Telecom(ナウ・テレコム)」とも、5G Open RANの試験運用に関する覚書を締結している。

Open RAN ウクライナのネットワーク再建にも、楽天シンフォニーのOpen RANが活用される

 次々と実績を出している楽天シンフォニーだが、サービスイン当初から楽天モバイルに完全仮想化ネットワークを取り入れたことで、「楽天のO-RANソフトウェアは競合と比べて最も成熟している」(三木谷氏)点は、海外キャリアからも高く評価されているという。こうした実績があり、1&1のような楽天シンフォニーがネットワーク構築を丸抱えするような案件も「何件か進んでいる」(同)。ビジネス面では楽天シンフォニーが先行していることもあり、OREX SAI設立に至ったドコモの動きには、「なんとなく1周遅れ感がある」(同)と手厳しい。

 実際、楽天は次のステップとして、同社傘下のAltiostar(アルティオスター) Networksが開発してきたvRAN(仮想化RAN)のソフトウェアをオープン化していく。MWCに合わせて発表した「リアルOpen RANライセンシングプログラム」が、それだ。同プログラムには、Open RANに対応したCU/DUのコードが含まれており、これを利用することでハードウェアの展開を容易にするという。簡単に言えば、「ライセンスを出すからベンダーが自分で接続テストをやってよという形」(同)だ。

Open RAN 楽天シンフォニーは、リアルOpen RANライセンシングプログラムをMWCに合わせて発表した

 三木谷氏は、「O-RANと言うからには、たくさんのソフトがあってはいけない。安くてみんなが使えるようになり、いろいろなハードウェアがつながるのが正しい世界だと思っている」とその狙いを語る。楽天シンフォニーの既存ビジネスと比べると利幅は薄いが、「楽天シンフォニーにはクラウドやOSS(運用サポートシステム)もあるので、それも一緒にいかがでしょうというセールスができる」。三木谷氏はAndroidをその例に挙げていたが、基本ソフトを広く広げて、楽天シンフォニーはその上でビジネスの展開を図るというわけだ。

Open RAN さまざまなハードウェアを採用している楽天モバイルだが、vRANソフトウェアは傘下のAltiostarが開発したソフトウェアのみ。これをライセンスで他社にも提供していく

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